「蜜蜂と遠雷」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|恩田陸

蜜蜂と遠雷(恩田陸)

【ネタバレ有り】蜜蜂と遠雷 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:恩田陸 2016年9月に幻冬舎から出版

蜜蜂と遠雷の主要登場人物

風間塵(かざまじん)
自分のピアノも持たず、正規のピアノレッスンも受けていない、貧しい養蜂家の父親を手伝って各地を転々としている少年。ところがピアノの才能をあるピアニストに見初められ、弟子を取らないことで有名なそのピアニストの唯一の弟子になります。

栄伝亜夜(えいでんあや)
幼少の頃からピアノに触れ、コンクールでも天才の名を欲しいままにしていたエリート少女だったが、ずっと側で指導を受けてきた母親の死をきっかけにピアノから離れてしまった、20歳の女性。

マサル・カルロス・レヴィアナトール
アメリカ随一の音楽大学であるジュリアードで絶大なる人気があり、王子様とも呼ばれるルックスを持つピアニストの青年。幼少期に日本に居たときがあり、その頃にすでに亜夜と出逢っています。

蜜蜂と遠雷 の簡単なあらすじ

ピアノも持たずレッスンも受けていないにもかかわらず、才能溢れる風間塵。母の死をきっかけにピアノを弾けなくなった栄伝亜夜。アメリカの音楽大学のエリートであるマサル。今回が最後の挑戦と考えて仕事しながらコンクールに臨む高島明石。それぞれ異なるピアノ人生を送ってきた4人のピアニスト達がひとつのコンクールでトップを目指し、音楽を通じて心を通わせていく物語です。

蜜蜂と遠雷 の起承転結

【起】蜜蜂と遠雷 のあらすじ①

失意のピアニストの復活

3年ごとに日本で開催される芳ヶ江ピアノコンクールは、近年の優勝者がのちに著名なピアニストになることが続き、話題になっているピアノコンクールです。

予選は世界各地で行われ、少数精鋭のみが本選である芳ヶ江の舞台で演奏することを許されます。

この本選の場には、かつて天才と呼ばれCDデビューまで果たした栄伝亜夜という少女がいました。

彼女が音楽を創り出すことをなにより喜んでくれた母親という絶大な存在を失ったことで、彼女の中にあった音楽もまた失われてしまい、母が亡くなって以降の舞台で彼女はピアノを弾くことができないまま、ひっそりと世間の記憶から薄れていったのでした。

そんな彼女でしたが、彼女が通う大学の学長である濱崎にすすめられたことをきっかけに、濱崎の娘である友人の支えもあって再びピアノの舞台に戻ることを決意します。

その他のコンクール参加者も、それぞれ異なる育ち異なる練習環境から本選を目指して来ているため、予選の選考は難航し、特にパリ予選の会場ではコンクールに求められる模範的な演奏とは対照的な演奏を行った風間塵を本選に進めるかどうかは議論になりましたが、結果塵は本選に進むことになります。

【承】蜜蜂と遠雷 のあらすじ②

ギフトや災厄か

パリ予選を勝ち上がってきた風間塵の評価は、審査員のでも賛否が分かれるものでした。

コンクールというのは、基本的には作曲家の意図を正しく汲み正しく表現することを求められるものであるため、多くの参加者の演奏は模範的な演奏を試みます。

審査員にとっては凡庸な演奏を予選の間じゅうずっと聞き続けることになりますが、そんな中現れた風間塵という少年は審査員たちに衝撃を与える破壊的な演奏をします。

彼は自分のピアノを持たず、世界的に有名なピアニストのユウジ=フォン・ホフマンがその才能を見つけだすまでの間、正規のピアノレッスンを受けてもいないのでした。

塵にとっては蜂が飛ぶ音、雨の降る音もすべて音楽につながっており、亜夜曰く「普通は音楽は自然から音を取り入れるのに、彼は逆に奏でる音を自然に還していると感じ」るという才能を持った少年なのでした。

