映画「スパイの妻」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|黒沢清

映画「スパイの妻」

監督:黒沢清 2020年10月にビターズエンドから配給

スパイの妻の主要登場人物

福原聡子(蒼井優)
本作の主人公。 優作の妻で一途に優作を想っている。何も出来なそうで以外としたたか。

福原優作(高橋一生)
福原物産社長。西洋かぶれな一面があり、外国人の友達も多い。

津森泰治(東出昌大)
聡子の幼なじみで聡子に想いを寄せる。憲兵隊。

スパイの妻 の簡単なあらすじ

聡子は、夫・優作が満州に行った際に女性を連れて帰って来たことを幼なじみで憲兵隊の泰治から聞かされます。

優作を問い詰めるも、信じるか信じないかだけだと言われて信じるしかない聡子です。

後に、満州で関東軍が行っている生物兵器実験を見てしまったと優作から聡子は聞かされます。

優作は、国など関係なく正義をふるってその事実をアメリカに告発しようとしますが、その証拠を聡子は憲兵に提出してしまうのでした。

スパイの妻 の起承転結

【起】スパイの妻 のあらすじ①

夫の疑惑

1940年、物産会社を経営する優作は、趣味で妻・聡子や甥っ子の文雄を演者にしてフィルムを回していました。

ある日、仕事と趣味を兼ねて1か月も満州に行くという優作と文雄を見送った聡子は寂しく過ごします。

聡子が山で自然薯を取りに行くと、幼なじみで憲兵隊の泰治と偶然会い、泰治は山に天然氷を取りに行くというので一緒にウィスキーを飲む約束をします。

優作が留守だと知っていたら家に入らなかったという泰治は、優作と聡子の家が西洋かぶれだと気が付き注意するのでした。

待ちに待った優作が帰ってくる日、聡子は迎えに行き優作を見るや否や抱き着いて離れず、優作が女性を連れて帰ってきたことに気が付きません。

年末になり福原物産の忘年会の余興で、優作の撮ったフィルムを社員と見ますが、そこで文雄は会社を辞めて小説家になるため旅館にこもると発表します。

聡子は泰治に呼び出され、憲兵へ出向くと優作が満州から女性を連れて帰ってきたことを知らされます。

その女性は日本に来てから文雄がこもって小説を書いている旅館で仲居をしていました。

しかし、殺されてしまったために文雄に容疑がかけられていたのでした。

【承】スパイの妻 のあらすじ②

細菌兵器人体実験

何も知らなかった聡子は、優作に裏切られたと感じ責めますが、信じるか信じないかしかないと圧をかけられて、優作を信じることにしました。

信じると決めたものの嫌な夢をみた聡子は、文雄に会いに旅館に向かい、旅館の主人にカマをかけ優作もよく旅館に来ていたことを知ります。

聡子は、文雄に優作を巻き込まないで欲しいと頼みますが、おばさんは何も見ていない知らないからだと罵られます。

憲兵に目をつけられた文雄はずっと旅館から出ていなくて、少し狂気じみていました。

文雄は、絶対に見てはいけないと聡子に日本語に訳したノートを優作に渡して欲しいと頼みます。

聡子は、ノートを見てしまい優作は満州で関東軍が細菌兵器人体実験を行っていることを知ってしまったから、アメリカにその事実を打ち明けると言うのです。

弘子を日本に連れてきたのは、弘子は処刑された軍医の愛人でそのノートを託されていたからということでした。

聡子は、優作のことを売国奴だとなじりますが、優作は自分はコスモポリタンで正義を貫きたいと強く思っていました。

二人の幸せはどうなると問う聡子に、不正義の上に成り立つ幸せで満足か?と優作は譲りません。

【転】スパイの妻 のあらすじ③

つかの間の幸せ

聡子は憲兵の泰治から、弘子を殺した犯人は旅館の主人だったことを聞かされます。

聡子は泰治にノートを渡して、文雄は憲兵に拘束され拷問を受け罪を認めてしまいます。

しかし、優作を敬愛している文雄は優作のことは話さなかったために、優作は捕まりませんでした。

聡子は、優作を守るために文雄を憲兵に売り、もう一つのノートは憲兵に提出していなかったので、それを持って優作と一緒にアメリカに渡ろうと考えます。

優作は、聡子をアメリカに連れていくことにし、資金作りのため日本円を貴金属に換えることにしました。

聡子は、ネックレスや時計を買ってもらい、生地を質屋に入れている間、優作が誰かに付けられていないかと見張りをします。

優作の役に立っていることに、聡子は高揚していくのでした。

優作は、危険を回避するためにアメリカには二手に分かれていくことを提案しますが、聡子は優作と離れたくなくて泣きます。

優作に、離れることで絆が深くなると説得され、聡子は独りで船に密航しますが、すぐに憲兵に捕まってしまうのでした。

【結】スパイの妻 のあらすじ④

優作の真意は?

憲兵で、聡子はこの犯行を一人で出来るわけがないと言われますが、優作の名前は出しません。

聡子が持っていた証拠フィルムを憲兵で見るとそれは、以前忘年会の余興で見た聡子が演じた映画にすり替わっていました。

聡子はなぜ捕まったかと泰治に詰め寄ると、密告者から手紙が来たこと知り、「お見事」と言って倒れてしまうのでした。

この件で精神を病んでしまった聡子は、憲兵の病院に入院します。

夫婦とつながりがあった野崎が面会にきて、ここを出られるように計らってくれるといいますが、聡子は断ります。

聡子は野崎に実は狂ってなんかいない、でも今の日本はこんな自分を狂っていると言うのだと伝えるのでした。

ある夜、空襲警報がなり、入院患者は解放され逃げ出しますが聡子は逃げませんでした。

しかし、病院は壊され聡子は独り海岸へ逃げ叫び泣きます。

その後、終戦を迎え翌年優作は亡くなりますが、死亡届けに偽造があり、聡子はアメリカへ渡るのでした。

スパイの妻 を観た感想

見終わった後は、聡子を守るために優作は聡子と一緒にアメリカに行かず、聡子に想いを寄せていた泰治に聡子を預けるため憲兵に密告したのだと思いました。

しかし、細かい部分を思い出してみると、おかしい所が多々あります。

まず、最初に聡子がはじめて優作を疑うシーンで、圧をかけて信じるように仕向けていました。

そして、見てはいけないノートをあえて文雄が聡子に託した場面は、実は優作の指示だったかのように思います。

忠実な犬のような聡子を利用し、聡子が憲兵に捕まっている間を利用し自分は日本を脱出したようにも思えます。

スパイを手伝う献身な妻という内容のようで、スパイに利用された妻の物語だったのだと思います。

アメリカに渡った後の聡子が幸せになったかが気になります。

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