【ネタバレ有り】傲慢と善良 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:辻村深月 2019年3月に朝日新聞出版から出版
傲慢と善良の主要登場人物
西澤 架(にしざわ かける)
主人公。婚活を経て坂庭真実と出会い、婚約まで至るも真実が行方不明になり、真実の故郷や過去を探ることになる。
坂庭 真実(さかにわ まみ)
架の婚約者。自分の意思が薄く、婚活がうまくいかないことなどにコンプレックスを持っているが、ある日突然行方不明になる。
美奈子(みなこ)
架の女友達。真実のことを良く思っていない。
庭坂 陽子(にわさか ようこ)
真実の母親。真実を溺愛するあまり、真実の行動に口出ししたり、真実の婚活に協力したりしていた。
傲慢と善良 の簡単なあらすじ
主人公の架は学生時代から恋人を欠かしたことがないが、結婚となると腰がひけていた。結婚適齢期には恋人がいたが、結婚を渋っているうちに愛想をつかされ、それ以降はアプリで婚活をするようになる。しかし、昔の恋人を忘れられないたまに、真実という恋人ができても結婚には踏み切れない。しかしある日、真実が行方不明になる。以前からストーカーの被害を訴えていた真実を心配し、架は真実の実家や職場なに出向き、調査を始める。
傲慢と善良 の起承転結
【起】傲慢と善良 のあらすじ①
ある日、架が学生時代の友人、美奈子たちと飲み会をしていると、恋人の真実がストーカーが自分の部屋にいると電話をかけてきます。
心配した架は自分の家にくるように指示し、それから真実は架と暮らすことになります。
架はそのまま真実に結婚を申し込み、晴れて二人は婚約者となります。
結婚式を控えたある日、架が家に帰ると真実が家にいません。
真実は夜遊びをしないタイプなので、架は心配しますが、次の日も真実は帰ってきませんし、本来の真実の家にも帰った形跡はありません。
群馬の真実の両親にも話し、架と真実が住む東京に来てもらうものの、家族も心当たりがないと言います。
警察にも通報しましたが、事件性が感じられないと言われ、捜査はしてくれませんでした。
真実の両親に、真実がストーカーの被害にあっていたことを話すと、どうしてその時に警察に言わないのかと両親は叱ります。
架は、真実がストーカーの犯人は、自分が群馬にいたときにお見合いをして、真実から振ってしまった男性だと話していたことを思い出し、どうしてその時に犯人を捕まえようとしなかったのか、せめて警察に通報しなかったのかと自分を責めます。
また、真実の両親はもしかすると真実が自分の意思で家出をしたのかもしれないと考え、世間体のためにこの失踪を大ごとにしたくないようです。
そんな真実の両親にも嫌気がさした架は、自分で真実の居場所を突き止めようと、群馬で結婚相談所をしている小野里さんの元へ向かいます。
【承】傲慢と善良 のあらすじ②
真実は数年前までは、実家のある群馬の県庁で、臨時職員として働いていました。
それも試験を受けたのではなく、父親の口利きで、結婚までの腰かけとして働いていただけでした。
恋人ができなかった真実は婚活をすることになりますが、合コンなどは気乗りがしなかったため、母親の陽子に頼んで知り合いの結婚相談所に登録することになります。
この結婚相談所では、陽子が高学歴の候補者を最初に見つけてきますが、候補者のファッションセンスなどを理由に真実は彼を断ります。
次に、真実は自分で好みの外見の男性と出会いますが、話がどうしても続かなかったため、今度も真実は断ります。
真実の両親の話と小野里の話を聞いて、架はこの結婚相談所で出会った二人はストーカーの犯人ではないだろうと思いますが、念のため二人と会うことにします。
一人目の彼は確かにカジュアルで社会人とは思えない服装をしていましたが、すでに結婚をし、三人目の子どもがもうすぐ生まれるとのことでした。
二人目の彼はいまだに独身で、確かに会話も続きませんでしたが、失踪した真実のことを本気で心配しているようでした。
どう考えても真実は誘拐されたように思えず、かといって自分の意思で失踪しているにしてもなんとなく変だと思っている矢先に、架は友人の美奈子たちに呼び出されます。
