アヒルと鴨のコインロッカー(伊坂幸太郎)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

アヒルと鴨のコインロッカー

【ネタバレ有り】アヒルと鴨のコインロッカー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:伊坂幸太郎 2003年7月に東京創元社から出版

アヒルと鴨のコインロッカーの主要登場人物

椎名(しいな)
大学に入学したての、お人好しで気の弱い青年。

河崎(かわさき)
椎名の隣に住んでいた、同じ学校の学生。容姿端麗で女癖が悪い。

琴美(ことみ)
河崎の元彼女。しっかり者で正義感が強い。

ドルジ
ブータンからの留学生。琴美の恋人。

アヒルと鴨のコインロッカー の簡単なあらすじ

椎名が大学入学と同時に越してきたアパートで出会った男、河崎。流されるままに一緒に行動し始め、なぜか一緒に本屋を襲撃し、広辞苑を盗むことに。その行動の真意はなんなのか、そして、河崎は何者なのか。最後に「え」と声を出してしまうほどの衝撃が。

アヒルと鴨のコインロッカー の起承転結

【起】アヒルと鴨のコインロッカー のあらすじ①

「本屋を襲わないか?」

少し気が弱く流されやすい男子大学生である椎名は、大学入学と同時に一人暮らしを始め、お菓子を持って隣人に挨拶に行きました。

なんだかそっけなく対応をされ、そんなものかと諦めながら、廊下でボブディランの「風に吹かれて」を口ずさみながら段ボールの片付けを始めます。

すると、隣人である河崎が部屋から出てきました。

「風に吹かれて」が好きだと話す彼は、「本屋を襲うのを一緒に手伝って欲しい」と言い出しました。

その理由は、同じアパートに住んでいるブータン人留学生がアヒルと鴨の違いを知りたがっているのでそのために辞書をプレゼントするからだと言います。

その中で、「琴美」という女性の話も出てきました。

河崎の元恋人で、その後ドルジと付き合っていたそうです。

その後、近所でブータン人と思しき人を見かけたため話しかけると、河崎から「ブータン人は恋人を失って心を閉ざしている。」

と教えられました。

また、「ペットショップ店長の麗子の言うことは信じるな」とも言われます。

【承】アヒルと鴨のコインロッカー のあらすじ②

ペットショップ屋の麗子

本屋を襲った後、気になった椎名は本屋を訪ねます。

しかし、「ばか息子がまた騒いだだけ」と全く気にしていない様子の本屋で、椎名は肩透かしをくらいます。

そんな中、椎名はひょんなことからペットショップの店長麗子とついに出会います。

琴美が椎名に話した内容は、衝撃的なものでした。

まず、「河崎」は、2年前に既に亡くなっていました。

そして、「琴美」も。

琴美とドルジは仲良しで、琴美を通して、ドルジは河崎と知り合いました。

琴美は、男グセの悪い河崎を疎んでいましたが、3人で会ううちにドルジは河崎と仲良くなり、日本語を教えてもらいます。

ドルジはブータンでの神様の教えを守り、穏やかな生活を送っていました。

しかし、琴美とドルジは、ひょんなことからある事件に巻き込まれていきます。

そして、その犯人のせいで、琴美は亡くなってしまいます。

【転】アヒルと鴨のコインロッカー のあらすじ③

河崎の正体

ペットショップ店長の麗子から全てを聞いた椎名は、アパートに戻ります。

ブータン人が住んでいるはずの部屋を訪ね、出てきた学生に「広辞苑を貸して欲しい」と頼むと、学生は訛りのある日本語で話し始めました。

出身を尋ねると、山形だと答えます。

そして次に椎名は河崎の部屋のドアを叩きます。

出てきた河崎に「一人暮らしの本」を差し出し、「ボブディランの詩集だけど、読む?」と尋ねた椎名。

すると河崎は、何の疑いもなくそれを受け取ります。

この事実によって、河崎は日本語が読めないことが、証明され、椎名はそのことを川崎に詰め寄ります。

つまり、「河崎」と名乗っていたこの男こそが、河崎が話していたブータン人留学生の「ドルジ」だったのです。

【結】アヒルと鴨のコインロッカー のあらすじ④

神様の声

椎名に全てを知られてしまったドルジは、改めて自己紹介をします。

動物好きの琴美との出会い、河崎との出会い、琴美からディランを「神様の声」と教えてもらったこと。

そして、ペット殺しの犯人を見かけてしまった琴美が犯行グループから恨みを買い、嫌がらせを受けていたこと。

河崎が実は病気であったこと。

その後、犯人の車を見かけた琴美は警察を呼び、逃げようとした犯人グループの車にはねられ亡くなってしまいます。

そして、河崎は病気で…。

立て続けに大切な人を亡くしたドルジは、勉強のために様々な会話を録音していたボイスレコーダーを使い、日本語を猛勉強します。

犯人が働いているとわかった本屋で犯人への報復を企み、そのために協力を仰いだのが椎名でした。

広辞苑を盗むのは、犯人を捕まえるためだったのです。

捕まえた犯人は大きな木にくくりつけられ、「鳥葬」されていることがわかりました。

ブータンの神様の教えを守るドルジが選んだ苦肉の策が、これだったのです。

ドルジは一生その罪を背負い、生きていく覚悟をしていました。

父親にガンが見つかった椎名は、しばらく実家に戻ることになりました。

駅でドルジと別れる時、椎名はディランの「風に吹かれて」を流したラジカセを持ち、それをコインロッカーに入れます。

「神様に、見ないふりをしてもらおう」

アヒルと鴨のコインロッカー を読んだ読書感想

まずは、伏線回収の見事さに衝撃を受けます。

河崎の話を聞いて想像していた人物像とストーリーが、麗子の話を境に大きく覆される様がとても見事でした。

次に、登場人物たちの魅力。

頼りないけれどお人好しで頼みを断れない椎名、はちゃめちゃだけどさみしがりや、どこか芯があり、頼れる河崎。

正義感が強く、まっすぐで、自分のことは顧みずに他人や動物を大切にする琴美。

「こんな人がそばにいたらな」と思うような魅力に溢れていました。

そして、どうしようもなく辛いことが起きてしまう、決してハッピーエンドではない物語。

琴美も河崎も死んでしまい、残されたドルジは「河崎」を完全にコピーします。

そのひたむきさと切なさが、なんともいえず心を動かします。

椎名の存在によって大きき救われたであろうドルジ。

最後の椎名の行動に、椎名という人間の魅力の全てが詰まっている気がします。

この物語の続きが、どうか幸せでありますように。

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