映画「さよなら歌舞伎町」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|廣木隆一

さよなら歌舞伎町

監督:廣木隆一 2015年1月に東京テアトルから配給

さよなら歌舞伎町の主要登場人物

高橋徹(染谷将太)
主人公。ラブホテルの雇われ店長。周囲にはホテルマンと見えを張る。

飯島沙耶(前田敦子)
徹の彼女。スリーピースバンドのメンバーとして活動中。何としてもメジャーデビューしたい。

鈴木里美(南果歩)
徹の同僚。強盗致死傷犯の逃亡に手を貸している。

高橋美優(樋井明日香)
徹の妹。「あずさ」の芸名で活動するAV女優。

藤田理香子(河井青葉)
警察官。つい最近念願の刑事になれた。

さよなら歌舞伎町 の簡単なあらすじ

高橋徹は新宿の歌舞伎町にあるラブホテルで働いていましたが、いつかは一流ホテルに就職するつもりです。

いつものようにフロントに座って業務に追われていると、恋人の飯島沙耶と美優が客としてやってきます。

ふたりの裏の顔を目の当たりにした徹は何もかもが嫌になって、職場放棄してふるさとの東北の町へと帰るのでした。

さよなら歌舞伎町 の起承転結

【起】さよなら歌舞伎町 のあらすじ①

本当のことが言えないまま1日が始まる

新宿区大京町のアパートで、高橋徹と飯島沙耶は同せい生活を送っていました。

結婚式を挙げるようなグランドホテルで働いていると沙耶には言っていましたが、徹の勤め先は歌舞伎町のラブホテル「エリザベス」です。

ミュージシャンを目指している沙耶は間もなくデビューが決まりそうですが、そのためにはプロデューサーの個人的な要求に従わなければなりません。

本当のことを打ち明けられないままふたりは家を出て、それぞれの仕事場へと向かいます。

道中でアルバイト店員の鈴木里美とすれ違ったために声をかけましたが、区の掲示板を食い入るように眺めていて気が付きません。

里美は池沢康夫という指名手配中の男性を自宅に匿っていて、彼の顔写真が貼り出されていないかチェックするのに夢中です。

池沢は1998年にイタリアンレストランでシェフを殴って売上金を奪っていましたが、今日1日を乗り切れば事件は時効で罪に問われることはありません。

徹が出勤してタイムカードをレコーダーに通すと、液晶ディスプレイには午前11時58分と表示されました。

【承】さよなら歌舞伎町 のあらすじ②

兄と妹の気まずい再会

午後1時から午後5時までエリザベスの5階フロアは、アダルトビデオの撮影で貸し切りになっているために清掃の必要もありません。

撮影スタッフが注文した宅配ピザとドリンクがフロントに置きっぱなしになっていたために、徹は控室の501号室まで届けに行きました。

主演女優・あずさの本名は高橋美優で、生まれ故郷の宮城県塩竈市の専門学校に通っているはずの徹の妹です。

入学が決まった直後に発生した東日本大震災、操業停止に追い込まれた父親の水産加工場、払えなくなった授業料。

ネットの求人サイトにAVの出演者募集を見つけた美優は、苦しい実家の家計を助けるためと割り切って上京します。

月に2〜3回程度の出演であっという間に学費を払い終えましたが、東京での生活に慣れて金銭感覚も変わった今となっては辞めるつもりはありません。

撮影が終わって見送りにきた徹に、美優は初めて愛した人が津波で流され亡くなってしまったことを告げて送迎車に乗り込みます。

【転】さよなら歌舞伎町 のあらすじ③

夜が更けるにつれて化けの皮が剥がれて

徹が携帯電話で時刻を確認すると午後9時をすぎていて、エリザベスではこの時間からの宿泊は休憩料金もプラスされて1万8600円かかります。

文句を言いながらも2万円を差し出してきたのは大手レコード会社のプロデューサー・竹中一樹で、ギターケースを抱えた沙耶と一緒に202号室へチェックインしました。

風呂のお湯が出ないとクレームの内線がかかってきたために徹が客室まで出向くと、竹中は悠々とシャワーを浴びていて沙耶はまだ服を着た状態です。

「マクラ営業」と罵声を浴びせる徹、グランドホテルをクビになったことを隠してラブホテルで働いていたことを責め立てる沙耶。

沙耶は部屋に戻ってドアを閉めてしまったために、徹もあきらめてフロントに引き上げます。

301号室にルームサービスを届けにいったはずの里美は、1時間以上たっても帰ってきません。

この部屋には密会中の刑事・藤田理香子と新城竜平が泊まっていて、ふたりは里美に手錠をかけて池沢の居どころを白状させようとしていました。

【結】さよなら歌舞伎町 のあらすじ④

それぞれのベルが鳴り新しい朝が始まる

徹が里美の様子を見に階段を上っていくと、2階の廊下では全裸の若い女性が首輪をされて50代くらいの男に鎖で引っ張られていました。

真っ赤なルージュを塗った女性の唇を見た途端に、徹が思い出したのは沙耶や美優のことです。

衝動的に廊下の非常ベルを押して外へと飛び出した徹は、もうエリザベスには戻るつもりはありません。

パニックになって次々と避難する客に紛れて里美はふたりの刑事を振り切り、徹から譲ってもらった自転車で池沢のもとへと向かいます。

花園神社の境内で徹と沙耶は鉢合わせしますが、ふたりは別々の方角へと歩いていき視線を合わせません。

沙耶は大京町の自宅へ、徹は宮城行きの高速バスが乗り場がある新宿駅西口へ。

野球帽とマスクで入念に変装してから北新宿のアパートを出た池沢は、新宿方面へと向かう大通りで自転車のベルを聞きます。

ビルの向こうに設置された電光掲示板が午前0時になった瞬間に時効が成立して、池沢と里美は抱き合って喜ぶのでした。

さよなら歌舞伎町 を観た感想

歌舞伎町のラブホテル街のわい雑さと、この場所を訪れる訳ありな男女の泣き笑いが入れ代わり立ち代わりで映し出されていきます。

都心の一等地にそびえ立つ高級ホテルを夢見ながらも、薄汚れたフロントや従業員の休憩室でくすぶっている高橋徹がユーモラスです。

あくまでも今の自分は仮の姿でいつか立派な人間になるという、口ばっかり達者でプライドの高い性格も憎めません。

愛する飯島沙耶と分かり合えないままでの別れや、妹・美優のあられもない姿を見てしまうシーンが切ないです。

震災の傷あとが残る田舎町へと、逃げ帰るようなラストも心に残ります。

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