【ネタバレ有り】KKKベストセラー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:中原昌也 2006年5月に朝日新聞社から出版
KKKベストセラーの主要登場人物
私(わたし)
物語の語り手。作家。
愛川(あいかわ)
私の友人。カメラマン。
島田(しまだ)
作家。大手新聞社を通じて私を攻撃する。
KKKベストセラー の簡単なあらすじ
送り主不明の謎めいた隠し撮り写真にライバル作家からのネガティブキャンペーンまで、小説家として活動している「私」の元には次から次へと不愉快かつ不可解な出来事が舞い込んできます。精神的にも経済的にも限界が近づいていく中で、私は次第に小説を書くという行為そのものに疑問と絶望を抱くようになってしまうのでした。
KKKベストセラー の起承転結
【起】KKKベストセラー のあらすじ①
ある時に私の手元に1枚のスナップショットが送付されてきて、そこには見知らぬ男女の役者によって繰り広げられる小芝居の模様が隠し撮りされていました。
写真を眺めていても彼らの名前は一向に浮かんでくることはなく、会いたいという感情も湧いてきません。
送り主の名前は記載されていませんが、恐らくは小劇団からの嫌がらせ行為か抗議活動のようなものでしょう。
私にとって唯一心当たりがあるのは、以前に演劇業界全般に対して不快感を露にした文章を執筆して小冊子に発表したことです。
気分転換のために立ち寄ったコンビニの店内では、雑誌を立ち読みしたりATMで現金を引き出そうというお客さんで大混雑でした。
私は種類豊富なお弁当コーナーで焼肉弁当を購入して電子レンジで温めてもらい、滞在先のホテルニューオータニに引き返します。
高級ホテルの一室で独りで食べるコンビニ弁当は何とも味気ないものがあり、空になった容器に例の写真をちぎってゴミ箱に捨てます。
【承】KKKベストセラー のあらすじ②
次の日の朝に客室のダブルベッドの上で目を覚ました私は、寝ぼけていたために一瞬どこに居るのか解りません。
ようやく連載中の原稿が締め切り間近なために、出版社が借りたホテルに缶詰めにされていたことを思い出しました。
ホテル内のレストランに足を運んで、知人のカメラマン・愛川を呼び出して早めの昼食を一緒にとります。
馬の尻尾のように伸ばした後ろ髪をバンダナで縛り上げた独特なヘアスタイルは相変わらずで、その見るからに胡散臭げな出で立ちが原因で警察官に職務質問されることもしばしばです。
私は食事の席で演劇関係者を烈しく詰りますが、愛川は舞台の写真撮影を仕事にしているために彼らを擁護しました。
見解の相違からふたりの間には険悪なムードが立ち込めますが、メインディッシュのステーキが運ばれた途端に一変します。
口は悪いが美味しいものには目がない愛川を見ていると、さっきまでの怒りも消え失せて私は彼の分までの食事代を払ってあげるのでした。
【転】KKKベストセラー のあらすじ③
ようやく連載が最終回を迎えて缶詰め状態から解放された私でしたが、事後処理が残っていることに気が付きます。
以前から作家としての名義だけを貸して自身では一切タッチしていなかった仕事のひとつが、何の前触れもなく無くなってしまったばかりでした。
それによって毎月30万円近くあった月収が20万円程度にまで落ち込んでしまい、30代後半のフリーの身として生活は厳しくなる一方です。
今までは毎月10枚の原稿を文芸誌に発表していただけでしたが、これからは小説の生産量を増やさなければなりません。
デビュー当時こそ「平成の吉行淳之介」と多くの文芸批評家たちから持て囃されていた私でしたが、今年に入ってから彼らが相次いでこの世を去ってしまいました。
お世話になった義理もあり批評家のお墓参りに行きましたが、墓石に向かって小説を書き続ける意味を問いかけても答えは返ってません。
自らの著作にも愛着を持てない私は、本をタイムカプセルに入れて忘れることにします。
【結】KKKベストセラー のあらすじ④
タイムカプセルを埋めるのに相応しい場所を朦朧とした意識のまま探していた私は、近所に洞窟のようなエリアを発見しました。
ケイビングに関する能力も知識も持ち合わせていないために、入洞経験者と共に中に入るのが理想でしたがそのような人物は知り合いにはいません。
中にはつい最近の日付が記された1枚の新聞紙が落ちていて、そこには同業者・島田の1文が掲載されています。
日本でも5本の指に入るほどの歴史を誇る全国紙の紙面を利用して島田が行ったのは、私に対する大々的な嫌がらせキャンペーンです。
ハンサムなルックスに裕福な家庭に生まれ育った島田と、コンプレックスの塊のような私とでは初めから勝負になりません。
この事件がきっかけになって2年間続いた連載も終わることになり、何かと面倒なことに巻き込まれるようになっていきます。
私は傲慢極まりない作家たちがいつの間にかこの世から一掃されることを信じて、細々と執筆活動を続けていくのでした。
KKKベストセラー を読んだ読書感想
年がら年中お金に困っていて自分自身の仕事にもまるっきり愛着が湧いてこない、冴えない主人公の日常が味わい深かったです。
高級ホテルに滞在しながらも、友人と意味のない無駄話に興じたりコンビニのお弁当で空腹を満たす不甲斐なさには笑わされます。
作家同士のドロドロの争いごとも、リアリティー溢れるタッチで描かれていて印象的でした。
本来であれば高い知性と人格を兼ね備えたはずの有名作家たちの、剥き出しの醜さには呆れ果ててしまいます。
あらゆる小説家の傲慢さを戒めるために、自分にしか書けない小説の執筆を決意するクライマックスが痛快です。
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