監督:マーティン・スコセッシ 日本公開1981年2月14日にユナイテッド・アーティスツから配給
レイジング・ブルの主要登場人物
ジェイク・ラモッタ(ロバート・デ・ニーロ)
ボクシング世界ミドル級チャンピオン。ボクシングとスタイル同様、性格もかなり激しい人物。
ジョーイ・ラモッタ(ジョー・ペシ)
マネージャー業も務めるジェイクの弟。兄に劣らず血の気が多い人物。
ビッキー・セイラー(キャシー・モリアーティ)
ジェイクの2番目の妻。容姿端麗なのが災いしてジェイクに常に目を付けられる。
ザルビー(フランク・ヴィンセント)
マフィアの男で、ジョーイを通じてジェイクに八百長試合を持ち掛ける。
レイジング・ブル の簡単なあらすじ
ボクサーとしての才能に十分溢れているが、世界タイトル獲得までの道のりが険しいジェイク・ラモッタは、それまで頑なに拒否していた八百長試合を引き受けたことをきっかけに、その後どんどん不運に見舞われます。
更に気性の荒らさも加わり、悪循環が加速し孤独に拍車をかけます。
この作品は、実在したボクシング世界王者の半生が題材にされた作品で、ある1人の激しく悲しい人生が描かれています。
レイジング・ブル の起承転結
【起】レイジング・ブル のあらすじ①
1964年、ニューヨークに所在する場末のクラブにて、1人の男がトークショーのリハーサルを行っていました。
男の名はジェイク・ラモッタと言い、かつて世界ミドル級タイトルの座に付くほど天才的なセンスを持ち合わせたボクサーでした。
しかし、引退後は現役時代が嘘のようにだらしなく太り、かつての栄光とはあまりにもかけ離れた惨めな生活を送っていました。
ボクサーとして輝かしい人生を歩んでいた頃は、周囲から尊敬と畏敬の念を籠めて「ブロンクスの荒ぶる雄牛」と称されていた彼ですが、すっかり見る影もありません。
そして時が遡ること1941年、ジェイクは強敵のジミー・リーブスと試合を行っていました。
ジェイクはジミーからダウンを奪い、判定に持ち越されますが、ジミー陣営や観客も含めて会場全体はジェイクの勝利を確信していました。
しかし、結果はまさかのジミーの勝利で、結果がアナウンスされた途端に会場中は暴動へと発展します。
そして翌日、ジェイクはまさかの判定を不服に思いつつも、自宅にて食事を取っていました。
彼は妻帯者でしたが女グセが悪く、彼の妻もジェイクの浮気を疑っており傍目からも不仲なのは一目瞭然です。
また、ジェイクはDV癖があり、この日もステーキの焼き加減で夫婦が激しく言い争い、やって来たジェイクの弟ジョーイもその様子を見て辟易している様子でした。
【承】レイジング・ブル のあらすじ②
ジェイクはボクサーとしてはかなりの才能の持ち主でしたが、不器用で世渡り下手な男でした。
マフィアの息がかかった八百長試合を断固として拒否し、己の実力だけで栄光を掴み取ろうとするその姿勢は、彼をなかなか頂点へと君臨させません。
ジョーイは、マフィアのザルビーからジェイク共々自分達の傘下に入るように誘われますが、血の気が多く頑固なジェイクを上手くコントロール出来ない様子です。
また、実力もきちんと持ち合わせていることもあり、強く言って聞かせることも出来ません。
一方で、ジェイクの女グセの悪さが再び発揮される出会いが発生します。
ある日のこと、ジェイクは市民プールで出会ったビッキー・セイラーという女性に一目惚れします。
ジョーイ曰く、ビッキーはまだ15歳の未成年でしたが年齢とはかけ離れた美貌とブロンドヘアが特徴で、ジェイクの心に火を着けます。
また、マフィアのザルビーも彼女を狙っていることもあり、尚更彼女に対する支配欲は燃え上がります。
ジェイクはビッキーに猛烈にアプローチし、そして交際に発展します。
【転】レイジング・ブル のあらすじ③
ジェイクは破天荒な性格ですがボクサーとしては真面目で、練習や減量には真剣に行い、ボクシングに対して真摯に取り組んでいました。
やがて1943年に、かつて敗北したシュガー・レイ・ロビンソンとの再戦が決定し、勝利します。
