映画「Arc アーク」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|石川慶

Arc アーク 石川慶

監督:石川慶 2021年6月にワーナー・ブラザース映画から配給

Arc アークの主要登場人物

リナ(芳根京子)
本作の主人公。17歳で息子を出産するが、そのまま病院に遺棄し、放浪していたところをエマに拾われ、彼女の弟子になる。

エマ(寺島しのぶ)
遺体を死んだ時のまま綺麗に保存する「ボディワークス」の技術の創始者。

黒田天音(岡田将生)
エマの弟で、天才科学者。後にリナの夫となる。

利仁(小林薫)
リナの息子で芙美の夫。自分を捨てたリナのことを恨んでいる。

芙美(風吹ジュン)
利仁の妻。末期がんに冒されている。

Arc アーク の簡単なあらすじ

SF作家ケン・リュウの短編小説『円弧(アーク)』の実写化作品です。

「ボディワークス」という、遺体をオブジェ化する技術を会得し、そこから発展した不老不死の施術を受けたリナが、パートナーの死を乗り越え、30歳の若さのまま永遠に生き続ける権利を得ます。

ですが、そこには差別や不平等という避けられない問題もあり、リナは改めて生きることの意味を問われる立場になっていくという、SFヒューマンドラマを描いています。

Arc アーク の起承転結

【起】Arc アーク のあらすじ①

ボディワークスとの出会い

17歳で息子を出産した直後、愛情を感じられなかったリナは、そのまま彼を病院に置き去りにしました。

その後、あてもなく放浪していたリナは、エマという女性と出会います。

彼女は、大手化粧品会社の社長で、遺体を死んだ時の状態のまま綺麗に保つプラスティネーションという特殊技術の創始者でもありました。

マネキンのように見えるのに、生身の人間だと知ったリナは驚きますが、エマは糸を使って施術後の遺体を操り人形のように動かし、最高の形になるよう、新たな命を吹き込みます。

その完成形はボディワークスと呼ばれ、大切な人を亡くした依頼者達が次々とエマの元にやって来ました。

住み込みでその技術を学ぶようになったリナは、やがてその魅力にとり憑かれていき、スタッフの加南子の指導を受けながら、どんどん実力をつけていきました。

一方、エマの弟の天音は、ボディワークスという概念には否定的で、死んだ瞬間の美しさではなく、生きているうちの美しさを求め、不老不死の研究を続けていました。

【承】Arc アーク のあらすじ②

ターニングポイント

30歳になったリナは、社長を退任したエマの後継者として、ボディワークスの中心人物になっていました。

その技術は世界的にも注目を浴び、製作所は子供達の工場見学の場になるほど身近な存在になっていました。

一方、天音はプラスティネーションの技術を応用し、細胞の老化を止める特殊な薬剤を人体に投入することで、若さを保ったまま不老不死になる技術を完成させていました。

天音はリナにプロポーズし、夫婦となったふたりは一緒にその施術を受けました。

ですが、50歳になった天音に先天的な遺伝子異常が見つかり、彼は急速に老化し、たった2ヶ月でこの世を去ってしまいました。

会社の研究者達は、遺伝子異常のある人には不老不死の施術は効かないこと、40歳以上の人には効果が見られない場合があることを発表し、バッシングを受けるのでした。

天音の死にショックを受けたリナは、天音の片腕だけをプラスティネーションで残すことにしました。

そして、彼が死ぬ間際に精子を凍結保存していたことを知り、リナはその精子を使って娘・ハルを出産しました。

【転】Arc アーク のあらすじ③

未知の世界へ

一部の反発は残る中でも、不老不死の施術を受けるのは、もはや世の中の常識になっていました。

ですが、リナはその恩恵を受けられない人々のためにホスピス的な施設『天音の庭』を作りました。

リナはそこでスタッフとして働いていて、すでに90歳を超えていましたが、その容姿は30歳の時の美しさを保っていました。

ある日、天音の庭に末期がんを患った妻・芙美を入所させるため、利仁という老人がやって来ました。

リナは健常なのに施術を受けていない利仁に理由を問いますが、彼は「自分には必要ない」と答えるだけでした。

その後、ハルのスケッチブックに利仁が描いた風景を見て、リナはそれが自分の思い出の場所だと気づき、彼が自分の息子だったと悟りました。

40歳の壁がなくなったと聞いていたリナは、利仁に施術を勧めますが、彼は一度だけリナに会いに行ったが気づいてもらえなかったこと、ずっと待っていたのに迎えに来てくれなかったという恨みをぶつけ、拒絶しました。

ですが、利仁は芙美と出会って人生を取り戻したと話し、最後にはリナを母親と認めました。

そして、芙美を看取った利仁は、半年後、海に出たまま消息を絶ちました。

【結】Arc アーク のあらすじ④

リナの最後の決断

時は移り、リナは135歳を迎えようとしていました。

ハルはすっかり大人になり、娘・セリを産んでいましたが、セリは若い頃のリナにそっくりでした。

セリは利仁が残したカメラのフイルムを現像し、ニコニコしながら自分の知らない過去に思いを馳せていました。

浜辺では若者達が楽しそうに遊んでいて、それを温かい目で見つめるひとりの老婆がいました。

その老婆は、不老不死に見切りをつけ、施術をやめてしまったリナでした。

ハルはリナが老いていくことを嘆き、「リナには死んで欲しくない」とその膝元にすがりつきました。

ですが、リナは満足そうに笑いながらハルの頭を優しく撫で、「何もなかった私だけど、十分すぎる経験をして死ぬ。

そうして初めて、私の人生には始まりと終わりができる」と穏やかな声で告げました。

その堂々とした姿には、若い頃の悩み苦しみ抜いた痛々しい影はどこにも見られませんでした。

リナはゆっくりと浜辺を歩くと、空に手を伸ばし、何かをつかみ取ったように拳を固く握るのでした。

Arc アーク を観た感想

不老不死というテーマはずっと昔からあるけれど、これが夢物語で終わっているからこそ魅力があるんだろうなと改めて感じました。

若いまま年だけを重ねていくという過程は、自分だけで完結するなら問題ないと思いますが、ビジュアル的には親子に見えなかったり、もし親兄弟で似ていたりしたら、さらに区別が困難になるのかなと、想像すると少し怖くなりました。

何より、人は限りがあるからこそ命の大切さを感じられるんだろうし、体だけ永遠を約束されても、知能や感情がそれに対応していなければ結局は宝の持ち腐れになって、人生が無意味になってしまうという警告とも受け取れました。

アンチエイジングの技術も格段に上がっているし、将来的にありえなくもないと思ってしまうところが、SFなのに不思議なリアリティを感じさせる作品だと思いました。

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