映画「マロ—ボーン家の掟」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|セルヒオ・G・サンチェス

映画「マロ—ボーン家の掟」

監督:セルヒオ・G・サンチェス 2019年4月にキノフィルムズから配給

マロ—ボーン家の掟の主要登場人物

ジャック・マロ—ボーン(ジョージ・マッケイ)
マロ—ボーン家の長男。責任感が強く、弟妹たちを守るために必死になる。アリーと心を通わせている。

アリー(アニャ・テイラー=ジョイ)
丘の上にある農場の娘。マロ—ボーン家の4兄弟と仲良くなり、ジャックとは恋仲に。勤務先の図書館に出入りする弁護士のポーターに言い寄られている。

ビリー・マロ—ボーン(チャーリー・ヒートン)
ジャックの弟。少し短気な性格。自由に外出するジャックに不満を募らせている。

ジェーン・マロ—ボーン(ミア・ゴス)
ジャックの妹。母亡き後、母親代わりになって末っ子サムの面倒をみている。  

トム・ポーター(カイル・ソーラー)
マロ—ボーン家の遺産相続を担当する弁護士。家の名義をジャックの母親に変更するために度々マロ—ボーン家を訪れる。アリーが好き。

マロ—ボーン家の掟 の簡単なあらすじ

マロ—ボーン家の母親と4人の子供たちの心には深い傷があり、それから解放されるためにイギリスからアメリカの田舎に移住してきました。

しかしこれから新しい人生が始まるというところで、母親が病死してしまいます。

それからというもの家の中には不穏な空気が漂い始め、末っ子のサムはお化けが出ると怯えるようになります。

そして兄弟の穏やかな生活は徐々に狂い始めていくのでした。

マロ—ボーン家の掟 の起承転結

【起】マロ—ボーン家の掟 のあらすじ①

父から逃れるために

1968年、ローズは4人の子供たちを連れて、イギリスからアメリカへと移住してきました。

10代後半の長男ジャック、ジェーン、ビリー、そしてまだ幼いサムの兄弟たちは、母親が昔住んでいた古い屋敷に足を踏み入れます。

ローズはほこりだらけの床に足で線を引き、ここを超えたらもう過去と決別し、新しい人生を始めるのよ、と子供たちに話しました。

フェアバーンという名字を捨て、マロ—ボーンとして生きていくのだと。

酷い犯罪を起こした父親から逃げるように、母と子はアメリカに来たのです。

子供たちは順に線を越していきました。

アリーという友達もでき、兄弟たちは楽しく充実した毎日を送っていましたが、やがてローズが病気になってしまいます。

病床のローズはジャックの手を取り、夫から隠して持ってきた大金の存在を教えます。

そして、自分の死はジャックが法的に大人となる21歳になるまでは外部に内緒にしなさいと告げました。

そうしなければ施設に入れられるなどして、兄弟はバラバラになるのです。

ジャックはローズの手を握りしめ、ローズは安心したように静かに息を引き取りました。

兄弟はローズを庭に埋葬し、より兄弟の絆を強くします。

母の死後、悲しみを抱えながらも兄弟は日々を過ごしていました。

そんなある日、ジェーンが窓際にいた時に突然窓に銃弾が撃ち込まれます。

驚いたジェーンは外を覗き込み、大声でジャックを呼びました。

—6か月後、頭に痛々しい傷があるジャックは、大きな鏡にかけてあった布がずり落ちているのに気づき、急いで布をかけ直します。

幽霊騒動が起こってサムが怯えるため、家中の鏡には布がかけられているのです。

ふと見上げた天井には黒いシミが広がっていました。

【承】マロ—ボーン家の掟 のあらすじ②

マロ—ボーン家の秘密

買い出しに出るため、ジャックは自転車に乗って町へ出ます。

売店では店員に「お母さんの容体はどう?」と聞かれますが、うまくごまかしました。

その後ジャックは図書館に勤めるアリーの元へと向かいます。

2人は他愛もない話をしてキスをしました。

ジャックとアリーは恋愛関係にあるのです。

そこへポーターが入って来たのでジャックは急いで隠れます。

ポーターは弁護士で、アリーのことを気に入っていました。

アリーに言い寄っているのに我慢できなくなったジャックが物音を立てると、ポーターはジャックの存在に気づき、マロ—ボーン家の相続手続きの話を始めます。

手数料200ドルと母ローズのサインが必要であり、明日家を訪れると告げて去って行きました。

家に戻ったジャックは頭を悩ませます。

そして200ドルはとても用意できないため、父の残したお金に手をつけるしかないという結論に至りました。

「あんな汚いお金!」とジェーンは反対しますが仕方ありません。

お金は隠していた場所にビリーが取りに行きました。

問題はローズのサインです。

ジェーンはローズが残した手紙を見ながら、必死でローズの筆跡をまねてサインの練習をしました。

翌日、兄弟はポーターを迎える準備をしていました。

庭にテーブルを出して軽食と飲み物も用意します。

そこにポーターが訪れました。

ジャックがしわしわのポンド紙幣を出すのでポーターは怪訝な顔をします。

さらにサインをもらうためにローズに会いたいと言いますが、ジャックは自分がサインをもらってくると伝えました。

そしてポーターを残して急いでローズの部屋へと向かいます。

ジェーンがパニックになりながらもサインを書き、なんとかポーターをごまかすことができました。

ほっとした兄弟は夜ゲームをして楽しんでいましたが、そんな時でもサムは幽霊の気配を感じます。

父の金に手をつけたからだと怯えるビリーは、お金が入った箱を煙突から屋根裏に投げ落としました。

【転】マロ—ボーン家の掟 のあらすじ③

まだ生きてる?

