「闇祓」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|辻村深月

闇祓 辻村深月

著者:辻村深月 2021年10月に株式会社KADOKAWAから出版

闇祓の主要登場人物

白石 要(しらいし かなめ)
転校生。怪しい雰囲気でクラスから浮いている。

原野 澪(はらの みお)
主人公。クラスの委員長を務める。

神原 一太(かんばら いった)
澪の部活の先輩で、後に恋人となる。

三木島 梨津(みきしま りつ)
元アナウンサー。息子の学校のボランティア活動に参加する。

神原 かおり(かんばら かおり)
梨津のママ友の中で浮いた存在。

鈴井 俊哉(すずい としや)
ヨツミヤフーズの営業マン。

ジンさん(じんさん)
鈴井の同僚。年は誰より上だが、中途入社なのでキャリアがなくパワハラを受けている。

神原 二子(かんばら にこ)
転校生。勉強がよくできる大人しい子ども。

闇祓 の簡単なあらすじ

神原家の一員が一人でも周囲にいると、そのコミュニティは家庭であれ学校であれ会社であれ、崩壊していきます。

何人もの人間がノイローゼになり、人が死に、関わる全員が疲弊したところで、神原家はひっそりといつの間にかいなくなります。

そして次のターゲットとなる場所を探し始めるのです。

闇祓 の起承転結

【起】闇祓 のあらすじ①

転校生とストーカー

原野澪のクラスにある日転校生がやって来ます。

彼の名前は白石要。

友達を作る様子もなく、昼ごはんを食べる様子もなく、クラスから浮いて見える白石ですが、澪にだけは馴れ馴れしく話しかけてきます。

家に来たいと言われたり、実際に家に現れたりする白石に澪は恐怖を覚えます。

周囲からも心配されるようになり、同じ部活の先輩だった神原一太が親身になって相談に乗ってくれるようになりました。

元々一太に好意を抱いていた澪は、登下校を一緒にするうちに彼と付き合うことになります。

一方白石は澪へのストーカー行為が激しくなり、一太と別れるようにとしつこく迫ってきました。

一太や親友の花果をはじめ周囲はだんだんと澪がどっちつかずの態度をとっているからだと呆れ始めます。

陸上部で一太のファンだった女の子たちとも溝ができ、澪と周囲との関係はぎくしゃくしていきます。

最初は優しかった一太ですが、要に対する澪の態度が煮え切らないことに対して異常に強い口調で注意してくるようになります。

付き合い始め当初とのあまりのギャップに澪はかなり戸惑いますが、彼に見捨てられたくない思いが強い澪は謝ります。

しかし一太はとうとう澪を自宅まで送り届けた後、自宅の裏の竹藪を焼けと理不尽な要求をしてきます。

そこに突然、白石要が現れて、手に持っていた鈴を鳴らして一太を祓いはじめました。

一太は絶叫して顔をかきむしり、苦しみ始めます。

元々ストーカーだと思っていた白石は澪を守るために現れたのであり、守ってくれていた一太のほうが、実は澪に苦しみを与える存在だったことに澪は初めて気付くのでした。

そして一太は翌日から学校に来なくなりますが、その際、親友だった花果が、一太に付いて一緒に行方不明となってしまいました。

【承】闇祓 のあらすじ②

隣人とのトラブル

元アナウンサーの三木島梨津は、息子の学校のボランティア活動の一環で読み聞かせ委員会に参加します。

その中で仲良くなった沢渡博美は、梨津の住むマンションのデザイナーでした。

センスが良く、人柄も良い博美は周は手作りのお菓子を持って参加しますが、だんだんと博美の異常さに気付いていきます。

彼女は梨津のお菓子が褒められたり、前職のアナウンサーの話に花が咲いたりするとさりげなく話に加わらず、話が収束するのを待ちます。

彼女は自分以外の人間が話の中心になっていることに我慢がならないマウンティング女だったのです。

       同じ読み聞かせ委員会で、梨津はもう一人、神原かおりという女性と知り合いました。

彼女は博美とは真逆のタイプで、保護者の中に仲の良い人も見られず浮いた存在でした。

博美の梨津に対する対抗心はどんどんエスカレートして、とうとう思い込みだけで怒り、電話越しに怒鳴ってくるほど博美は追い詰められていきます。

全くそんなつもりのない梨津はただ戸惑いますが、その電話の直後に博美が転落死したことを知って呆然となるのでした。

ところが、博美のいなくなったLINEグループで、博美の代わりに何食わぬ顔で中心にいる人物が現れます。

それが神原かおりでした。

梨津以外のママ友は、特に不審に思う様子もなく今まで通り会話を続けているのです。

恐怖に駆られた梨津の部屋の玄関ドアを誰かが叩きます。

何度も何度もインターホンを押しながら呼びかけているのはかおりでした。

しつこすぎる呼びかけにたまらず梨津はドアを開け、かおりの顔を見た後、梨津は自分の悲鳴と体が地面にたたきつけられる音を聞きます。

ここでは明かされていませんが、この時マンションから墜落したのは神原かおりのほうでした。

三木島梨津は生き残っています。

【転】闇祓 のあらすじ③

会社でのパワハラ

ヨツミヤフーズいう食品会社で営業マンとして働いている鈴井俊哉は、毎日のように課長に理不尽な叱責を受けているジンさんという同僚を不憫に思うと同時に、課長に対して憎しみを感じるようになっていました。