美奈子によると、真実は本当はストーカーの被害にはあっておらず、架に結婚に踏み切ってもらうための嘘ではないか、と言うのです。
【転】傲慢と善良 のあらすじ③
真実が失踪した前日、真実は寿退社する職場の退職祝いをレストランで行っていました。
その場には美奈子たち友人も偶然居合わせていました。
真実のことをしっている美奈子は、「結婚祝いをしてあげる」と真実を自分たちのテーブルに呼び、ストーカーの話は嘘だとわかっていると真実に告げます。
美奈子たちは勘が鋭く、真実の言うストーカーの被害に矛盾点がたくさんあることを見抜いていたのです。
架には言わないと約束はしたものの、真実は屈辱で何も言い返すことができず、本当にストーカーにあっているんだと言うこともできませんでした。
実際には、美奈子たちが真実に言ったことは当たっていました。
真実は架のことを百点の婚約者だと思っているのに、架が真実のことを70点の相手だと言っていた、とも美奈子たちに告げられ、真実は自信を失ってしまうのです。
真実が失踪したのはこの出来事が原因だったのです。
美奈子たちから失踪前夜の出来事を聞かされた架は、デリカシーのない美奈子たちに怒りを覚えますが、同時に真実のストーカー被害が嘘であったということを認めざるを得ない状況になります。
失踪した真実は、行き場をなくして宮城県の被災地のボランティア活動に参加していました。
そこでは、いろいろな事情を抱えた人々が協力しあって、あらゆる活動をしていました。
最初に真実は写真館で写真を綺麗にする手伝いをし、次には地図作りのバイトをし、少しずつ周囲の人たちとなじんでいきます。
【結】傲慢と善良 のあらすじ④
宮城県での地図作りの仕事にも慣れ始めたころ、真実は偶然神社を発見します。
神社の特徴的な模様を見て、「これは写真館で見た、誰のものかわからない結婚式の写真の舞台だ」と確信した真実は、写真館の人たちにその写真を神社まで持ってきてもらいます。
自分の行動で写真の持ち主がわかったことで、自分の存在意義を感じることができ、真実は感動します。
その日の夕食時、写真館を手伝っている学生に、インスタを見せてほしいと言われた真実は久しぶりに自分のアカウントを見ます。
すると、コメント欄に架から、ストーカーがいないことはわかっているから話がしたい、というメッセージを見つけます。
どうしていいかわからなくなった真実はその場にいる人たちに自分がどうして宮城にやってきたか、婚約者から逃げてしまったことなどを話します。
その場にいる人々から「大恋愛をしているんだね」と優しい声をかけられた真実は意を決して、架に連絡をします。
今は少しだけ待ってほしい、けれど必ず連絡をします、と伝え、数か月後、架は宮城までやってくるのです。
真実は架に謝り、だけど、架に自分が70点と言われて悲しかったこと、美奈子たちと一緒にいることが苦痛だったことを訴えます。
架は、すべてを受け入れ、もう一度真実にプロポーズをします。
真実はそれを受け入れ、そのまま、地図作りの際に出会った神社で、二人だけの結婚式を挙げるのです。
今度こそ、幸せをつかもうと願うのでした。
傲慢と善良 を読んだ読書感想
最初は真実のストーカーが狂言という部分が明かされていないので、サスペンスなのかと思いながら読み進めます。
そのうちに、これは現代人の恋愛指南書だということがわかってきます。
私たち現代の若者が持っている傲慢と善良のせいで、婚活はうまくいかないのです。
今まで親に従うばかりの人生を歩んできて、強い意志を持たない真実は、人より劣った部分なんてないのに結婚相手がなぜか見つかりません。
架のような良い人に出会ったとしても、ストーカー被害の狂言のような、意味のわからないことをしてしまうのです。
真実に共感できる部分も多く、耳が痛いと思いながら読み進めました。
最後の、真実が宮城に行ったときはどうしたものかと思いましたが、すっきりとした終わり方で、安心しました。
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