映画「私の男」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|熊切和嘉

映画 私の男

監督:熊切和嘉 2014年6月に日活から配給

私の男の主要登場人物

腐野花(二階堂ふみ)
本作の主人公。津波で家族を失い10歳で孤児となる。

腐野淳悟(浅野忠信)
花の遠い親戚と名乗り孤児の花を義子として引き取る。

大塩小町(河井青葉)
淳悟の恋人。淳悟と親密な花に嫉妬心を抱く。

大塩(藤竜也)
小町の祖父。淳悟と暮らす花の様子を気にかける。

田岡(モロ師岡)
パトロールと言いながら小町の勤め先で時間を潰したりと気さくな町の警察官。

私の男 の簡単なあらすじ

誰にも、いえない。

北海道の奥尻島大地震で災害孤児となってしまった花。

ひとりぼっちになってしまった花を遠い親戚と名乗る男、淳悟が「俺の子だ」として引き取ることになり紋別町で2人の生活が始まる。

淳悟も家族を亡くしておりお互いにひとりぼっちである2人は強く依存し合い、父娘以上の関係を求め合うようになっていく。

その情事をたまたま見てしまった大塩は花を旭川の親戚に預けようとするが花は強く拒否。

そのことがきっかけとなり、流氷の上で言い合う中で、ある事件へと発展してしまう。

その後、2人は逃げるように東京で隠れるように生活を始めます。

私の男 の起承転結

【起】私の男 のあらすじ①

花と淳悟のはじまり

北海道奥尻島で発生した南西沖地震。

10歳の花は家族を津波で失い、孤児となってしまいます。

配給されたペットボトルの水を大事そうに抱き行き場もなく避難所を彷徨い歩きます。

そこで、海上保安庁に勤務する淳悟と出会います。

「家族は?」と淳悟に聞かれた花は一旦俯いた後、海の方を指差します。

元同僚に話しかけられ、親戚を探しにきたと話す淳悟。

親戚は居たのかと尋ねられ、「俺の子だ。」

と淳悟は笑みを浮かべながら花を抱き抱えます。

災害支援できていた大塩の元に花を連れて行き、花を連れ帰っていいと許可を得ます。

船で本土に渡り、「引き取り先を探す」という大塩に対し「俺が父親になりますよ」と淳悟は義父になることを名乗り出ます。

「俺も家族が欲しいんですよ」という淳悟に対して大塩は「あんたには家族の作り方なんてわからんよ」と冷たい言葉を言い放ちますが結果的に了承し、花は淳悟の養女になります。

車の助手席で、自分を背負い「大丈夫だぞ。」

と自分を励ましながら津波にのまれ死んだ父の姿を思い出し泣き出す花。

そんな花の手を握り、「今日からだ。

俺はお前のもんだ」と淳悟は今後に繋がる呪いの言葉を花に与え、2人の生活が始まるのでした。

【承】私の男 のあらすじ②

嫉妬

紋別町で生活を始めた花と淳悟。

淳悟には大潮の孫で小町という恋人がいます。

小町は花と淳悟の関係性に不信感を抱いています。

ある時、淳悟と身体を重ねた後、淳悟がシャワーを浴びている最中に上着のポケットを探ると綺麗にラッピングされた小箱を発見します。

?中身を確認するとシルバーピアスが入っており、自分宛ではなく花に宛てたものであると確信します。

嫉妬心に駆られた小町は、なくなったプレゼントを探す淳悟を無視し車の窓から小箱を投げ捨てました。

町の人たちが集まる会合に、花と淳悟も遅れて現れます。

楽しそうな淳悟の笑顔。

2人のいる2階に上がりこっそり様子を見るとお互いの指を舐め、まるで恋人のように笑い合う姿を見て驚愕した小町は声をかけますが、無視し2人の世界に入り込んでいます。

数日後、堤防近くで遊ぶ花を遠くから車で見つめる小町に気づき、無邪気に花は駆け寄ります。

口元を動かす花に気づき「飴?」と小町が尋ねると花は舌を出し、舌の上には捨てたはずのピアスが乗っていました。

「これね、誕生日プレゼント」と嬉しそうに話す花に小町は「あいつまた買ったんだ」と漏らします。

「あんね、もしもだけど、淳悟に殺されるのって小町さんなら嫌だ?」孤独を抱え生きてきた2人にしか理解できない愛し方があり、淳悟から遠ざけようと小町の気持ちを逆撫でするように挑発するような言葉を投げかける花に小町は言い返すこともできずただただ、絶望するしかないのでした。

