著者:宮部みゆき 2015年1月20日に毎日新聞社から出版
悲嘆の門の主要登場人物
〈名前〉三島孝太郎(みしま こうたろう)〈説明〉主人公。平凡な大学生〈名前〉都築(つづき)〈説明〉元警視庁の刑事。孝太郎とともに殺人事件を追う。〈名前〉ガラ(がら)〈説明〉始源の大鐘楼三之柱を護る戦士。目的を達するために現世に来ている。〈名前〉ユーリ(ゆーり)〈説明〉孝太郎を助けたいと願っている。現世とは別の次元で修業をしている女の子。〈名前〉真菜(まな)〈説明〉ガラの絵を描いた少女。母を亡くしている。
悲嘆の門 の簡単なあらすじ
平凡な大学生・三島孝太郎が、大学の先輩に誘われて始めたバイト先で、懇意にしていた友人が失踪します。
その友人を探しているうちに元刑事・都築と出会い、謎の生物・ガラとも出会います。
ガラによってもたらされた不思議な力を使い、孝太郎は連続殺人事件の犯人を追う狩人となり怪物と化してしまいます。
ガラとともに行きついた先に待っていたのは、裏切りでした。
そのことに気付いた孝太郎は、抵抗します。
無事に生還することが出来たのは、ガラの絵を描いた小さな少女の笑顔でした。
悲嘆の門 の起承転結
【起】悲嘆の門 のあらすじ①
退屈な大学生活を送っている三島孝太郎は、大学の先輩に誘われサイバーセキュリティ会社でアルバイトを始めます。
大学に通いながらバイトをこなす孝太郎に、隣に住むおばさんから「孫の美香がネットで悪口を書かれているようだ」と相談されます。
孝太郎は、バイト先の先輩・森永に話し、裏サイトで流れている情報を得ますが、しばらく様子を見ることにします。
世間では、死体の一部を切断する連続殺人と思われる事件が発生しており、バイト先でもネット上の情報を集める特別チームが編成されていました。
同じ頃、ホームレスが行方不明となる事件があり、森永は独自に調査していると孝太郎に打ち明けます。
そしてある日、森永はバイト先の上司・成田へ1枚の絵を残して失踪してしまいます。
孝太郎は、その絵を頼りに森永を探し始めます。
この絵を描いた少女・真菜は、母を亡くしており、近所の宗教施設へ保護されていました。
「この絵は何か」と問う孝太郎に真菜は「かいぶつ」といい、「空からやって来た」と言いました。
孝太郎は真菜が保護されたアパートに向かい、そこで目にしたものは、小さな窓から見える廃屋ビルの上に佇む有翼の怪物「ガーゴイル」でした。
孝太郎は、夜になって廃屋ビルに潜入しましたが、そこには先客がおり、この街に住む元刑事の都築でした。
都築もまた「ガーゴイル」のことを調査していると言います。
しかし、昼間真菜のアパートから見た「ガーゴイル」像は屋上にはなく、二人して見張ることになりました。
孝太郎と都築は、連続殺人事件について意見を交わし時間をつぶしていると、屋上で物音がします。
屋上に上がった孝太郎が目にしたのは、真菜の描いた有翼の怪物「ガーゴイル」の実物でした。
【承】悲嘆の門 のあらすじ②
孝太郎は驚きのあまり声を発することが出来ず、見る間にその怪物に吹っ飛ばされてしまいます。
続いて屋上に上がった都築は、武器を持っていないことを怪物に示します。
その怪物は女で、目的を達するためにここで力を集めていると言います。
その力とは、人間の渇望を吸い取り、大鎌を大きくするのだと。
よく見ると、怪物の手にある大鎌の中には、森永の姿が見えます。
森永は、取引をして鎌の中に納まったというのです。
そして、彼女は都築から刑事の魂を抜き取ると、自らは戦士でありガラという名だと名乗り、自分を追跡しないように孝太郎へ忠告すると飛び立って行きました。
それから間もなく孝太郎が大学で講義を受けていると、ユーリという不思議な娘が会いに来ました。
ガラと関わらないように彼女もまた忠告するのです。