互いに1勝1敗で、さらにシュガーとの再戦を迎えますが、ここでもジェイクは屈辱的な試合結果を味わいます。
試合はジェイクが優勢で進み、シュガーからのダウンも奪いますが判定へと持ち越されます。
誰もがジェイクの勝利を疑っていませんでしたが、まさかのシュガーの勝利にジェイク陣営は困惑します。
激怒するジョーイとは対称的に、ジェイクは落ち着いた態度でした。
実力だけで頂点へと駆け上がることに対して限界を感じている様子で、この結果をまるで予想していたような面持ちです。
ボクサーとして紆余曲折を経て、先妻と別れビッキーとの結婚し子宝に恵まれるなど、なかなか栄光へと繋がりませんがその後も順調に人生を歩み、試合でも順調に勝ち星を上げて行きました。
しかしその一方で、ジョーイやビッキーなどジェイクの周囲の人間に対して、異常に嫉妬深い性格や猜疑心などで周りを疲弊させていくのでした。
1947年にタイトルマッチ前哨戦の試合が決定します。
相手はジェニロと言うイケメンボクサーで、ビッキーが試合前に彼の容姿を誉めたことがジェイクの気に触り、鼻の骨を折る壮絶なKO勝利で決着します。
また、試合前の合宿でジェイクが不在の時に、ビッキーのお目付け役を頼まれたジョーイが、ビッキーを口説いたマフィアのザルビーをボコボコにする事件が発生します。
ビッキーは次第に露になっていく、ジェイクの異常性に戸惑いが隠せません。
【結】レイジング・ブル のあらすじ④
ジョーイとザルビーの事件をきっかけに遂にジェイクは八百長試合に加担することを承諾してしまうのですが、これが彼のボクサーキャリアの「終わりの始まり」となってしまうのでした。
格下相手にわざと負け、ジェイクは試合後の控え室で屈辱感で号泣します。
ボクシング連盟から八百長疑惑で出場停止処分を下され、タイトルマッチまでに2年もの時が経ちます。
タイトルホルダーのセルダンを、10ラウンド目でレフェリーストップで下し、遂に世界ミドル級チャンピオンの栄光を手にします。
しかし、私生活での不摂生やその凶暴で疑り深い性格も加速していき、ある日ビッキーとの浮気を疑ってジョーイに手を上げてしまいます。
兄弟の仲にも亀裂が入り、ビッキーが仲を取り持ちますがお互いの関係は修復されないまま時は過ぎます。
そしてかつての宿敵シュガーと2度目の防衛戦を迎え、ジェイクは最後までダウンしませんでしたが敗北し、現役を引退します。
1956年、経営しているクラブも順調の中、家族に囲まれ現役時代とは異なり穏やかな毎日を送っているジェイクでしたが、彼の度重なる浮気や束縛にウンザリしたビッキーに別れを告げられます。
畳み掛けるように、今度はクラブで未成年の女の子を雇った罪で逮捕されてしまいます。
刑務所に収監され、己の愚かさを嘆きますが、自身の他者を鑑みない性格と八百長試合を引き受けたことから始まるこの不幸の連鎖はその後も続き、1958年に偶然再会したジョーイとの仲直りも果たせないまま映画冒頭の1964年へと繋がり、落ちぶれた人生を歩んでいくのでした。
レイジング・ブル を観た感想
ロバート・デ・ニーロは役作りに対して情熱を注ぎ込む名優として知られていますが、この作品はそんなデ・ニーロの本領が発揮されています。
現役時代の本物のボクサーのような屈強な身体に、引退後のすっかりボクサーとして見る影も無いだらしない身体など、変幻自在に役を演じきるその姿勢から、彼が名優と呼ばれる所以を確認することが出来ます。
実在した伝説のボクサーの半生が描かれた作品ですが、それにプラスして人間の内面やヒューマンドラマ的な登場人物に深くスポットライトを浴びせる作風ですので、ボクシングに全く興味が無い方でも楽しめます。
デ・ニーロに監督のマーティン・スコセッシ、助演にスコセッシ作品でも馴染み深いジョー・ペシといった豪華キャストで、愚かで極端な道しか歩めない1人の男の壮絶な人生が激しく描かれた作品です。
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