海上保安庁に勤める淳悟が久しぶりに家に帰ってきました。

心待ちにしていた花は、心配して尋ねてきていた大塩と別れ坂道を登って帰路に着く淳悟を待ち伏せします。

花の姿を見つけた淳悟は「待ってたのか」と嬉しそうに笑みを溢し、2人並んで歩きます。

すると花は淳悟の方を振り返り、目を閉じキスを求めます。

戸惑い、周囲を見渡し警戒しながらも淳悟は花の口に自分の唇を重ねるのでした。

【転】私の男 のあらすじ③

共生

次の日の朝のニュースに、流氷が接岸したと流れていました。

せっかく帰ってきた淳悟ですが、また直ぐに海に出ることになってしまい花はあからさまに拗ねた態度をとります。

そんな花の機嫌をとるように淳悟は花の身体を触り、花は最初素直になれなかったが、淳悟を受け入れ2人は重なり合います。

夢中にお互いを求め合う姿を窓の外から大塩に見られてしまい花はハッと我に返ります。

その日の帰り道、たまたま交差点で大塩を見つけます。

何処かよそよそしく、花がよろけた大塩を支えようとさし出した手を振り払います。

更に、花のことで旭川に行ってきたということを知り大塩の話の途中で花は逃げ出します。

逃げる花を必死に追い、流氷の上を鬼ごっこのように渡る大塩と花。

「あんな男に家庭を持つなんて所詮無理だ」と花に一刻も早く淳悟の側を離れさせるよう説得しながら近づいてくる大塩。

必死に拒否する花に大塩はある事実を伝えようとしますが「知ってるよ、本当のお父さんなんでしょ?」と花と淳悟が実親子であることを知っていた上での行為であったことを大塩に告げます。

花に突き飛ばされ流氷の上に倒れ込んだ大塩の「そんなのは神様が許さないんだよ」と言う言葉に「私は許す!」花はそう叫び、流され助けを求める大塩を見放します。

その後、大塩は流氷の上で凍死されているのが発見されました。

仕事を終え家に帰ってきた何も知らない淳悟は大塩が亡くなったことを花に告げますが花は「それ私がやった」と淳悟に告げ淳悟は大塩の葬儀後、花を連れ東京に逃げるように上京するのでした。

花は17歳になり慎ましい生活をしていた頃、町の警察官だった田岡が家を訪ねてきました。

田岡に現場に落ちていた眼鏡を見せられ、花のものだと悟った淳悟はナイフで刺殺します。

血塗れになり台所の片隅で座り込んでいる淳悟と田岡の死体を見て学校から帰宅した花は全てを悟ります。

「ああ、俺も一緒だな。」

と淳悟は呟きます。

【結】私の男 のあらすじ④

依存の果て

罪を犯したことを後悔する淳悟は塞ぎ込み、家から出なくなりました。

部屋はゴミやタバコの吸殻で荒れ果てています。

そんな淳悟を、高校を卒業し派遣の事務として働き始めた花が養っていくことになりました。

花もまた、こんな生活になってしまった過去の過ちに縛られ「絶対、悪くない」と自分を正当化しながら自分を保っていました。

そんな中、職場の尾崎に好意を抱かれた花は飲みに行った帰りに酔い潰れ家に送ってもらうことになりました。

家の前では淳悟が待っており、「始発まで家にこいよ」と淳悟に誘われるがままに家に入ります。

酔った花のコンタクトレンズを淳悟が外す姿に驚き、居辛さを感じていると淳悟に服を脱げと言われ嫌々ながらも尾崎はシャツを脱いでいきます。

尾崎の胸に顔を近づけ、指に口付ける淳悟を拒否し振り払い、水で必死に洗い流す尾崎を見た淳悟は「もういいよ、帰れよ。

おめぇには無理だよ」と無気力に尾崎を追い返します。

尾崎が帰ったあと突き飛ばされ倒れ込んだまま天を仰ぎ「俺は親父になりたいんだよ」と淳悟は涙ぐみながら呟きます。

?場面は変わり、赤い傘をさし、スーツに身を包んだ淳悟が人混みの中を歩いています。

足元はサンダルのまま綺麗なレストランに入り席についた先には明日、結婚式を控えた花と婚約者の男性が座っています。

綺麗に着飾った花を見て淳悟は「可愛くなったね。

いなくなって3年か」と声をかけます。

何か飲み物を頼むか婚約者に聞かれた淳悟は「お前には無理だよ」と言葉を投げます。

その言葉に戸惑いながらも注文を続ける婚約者の隣で花はテーブルの下でこっそり自分の脚を淳悟の脚に下から上へゆっくり這わせます。

見つめ合いそこは完全に2人だけの世界。

花は口パクで「おめでとうは?」と妖艶な表情でいいます。

淳悟はそんな花を見つめ一瞬視線を逸らしますがまた再び花の美しさに吸い込まれるように視線を合わせるのでした。

私の男 を観た感想

お互い愛に飢えていた2人。

家族が欲しいと思っていた2人ですが、身体が繋がることで更に自分たちがお互いにとって離れられない存在になると安心感を覚えていたのではないかと思います。

淳悟と花が出会ったときに、「俺はお前のもんだ」と言葉をかけた時から花の中で淳悟が絶対的な存在になり、同時に家族を皆亡くし孤独だった淳悟が花を見つけたときに自分の唯一の肉親ということで強い依存心を抱いたのだと思います。

人を殺めてしまったことで後悔する2人ですが、根本を辿ると花と淳悟が出会ってしまったことが始まりだったので花は3年間、淳悟と距離を置き人生をやり直そうとしたのではないかと感じました。

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