ポーターはアリーに声をかけ、それとなくジャックとの関係を聞きます。

そして「あそこは父親のせいでかわいそうだからね」と父親のことを匂わせました。

ジャックと会ったアリーは、ジャックに父親のことを尋ねます。

「あいつから離れるためにここに来たけど、もう死んだよ」とジャックは答えました。

家に帰ったジャックは、ビリーから自分だけ自由に外を出歩いていると責められ、2人はケンカになります。

その間にサムは母親の部屋で幽霊を見てしまいました。

実は幽霊の存在はジャック、ビリー、ジェーンによるでっち上げで、数か月前、脱獄して追ってきた父親を天井裏に閉じ込めたのです。

「まさかまだ生きているのでは」「そんなはずはない」兄弟は不安になりました。

勤務中のアリーの元へポーターが訪れ、一緒にニューヨークへ行こうとチケットを差し出します。

しかしアリーはそれを拒否しました。

腹を立てたポーターはジャックの父親が13人を殺害した殺人鬼だと暴露します。

家にいたジェーンは、屋根裏から音がしたため天井の穴から中をうかがいました。

住みついているアライグマかと思いきや、伸ばした手に触れたのは人の手で、ジェーンは気が動転してしまいます。

その頃ポーターはローズのサインが偽造だと見抜いていました。

そしてジャックの父親の記事を読み、逮捕時に1万ポンドもの大金が消えていることを知ります。

兄弟が盗んだのだと考え、マロ—ボーン家を訪れました。

そしてサイン偽造の話を出し、金を用意しておくよう告げて帰っていきます。

窮地に追い込まれた兄弟は焦り、ビリーは投げ込んだお金を取りに屋根裏へと向かいます。

しかしそこには何者かが潜んでおり、ビリーに襲いかかりました。

なんとか逃げ戻ったビリーでしたが、兄弟は父親が動物や雨水で生き延びていると確信します。

直後ジャックはパニックを起こして倒れてしまい、ジェーンは「アリーに全て話して助けを求めよう」と提案しました。

【結】マロ—ボーン家の掟 のあらすじ④

ジャックと3人の弟妹たち

ジャックはアリーを森へと呼び出しました。

アリーはそこでジャックが書いた絵日記を見つけ、木に腰かけて読み始めます。

その頃、マロ—ボーン家にはポーターが忍び込んでいました。

日記を読み進めていたアリーは、兄弟の秘密を知ることになります。

—6カ月前。

窓に打ち込まれた銃弾に驚いたジェーンが外を見ると、そこには父親の姿がありました。

ジャックは兄弟を密室に隠し、父に金を返そうと父の後を追って洞窟へ行きます。

しかし父は激しくジャックに襲いかかり、ジャックは頭を打って気を失ってしまいました。

数時間後、気がついたジャックが急いで家に向かうと、そこには殺されたビリー、ジェーン、サムの姿がありました。

放心状態になったジャックは自殺を試みますが、そこにビリーたち3人が現れます。

頭の中に3人の人格を作り上げたのです。

その後父を屋根裏に閉じ込めました。

—屋根裏に入り込んだポーターは、兄弟3人の死体を見つけます。

アリーは日記を読んでジャックの家へ駆けつけますが、そこには一人で死んだ3人の分も話をしているジャックがいました。

ジャックは「君がいるとみんなが出てこない」と言ってアリーを追い出します。

アリーは屋根裏へ向かい、兄弟3人の死体と、瀕死のポーターをみつけました。

そこにジャックの父親が忍び寄り、襲いかかります。

襲われながらアリーはビリーに助けを求めました。

そして“ジャックの中のビリー”が反応し、“ビリー”が銃で父を撃ち殺します。

—数週間後、アリーはジャックの精神科医に会っていました。

医師はアリーにジャックと別れることを勧めます。

そしてジャックの症状を抑える薬を忘れずに飲ますように、と言いました。

家に戻ったアリーはその薬を棚にしまいます。

ジャックの頭の中に生きている兄弟たちを残したいのです。

アリーはジャックの横に座り、写真を差し出しました。

そこには笑顔の兄弟がおり、ジャックは嬉しそうに微笑みました。

マロ—ボーン家の掟 を観た感想

ただのホラーだと思って見ると大きく期待を裏切られるような、先入観を持たずに見てもらいたい作品です。

幽霊屋敷モノだと思っていると、どんどんストーリーがホラーから逸れていく。

でもある瞬間にはホラーな雰囲気へと戻されて…と、見るものを翻弄します。

そして愛と責任感が強いが故に心を病んだジャックの姿は、終盤は見ていられないほどに切ないものでした。

序盤の不自然な時間の経過や、突然現れるジャックの額の傷など、ラストの展開への伏線はたくさんありました。

家中の鏡にかけられた布も、鏡に映ると自分が一人だと思い知らされるからなのですね。

怖かったなんて感想は出ず、とても心を揺さぶられて悲しくなる物語でした。

マロ—ボーン家に降りかかったのは最悪の悲劇ですが、ハッピーエンドともとれる結末が救いです。

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