ホフマンの推薦状を持って芳ヶ江ピアノコンクールに参加したことで亜夜と出逢った塵は、ホフマンが彼に残した「音を外へ連れ出す」という約束を果たすために、亜夜に協力を頼みます。

【転】蜜蜂と遠雷 のあらすじ③

コンクール予選?本選

多数の応募者の中からまず書類選考とオーディションによって90人に絞られ、規定の3曲を20分以内で演奏する第1次予選を突破できるのは24人のみ、第2次予選ではわずか12人に、そして第3次予選を勝ち抜いた6人によって行われる本選は、指定された協奏曲から1曲を選びオーケストラと共演することになります。

栄伝亜夜、風間塵の他にも、かつて日本にいた頃に亜夜と出逢ってレッスンを体験したことでピアノの才能を開花させたマサル、将来を嘱託され音大に進むも目立った成績を残せず楽器店の店員に甘んじている高島明石は、誰が残り誰が去るとも予想がつかない個性的な面々の中で本選へ進むべく各々演奏をします。

選考が進んでいく中で、塵から受け取った「音を外へ連れ出す」という言葉の意味を考えていくうちに、亜夜は「自分の音楽は自分の中にある」ことに気づいていきます。

社会人ピアニストとして奮闘していた明石のみ、残念ながら予選で姿を消すことになりますが、亜夜とマサルは順当に本選出場を決めます。

塵は1曲目で演奏したものと同じ曲を再度3局目と4曲名の間に弾くという驚きの行動に出たうえに、審査発表時間になっても結果が出てこず、1名のコンテスタントが失格になったという事実に、周囲の人間は誰もが塵の失格を噂し出しました。

【結】蜜蜂と遠雷 のあらすじ④

コンクール本選?その後の4人の関係

審査の結果、第三次予選で失格となったのは、予選のあと体調を崩して帰国したコンテスタントでした。

亜夜、マサル、塵は3人とも本選に進むことになります。

また予選途中でコンクールを終えた明石は、事務局からの電話の内容に驚きます。

入賞を逃がしはしましたが将来性を見込めるコンテスタントということで、明石には奨励賞と菱沼賞が贈られたのです。

本選に残った6名のコンテスタントが選んだ曲はそれぞれが違う曲で、オーケストラ側からするとありがたいようなありがたくないような状況でした。

そんな中、オーケストラとの演奏を前に、塵は大人に臆することなく楽器の位置を移動するよう指示していきます。

演奏者の中には不満げな雰囲気を隠せない者もいましたが、音を綺麗に伸ばすために必要であることを塵が説明し実際に音の響きが変わったことで、彼の元来の耳の良さに驚きます。

塵の演奏が終わると亜夜の順番が来て、亜夜は過去に失意の中聴衆の前で弾くことができなかった曲をついに演奏することになります。

コンクールは1位がマサル、2位が亜夜、3位が塵という結果に終わりましたが、この3名のコンテスタントは結果以上のものを得ていたのでした。

それまで写真など撮らずにいた3名でしたがコンクールを終えた安心感やお互いの関係性からか、無邪気に記念写真撮影を始めるのでした。

蜜蜂と遠雷 を読んだ読書感想

個性的な登場人物と、自分自身もピアノを習っていたことから読むのを楽しみにしていましたが、本を手に取ったときは正直そのぶ厚さに読み切れるかな?と不安がよぎりました。

しかし読み進めてみると、当初惹かれた登場人物の魅力と、ピアノの音を他のものに比喩する表現の豊かさ、ピアノコンクールという一種特殊な題材の中にもコンテスタント同士の人間的なやりとりがあり、あっという間に読みきってしまいました。

また、一度読んだあとにも何度か読み返しましたが、読むたびに前回は気づかなかった伏線があちらこちらに散りばめられており、あらたな発見があります。

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