特に大きなミスというわけでもないのに長々と説教を受けるジンさんは、それでも穏やかな態度を保ち、業務時間外にかかってくる課長の長電話も全て受け止めている様子です。

 ある日、ジンさんの奥さんが事故にあったと一報が入り、ジンさんは会社を休むことに。

ところが、課長はそんなジンさんにも電話をかけ、とりとめのない愚痴のような話を続けていたことを一人の社員が耳にしてしまいました。

あまりに配慮のない行動に課長は社員から白い目で見られて逆上しますが、そこでジンさんの奥さんが亡くなったという知らせが入り、課長は完全に人望を失うのでした。

結果、課長は取引先とも揉め、左遷となります。

代わりに課長の座に昇進したのは、鈴井も含めた全員から尊敬され、慕われていた女性でした。

よい人員配置になったこと、ジンさんがもう理不尽なパワハラに耐えなくてよくなったことを皆が喜びます。

ところが、それも束の間。

課長となった女性に対して、だんだんと鈴井自身にも不満が湧いてきます。

また、課長になった途端、女性のジンさんに対する態度が以前の課長のそれにだんだんと似てきたのです。

鈴井はジンさんと一緒に営業を回りながら、ジンさんが自分の上司だったらよいのにと考えるようになります。

そこで軽々しくジンさんというあだ名で呼ぶのはふさわしくないと感じ、あだ名の元となった苗字で呼ぼうと思うようになりました。

神原さん、と。

【結】闇祓 のあらすじ④

神原家一斉退治

ある小学校に、神原二子という男の子が転校してきました。

彼は、勉強のよくできる大人しい生徒でした。

同じクラスには虎之介という、かなりやんちゃで自分勝手な児童がいましたが、二子は彼に対して悪いこと悪いときちんと咎めます。

忘れ物をしても物を貸さない、教科書を見せない。

ところが虎之介は自分の態度を改めることはなく、ますます助長していきます。

そのため、二子はクラス全体を巻き込んで虎之介の家に毎日行き、忘れ物をしないよう、宿題をするよう見張りをするようになります。

クラスの雰囲気はどんどん異常になっていきますが、二子は正しいことを言っているため、誰も止められません。

とうとう虎之介の親はノイローゼのようになり、虎之介もすっかり大人しくなりました。

その結果、母親は自殺し、虎之介自身は父親と事故死してしまいます。

 学校全体が異常な雰囲気になっていった頃。

白石要が大学生になった原野澪の前に再び現れます。

彼は、一太と共に姿を消した花果が見つかったと告げ、一緒に連れて行って欲しいと頼んだ澪の願いを聞き入れてくれました。

二人が向かったのは、沢渡夫妻が設計したサワタリ団地です。

白石の説明によると、神原家は父、母、兄、弟の四人家族。

それぞれ亡くなったりいなくなったりすると、人を補充しながらその形を保ち続け、闇を振りまき、知らず知らずのうちに周囲には死が蔓延するのです。

その家族が入り込んだ家庭や学校や会社は、非常に悲惨なことになります。

白石が鈴を持って彼らを祓うと…神原かおりの代わりになっていた三木島梨津、神原一太の代わりとなっていた澤田花果を救出します。

神原二子となっていた子どもも保護されました。

最後に白石は父親役をしていた人間と対峙し、「父さん」と呼びかけます。

神原仁としてヨツミヤフーズで働いていたのは白石の実の父親だったのでした。

こうして神原家全員が普通の人間に戻ることが出来たのでした。

闇祓 を読んだ読書感想

最後の章を読んだ時、怒涛の伏線回収でとてもスッキリしました。

最初の白石要から最後の神原二子に至るまで、人物像を始めに把握した時と話の最後では全く真逆の印象になっていました。

現実でも、最初は人当たりが良くても腹で何を考えているか分からない人、逆に最初はとっつきにくくても根は良い人というのがいると思いますが、まさにその連続でした。

この神原家の人たちは若干誇張した感じに描かれており、実際に人が死ぬような事態にはなかなかならないかもしれませんが、この家族のような人間は確実に誰の周囲にもいます。

分かりやすくキレたりパワハラをしたりするわけではなくても、他人を着実に蝕み食い物にするような…。

この話は決してファンタジーではないのです。

そういう人に対して適切な距離をとって対応すること、自分自身がそういう卑劣な手段で他人を懐柔しようとしないことを胸に刻みたいと思いました。

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