著者:東野圭吾 1993年12月に講談社から出版
浪花少年探偵団 2の主要登場人物
竹内しのぶ(たけうちしのぶ)
主人公。大学で教育学を勉強中。実業団に誘われるほどソフトボールがうまい。
西丸仙兵衛(にしまるせんべえ)
衣料品会社の会長。息子の昭一に経営を譲ったばかり。
中西雄太(なかにしゆうた)
しのぶの元教え子。東京に引っ越した後もしのぶを慕っている。
安西芳子(あんざいよしこ)
しのぶの隣人。 女手ひとつで娘・千鶴を育てる。
山下博夫(やましたひろお)
しのぶの前任者。 体力が自慢の熱血教師。
浪花少年探偵団 2 の簡単なあらすじ
内地留学の制度を利用して大学に通い始めた竹内しのぶですが、相変わらず相談事を頼まれたり事件に巻き込まれてばかりです。
かつての教え子とも交流を続けつつ、自分自身もスキルアップに努めて教壇に立つための準備を進めていきます。
大学での勉強を終えたしのぶは文福小学校の4年2組の担任として、悪戦苦闘しながらも再出発をするのでした。
浪花少年探偵団 2 の起承転結
【起】浪花少年探偵団 2 のあらすじ①
大阪市生野区の大路小学校の教師を辞めた竹内しのぶは、内地留学で兵庫県の大学に在学中です(「浪花少年探偵団」を参照)。
ある時に学生服や作業着の製造直売を受ける西丸商会の会長、西丸仙兵衛から秘書になってほしいと頼まれました。
話を聞きに谷町四丁目にある西丸商会のビルを訪れましたが、販売部長の米岡伸治が4階の窓から転落して亡くなります。
しのぶが不審に思ったのは、現場に落ちていた輪になったビニールひもと窓の金具が曲がっていたことです。
仙兵衛が会長職に退いてから2代目の昭一が社内の合理化を進めたために、極度のストレスで米岡は追い詰められていました。
昭一の席の真後ろで首をつろうとしましたが、金具がそれほど強くなかったために結果的には飛び降り自殺になってしまったのでしょう。
仙兵衛は自分の秘書ではなく昭一の心を入れ替えるための先生として、しのぶを会社に入れたかったようです。
ようやく昭一は目を覚ましてパソコンを知り合いの業者に引き取ってもらい、職場には以前のような和やかな雰囲気が戻ってきます。
しのぶは秘書ではなく、商店街のソフトボール大会の助っ人として西丸商会に力を貸すつもりです。
【承】浪花少年探偵団 2 のあらすじ②
中西雄太はしのぶが以前に受け持っていた生徒でしたが、父親の仕事の都合で東京に転校していきました。
1カ月前に中西から手紙を受け取って、「還境がずいぶん違って戸惑っている」と書かれていたために心配して様子を見に行きます。
上石神井駅から5分ほど歩いた中西家にお邪魔しましたが、雄太の両親は銀行を駆け回って現金をかき集めていて弟・利広の姿も見当たりません。
誘拐事件だと察知したしのぶは警察に通報するように促しますが、両親は要求された通りに5000万円を受け渡し場所の遊園地に持っていくつもりです。
現金を入れたバッグを運ぶのは雄太の姉・景子の役目で、指示された通りに幽霊屋敷のアトラクションにひとりで乗り込みました。
乗り物が終点についた時にはバッグは失くなっていて、利広は迷子センターで無事に保護されます。
しのぶが狂言誘拐だと分かったのは、脅迫状に書かれていた「5000万円を環元」という書き間違いが雄太の手紙の中にあった「還境」と全く同じだったからです。
離婚を考えていた中西夫妻は今回の件で心をひとつにしましたが、3人の子供たちが仕掛けた誘拐ごっこには気がついていません。
【転】浪花少年探偵団 2 のあらすじ③
2年間の大学での勉強が終わったしのぶは、来月から教師として復帰をするために間借りしていたアパートを引き払う準備をしていました。
隣に住んでいるのは安西芳子というシングルマザーでしたが、この部屋には永山和雄という中年男性が出入りしています。
永山は以前に薬物に手を出した前科もあり、芳子や娘の千鶴に暴力を振るっているようであまり評判は良くありません。
その永山の遺体が発見されたのはここから2キロほど離れた今里で、住人の松岡稲子の話では夜中にいきなり見知らぬ男が押し入ってきたためにゲートボールのスティックで抵抗したとの供述です。
松岡の家の玄関に若い女性用のパンプスが置いてあったこと、63歳の松岡が履くとは思えないことがしのぶには引っ掛かっています。
ガンに冒されていて余命いくばくもない松岡にとって、入院中に実の孫のようにかわいがっていた千鶴のことだけが心残りです。
芳子が浮気をしているという密告の電話をかけて自分の家の住所を教えて、玄関に彼女の靴を置いておけば永山は逆上して家宅侵入を犯すでしょう。
真相を知ったしのぶでしたが秘密を守ることを約束して引っ越したために、松岡は正当防衛が成立して罪に問われることはありません。
【結】浪花少年探偵団 2 のあらすじ④
しのぶが文福小学校の4年1組を受け持つようになってから1週間が過ぎましたが、生徒たちは一向に打ち解けてくれません。
3年生の時の担任だった山下博夫は人気者でしたが、事故の責任を取って辞めていました。
クラスで跳び箱が跳べない渋谷淳一に、放課後にひとりで居残り練習をさせている時にケガを負わせてしまったのが原因です。
山下のことを特に慕っていた芹沢勤は、それ以来淳一をいじめています。
高校時代に山下が体操でインターハイに出場した時の古い写真を見たしのぶは、彼と勤の顔がそっくりで親子であることに気が付きました。
跳び箱に細工をして山下を学校から追い出したのは勤の母親で、自分が若い頃に未婚の男性とのあいだに子供を授かったことを知られたくなかったからです。
しのぶは校長先生に直訴して、あの事故以来禁止されていた跳び箱の授業を体育の時間に実施します。
しのぶが見守る中、勤のアドバイスを受けた淳一は軽やかな足取りで跳び箱に向かっていくのでした。
浪花少年探偵団 2 を読んだ読書感想
教職者としての未熟さを痛感したヒロインの竹内しのぶが、自分自身の生き方を見つめ直しつつステップアップを目指すシリーズ第2弾です。
1度は学校を去りながらも生徒たちが恩師として頼ってくるのは、ひとえに彼女の人間的な魅力なのかもしれません。
次から次へとトラブルが降りかかってきますが、警察を出し抜くほどの推理力を発揮する探偵ものとしての面白さも健在でした。
誰よりも早く真実へとたどり着きながらも、時には秘密を守り抜くところにも常識に捕らわれない正義感を感じます。
現場に復帰して早々に大きな壁が立ちはだかりますが、小学生の純真さに励まされつつ一緒に成長を遂げていくことでしょう。
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