映画「美味しんぼ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|森崎東

映画「美味しんぼ」

監督:森崎東 1996年4月に松竹から配給

美味しんぼの主要登場人物

山岡士郎(佐藤浩市)
主人公。東西新聞の記者。勤務態度はいい加減だが味覚は人一倍優れている。

栗田ゆう子(羽田美智子)
山岡の同僚。新米記者として張り切っている。

海原雄山(三國連太郎)
山岡の父。美食家として名高い。芸術のために身内を犠牲にしてきた。

大原大蔵 ( 芦田伸介)
東西新聞の社長で山岡の後見人。後世に文化を伝えることに使命感を感じている。

里美 (遠山景織子)
山岡ときょうだいも同然に育てられた。持病があり移植手術を受ける予定。

美味しんぼ の簡単なあらすじ

山岡士郎は勤め先の新聞社で「究極のメニュー」という企画を担当することになりましたが、競合相手が似たような企画を立ち上げます。

向こうの監修を頼まれたのは山岡の父・海原雄山で、かつて自分と母親を捨てたことを今でも許してはいません。

公の場での料理対決では苦戦を強いられていく山岡でしたが、プライベートでは少しずつ海原に歩みよっていくのでした。

美味しんぼ の起承転結

【起】美味しんぼ のあらすじ①

究極のメニューを求めて

創立100周年を迎えた東西新聞で社を挙げて取り組んでいるのは、最高の料理を持ちよって「究極のメニュー」として後世に伝えることです。

監修の候補として社長の大原大蔵は、陶芸家・画家・書家と多才な一面を持つ海原雄山の名前を挙げました。

特に味の分かるふたりを選ぶために、文化部の記者を築地の料亭「花やま」に集めてテストをしてみます。

スーパーの豆腐、上野の有名店の豆腐、京都の料亭の豆腐、水道水、井戸水、丹沢の水… 順番に食べ比べと飲み比べをして回答を書き込んでいきますが、全問正解は窓際社員の山岡士郎と大学を出立ての栗田ゆう子だけです。

たまたま花やまで食事をしていた海原がお吸い物の味にケチをつけますが、料理長が入院して店にいません。

おかみに頼まれた山岡はお吸い物を完璧に作り直しますが、彼の顔を見た途端に海原は監修の話を断ってしまいました。

10年前から山岡の身元引受人になっている大原はふたりが実の親子であることを知っていて、今回の件が和解のきっかけになれば考えています。

【承】美味しんぼ のあらすじ②

わだかまりを抱えた親子が料理で勝負

海原の起用をあきらめた大原は、究極のメニューに関しては山岡と栗田を担当者に指名してすべてを任せました。

山岡が日頃から親しくしているのは銀座の路上生活者たちで、飲食店の清掃作業を手伝う代わりに余り物をもらって食いつないでいます。

都内のありとあらゆるお店の食材を味見している彼らのアドバイスは、下手な評論家や研究家にも負けていません。

新人ながらも熱意と才能のある栗田と協力しながら調査を進めていきますが、山岡の態度が一変したのは海原との関係を尋ねられた時です。

13年前に山岡の母であり海原の妻である初枝が亡くなったこと、海原は病室にも顔を見せずに陶芸に没頭していたこと、家を飛び出してからは親とも思っていないこと。

一方の海原は東西新聞のライバルである帝都新聞が新連載する、「至高のメニュー」の制作・監修を承諾しました。

このうわさを聞きつけた週刊誌が、「2大新聞社による世紀の料理バトル」と銘打った企画書を持ち込んできます。

著名人に審査を依頼して勝ち負けをはっきりさせなければならない上に、両社の今後の営業や販売成績にも影響してくるでしょう。

【転】美味しんぼ のあらすじ③

思い出の1品に2戦2敗

第1回のテーマは魚、東西新聞は多種多様な鯛料理、帝都新聞はアジの干物定食の1品だけ。

一見すると豪華で見栄えのする鯛よりも、何の変哲もないアジに軍配が上がります。

勝因は現代の日本人が忘れかけていた素朴で懐かしい味を、たったひと口で審査員に思い出させたことです。

休暇を取って海原が会長を務める北鎌倉の「美食クラブ」へやって来た栗田は、ここで療養中で山岡を兄のように慕っている里美という女性から話を聞きました。

茶室に案内された栗田は、海原が大切にしている「たまゆら」と呼ばれる陶器でお茶を振る舞われます。

たまゆらは初枝の形見の品であり栗田は今でも海原が妻を愛していることを確信しますが、相変わらず山岡は意地を張ったままです。

第2回は中華料理対決、東西新聞はブロイラーではなく健康体のフークイチーを使った蒸し焼き、帝都新聞は絹糸鶏のスープ。

絹糸鶏は戦後に満州から引き揚げてきた日本人が現地の人からごちそうになった歴史のある料理で、またしても判定は帝都新聞です。

【結】美味しんぼ のあらすじ④

親子の確執を溶かすほど美味しいもの

第3回の対決が次の日に迫っている中、山岡は心臓が悪くて寝込んでいる里美のお見舞いに行き食欲がない彼女のために何かできないかと考えていました。

里美の大好物は小さい頃に山岡と一緒に食べた煮豆ですが、詳しいレシピを知っているのは海原だけです。

海原がまだ若く貧しかった頃に正月におせちの代わりに初枝と食べていた手料理ですが、妻が亡くなってからは1度も作っていません。

目の前にまったく同じ煮豆を出された里美は、海原の作ったものより山岡の方がおいしいと言います。

初枝の生まれ故郷である京都の丹波にまで足を運んで、自分で材料を集めたことが勝因です。

山岡の煮豆を味見した海原は「明日は負けるかもしれない」、山岡は「おやじの気持ちが分かるようになるとは思わなかった。」

海原は料理を盛り付ける器を選びに窯元へ、山岡は栗田と入念な打ち合わせをするために東西新聞社へ。

ふたりは一瞬だけ言葉を交わしたあと、それぞれが行くべき場所へと歩き出すのでした。

美味しんぼ を観た感想

「グルメ」が一般的にはそれほど浸透していなかった時代に作られた映画であるために、「美食」という言葉がしっくりきますね。

午前中からビルの屋上で昼寝をしたりウイスキーのポケットビンを持ち込んだりと、マイペースな主人公・山岡士郎には笑わされました。

着流しの和風姿でビシッと決めて威厳をたっぷりと漂わせた、海原雄山の寡黙な立ち振る舞いは見ごたえがあります。

山岡の役を演じているのは現在でも日本映画界をリードし続ける佐藤浩市で、彼と因縁の深い海原役は今はなき三國連太郎。

それぞれの世代を代表する名俳優であり、現実の世界でも親子でもあるふたりのぶつかり合うような共演がスリリングです。

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