【ネタバレ有り】白銀ジャック のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:東野圭吾 2010年10月に実業之日本社から出版
白銀ジャックの主要登場人物
倉田 玲司(くらた れいじ)
物語の主人公。物語の舞台である新月高原スキー場の索道技術管理者。
根津 昇平(ねづ しょうへい)
新月高原スキー場のパトロール隊員。事件解決のための重要人物。正義感が強く倉田からの信頼も厚い。
藤崎 絵留(ふじさき える)
新月高原スキー場のパトロール隊員。女性ながらスキーの腕前はパトロール隊員の中でも群を抜く。
桐林 祐介(きりばやし ゆうすけ)
新月高原スキー場に今年入ったばかりの新人パトロール隊員。
入江 義之(いりえ よしゆき)
新月高原スキー場の客。一年前にゲレンデで起きた事故で妻を亡くし、遺された息子を男手ひとつで育てている。
白銀ジャック の簡単なあらすじ
一年前、スノーボーダーと接触したスキー客が亡くなるという痛ましい事故が起きた新月高原スキー場に、ある日『ゲレンデに爆弾を仕掛けた』という脅迫メールが届きます。
犯人からの要求は現金。
スキー・スノーボードの国際大会を控え、警察沙汰にはしたくない会社側の方針により、内密に事を進める倉田達でしたが、犯人からの要求は続きます。
3度目の要求後、パトロール隊員達の勇敢な行動により犯人を捕まえ一件落着かと思われた矢先、犯人達が語ったのは思いもかけない事実でした。
この事件の裏側には、一年前の事故により採算のとれなくなったエリアを切り捨て、スキー場を売却しようとする会社の思惑が絡んでいたのです。
白銀ジャック の起承転結
【起】白銀ジャック のあらすじ①
年の瀬の新月高原スキー場に届いた一通のメール。
それは「三日以内に三千万円を用意しなければゲレンデの下に埋めた爆弾を爆破する」という内容が書かれた脅迫状でした。
このスキー場の索道技術管理者である倉田玲司は、スキー場を経営するホテルの役員達から警察沙汰にはせずにこの問題に対処するうよう命じられます。
秘密裏にこの問題に対処し、スキー客の安全を守るためには、スキー場のことをよく把握しているパトロール隊員の協力が不可欠だと倉田は訴えます。
しかし、事件を大ごとにしたくない社の上層部からは、最小限の人数で対応するよう念を押されます。
真っ先に倉田が協力を仰いだのは正義感が強いパトロール隊員の根津。
その根津はその頃ゲレンデのパトロール中に滑走禁止区域を無断で滑るスノーボーダーを追いかけていました。
このスキー場では、滑走禁止区域に侵入するスノーボーダーが度々現れ、スキーヤーとの事故を起こすため、パトロール隊員も監視を強化していました。
パトロールを終えた根津は倉田から事件のことを知らされます。
この事件に協力させるのは残り二人。
選ばれたのはパトロール隊員としての経験が豊富な女性隊員絵留と偶然話を聞いてしまった新人の桐林でした。
最初はイタズラかもしれないと考えたメンバー達でしたが、犯人に指示された場所で小さな起爆装置のような物が入った缶が見つかります。
イタズラではないとわかった社の上層部は身代金を用意することに決めます。
【承】白銀ジャック のあらすじ②
犯人からの脅迫がイタズラではないとわかり緊迫した状況の中、スキー場へ一組の親子、入江義之とその息子達樹がやって来ます。
このスキー場関係者にとって入江は特別なお客様です。
なぜなら、一年前にこのスキー場の北月エリアの滑走禁止区域へ無断侵入したスノーボーダーと衝突した入江の妻が、頸動脈を切って亡くなるという痛ましい事故が起きていたからです。
入江の妻に衝突したスノーボーダーは逃げ去り、一年たった現在も見つかっていません。
その事故により血に染まったゲレンデはその後閉鎖され、今季のオープンも未定のままとなっていました。
ゲレンデが閉鎖されたままの北月町では地元にスキー客を呼ぶことができず、旅館や飲食店などの経営に影響が出ていました。
何とかゲレンデをオープンさせたい北月町の町長や町役場の職員は、本社から社長が来ていることを知ってスキー場を訪ねて来ます。
爆弾事件で北月エリアのオープンどころではない状況の中、間もなく行われるスキーとスノーボードクロスの大会会場となることが決まっているスキー場では、その大会用のコースをどこへ設営するのかも検討しなければならない状況です。
一刻も早く事件を解決し、安全な場所へコースを設営したいスキー場としては、犯人からの要求を受け入れ身代金を支払ってでもゲレンデに埋められた爆発物の場所を特定する必要があります。
さまざまな思いを抱えスキー場を訪れる者達がいる中で、犯人から取引の指示がされます。
犯人から指示された身代金の受渡し方法は、身代金の運搬役をスキーかスノーボードの経験者とし、用意した現金を防水ケースに入れて運ぶこと。