できるだけ怪物のことを考えないようにしている孝太郎は、バイト仲間のカナメとマコちゃんと一緒に孝太郎の大学で昼食をとっています。
すると3人にバイト先から女社長の山科鮎子が殺されたという連絡が入ります。
しかも死体の一部が欠損していたというのです。
連続殺人事件の被害者となった社長に孝太郎はひそかに憧れていました。
孝太郎は、ガラに接触するために再び廃屋の屋上へ向かいます。
そこで、ガラに取引を提案し、連続殺人犯を捕まえ復讐すると誓います。
【転】悲嘆の門 のあらすじ③
ガラと取引した孝太郎は、左目の異変に気付きます。
ガラから特殊な力を与えられたのでした。
社長の葬儀の日、孝太郎はカナメ、マコちゃんとともに受付を担当していました。
そこにガラが現れ孝太郎の左目を通して、犯人を告げます。
葬儀後、社長の友人で犯人の田代慶子をおびき出します。
そして、孝太郎は自らの犯行を認めさせると、ガラは大鎌で彼女を狩りました。
しかし彼女は、連続殺人事件を装った模倣犯だったのです。
連続殺人犯が他にいると知った孝太郎は、都築に会いに行きます。
そして都築を連れて廃屋ビルに向かうと、孝太郎は再びガラへ取引をもちかけます。
そこで都築は刑事魂を取り戻し、孝太郎とともに殺人犯を追うことを決意します。
都築は、連続殺人事件の現場である苫小牧へ、孝太郎は川崎市へ向かいました。
時折ガラの力を借りながら犯人を追い詰めていきますが、それぞれの犯人は連続殺人犯に罪を着せようとした模倣犯ばかりの単独事件だったのです。
事件を追ううちにいつしか孝太郎は、正義を振りかざした怪物になっていました。
連続殺人事件も落ち着いてきた頃、隣に住む美香が行方不明となります。
美香はイジメの延長でさらわれたと知った孝太郎は、さらった犯人を殺してしまいます。
そして、希望を失った孝太郎は、ガラとともに旅立ちます。
【結】悲嘆の門 のあらすじ④
気が付くと孝太郎はガラの後をついて歩いていました。
遠くから「引き返せ」とユーリの声が聞こえますが、孝太郎は振り返らずに歩いて行きます。
長い長い道のりを歩いて行った先で、ガラは自らの目的を達するために、孝太郎を身代わりとして差し出そうとします。
抵抗する孝太郎が奈落の底へ落ちる中で思い出したのは、真菜の笑顔と都築の声でした。
次の瞬間、血まみれになった姿で目覚めた孝太郎は、現実の世界へ戻っていました。
近くにはジョギング中の女性がおり、お巡りさんに「この子は友達を助けようとして殴られた」と言っている声を聴きながら意識を失ってしまいます。
次に目覚めたのは病院で、美香の無事を知ります。
見舞いに来た都築に、あの夜のガラが住む世界での出来事を話した。
都築は「こちらが現実だ」と言い、去って行きました。
入院生活が半月に達したころ、屋上にいた孝太郎のもとへ、ユーリが現れます。
「戻って来てよかった」と告げるユーリに「すまない」と孝太郎が声をかけましたが、ユーリの姿は消えていました。
孝太郎は、空に向かって「生きる」ことを誓います。
悲嘆の門 を読んだ読書感想
平凡な大学生が退屈な日常の狭間で、様々な事件や謎の生物に会い冒険する物語で、次々に起こる展開に息つく暇もなく一気読みしました。
物語はファンタジーを含んだものだったのですが、この物語には大事なメッセージが込められていると思います。
この物語を通してガラは、言葉の重大さを教えてくれたように思います。
何気なく発する言葉に人は傷つき、また励まされます。
自分が気付かない間に傷つけてしまうことも多々あることに気付かされました。
この物語を読んで、自分が発する言葉で傷つけることがないように注意すること、できれば人の励みになる言葉を選んで行きたいと思います。
そう、ガラに狩られないように。
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