指示通り身代金を運ぶと、その直後に犯人はいとも簡単にその現金を奪って逃走に成功します。
取引が成立し爆発物が埋められた場所がわかると期待した倉田達でしたが、犯人からは詳細な場所を知りたければ新たに3,000万円を用意しろ、という新たな要求がされます。
【転】白銀ジャック のあらすじ③
あっさり現金を奪われた根津は、次の取引で犯人の尻尾をつかもうとひそかに闘志を燃やします。
犯人からの次の指示を待つ間、通常通りパトロールに出た根津は、またしても滑走禁止区域に入ったスノーボーダーを捕まえます。
彼女は瀬利千晶というスキー場近くの居酒屋で働く女性で、スノーボードクロスの大会に出場する選手でもありました。
練習のためにこのスキー場に通っていた千晶は、ある日、偶然絵留の電話を聞き、このスキー場で何か事件が起きていることを知ります。
二度目の取引も、最初と同じように犯人に現金を奪われますが、犯人から爆発物の埋まっていない安全なゲレンデが示されたことで、クロス大会のコースを設営する候補を考えられるようになりました。
そのひとつが現在閉鎖されたままの北月エリアです。
コースの下見に出かけた倉田は、そこでスキー場が売却されるといううわさが出ている事を知ります。
一方、スキー場を訪れていた入江から、母親の事故以来達樹が人の多いスキー場を怖がって滑れなくなったことを聞いた倉田は、閉鎖されたままの北月エリアなら思い切り滑れるのではないかと提案します。
入江親子や寂れた町の様子を目の当たりにした倉田は、一年前の事故がたくさんの人を苦しめていることをあらためて感じたのでした。
そんな中、犯人から三度目の要求が来ます。
犯人の要求が前回までとは何か違うと感じる根津は、スキー場に恨みを持つ者の犯行だと考え、タイミングよくやって来た入江に疑いの目を向けます。
入江の疑いを晴らすため、取引と同じ日に入江親子を再度北月エリアへ誘う倉田。
北月エリアに興味を持っていたスイートルームの宿泊客、日吉夫妻を証人として同行させることにします。
取引当日、北月エリアへ行くはずの入江親子が行方不明となり連絡が取れなくなったことで、根津の入江に対する疑いはますます強まりました。
そこへ犯人から身代金受け渡しの連絡が入ります。
【結】白銀ジャック のあらすじ④
最後の取引。
根津は桐林と二人で犯人を追う予定を立てますが、取引直前で桐林の協力が得られなくなります。
落胆する根津のもとへやって来たのは千晶でした。
絵留が犯人の指示通り身代金を運んで戻って来ると、倉田から「取引中止の連絡があった」という連絡が入ります。
しかし、絵留の目の前ではたった今、犯人らしき二人の人物が現金を奪って逃げて行くところでした。
訳がわからないまま根津と千晶が犯人を追いかけます。
根津が転倒した犯人の一人に近づくと、その顔を見て驚きました。
犯人は新人パトロール隊員の桐林だったのです。
千晶もまたもう一人の犯人に追いつきます。
その男は、増淵という北月町の職員で、町長の息子でした。
驚く根津に桐林は「脅迫したのは自分たちだが爆弾を埋めたのは別の人物だ」と告白。
桐林の話によれば、この事件を企んだのは、スキー場を売却しようとしていた社長達で、お荷物になった北月エリアを切り放すために自作自演の事件を起こし、取引失敗を理由にゲレンデを爆破して雪崩を起こす計画だと言うのです。
計画を知った増淵から相談をうけた桐林は、身代金を奪って取引が成立すれば、爆破を起こす理由がなくなり北月エリアを守ることができると考えたのです。
事情を知った全員が北月エリアへ向かうと、ゲレンデで爆発音が聞こえました。
入江親子と日吉夫妻を間一髪で雪崩から救い出した根津達。
ホテルへ戻り入江や日吉夫妻に事の次第を話すと、日吉は、実は自分はスキー場を買い取る会社の会長だと告げ、全ての事情を知った上で、北月エリアを含めてスキー場を買い取ることを申し出ました。
今回の事件のことは口外しないよう促し、桐林達も罪は問われないこととなりましたが、増淵は一年前に入江の妻が亡くなった事故は自分のせいだったと告白し謝罪。
予定通り開催されたクロス大会では、倉田達が急ピッチで進めたコースが無事完成し、出場選手に声援を送りました。
白銀ジャック を読んだ読書感想
ミステリーならこの人という東野圭吾の作品です。
2016年に映画化された「疾風ロンド」の原点とも言われるこの作品は、白銀の世界を舞台にテンポよく事件が展開されていきます。
ただの身代金目的の犯行ではなく、利益を優先させ欲にまみれた経営者の安易で身勝手な犯行計画を知り町を守ろうとする青年と、一年前に起こしてしまった事故から罪の意識を抱えて生きる青年の複雑な想いを丁寧に描き、一つの事件によって多くの人の人生が変わってしまうのだということを知ることができます。
犯罪はもちろん決して起こしてはいけないものですが、そうせざるを得なかった若者たちの想いが伝わる東野圭吾らしい作品でした。
コメント