「龍は眠る」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|宮部みゆき

「龍は眠る」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|宮部みゆき

著者:宮部みゆき 1991年2月に出版芸術社から出版

龍は眠るの主要登場人物

高坂昭吾(こうさかしょうご)
主人公。もとは全国紙の記者。婚約者の小枝子とのトラブルで週刊誌に左遷される。

稲村慎司(いなむらしんじ)
高校1年生。 物体に残された思念を読み取る「スキャン」の能力者。

織田直也(おだなおや)
慎司の友人。「テレポート」や「テレパシー」も使える強力な能力者。

川崎明男(かわさきあきお)
有名高校の副理事。 やり手だが父に逆らえない。

三宅令子(みやけれいこ)
明男の秘書。 仕事はできるが学歴にコンプレックスがある。

龍は眠る の簡単なあらすじ

雑誌記者の高坂昭吾は台風の日の夜に稲村慎司という少年と知り合い、彼の不思議な力を目の当たりにします。

高坂の元婚約者・小枝子が誘拐された時に助けてくれたのは、慎司の友だちでありもうひとりの超能力者でもある織田直也です。

誘拐事件は解決し犯人は逮捕されますが直也は命を落とし、高坂は残された慎司を守ることを決意するのでした。

龍は眠る の起承転結

【起】龍は眠る のあらすじ①

嵐の夜に出会った少年はすべてお見通し

大手新聞社の支局に務めていた高坂昭吾は社会部のデスクから紹介された小枝子という女性と結婚が決まりますが、挙式の直前に破談になってしまいました。

職場に居づらくなった高坂は出向という名目で系列の週刊誌「アロー」に異動となり、雑誌記者としてゴシップネタを取材しています。

高坂が稲村慎司と出会ったのは、千葉県佐倉市に取材に行った帰りに東関東自動車道へ向かっていた夜です。

どしゃ降りの雨の中で自転車がパンクして立ち往生していた慎司を助手席に乗せて走っていると、タイヤがマンホールを踏んづけて停まってしまいました。

慎司はふたり組の大学生がマンホールをずらしたと言い出し、名前と乗っていた車の車種に行きつけのパブの看板まで「見えた」そうです。

垣田俊平と宮永聡で東京国際大学の教養学部に通う2年生、赤のポルシェ911でナンバーは川崎、成田街道の北側にあるハイアライ。

半信半疑の高坂でしたが、数日後の夕刊に宮永聡という若い男性の飛び降り自殺を報じる小さな記事を見つけます。

【承】龍は眠る のあらすじ②

ひとつの決着から次の事件へ

宮永聡のお葬式は京葉線の海浜幕張駅から車で5分ほどの自宅で行われていて、高坂が様子を見に行くと垣田俊平という大学生が参列していました。

高坂がポルシェのナンバーやハイアライの店名を口にすると、あっさりと垣田はあの台風の日の出来事を告白します。

兄から借りていた新車のポルシェを汚したくなかったためにマンホールを動かしたこと、その数分後に逃げ出したペットを探していた小学生が下水道に転落して亡くなったこと。

葬儀の3日後には垣田は警察に出頭しますが、殺意のない過失致死のために20万円以下の罰金で済むでしょう。

高坂が稲村慎司の不思議なパワーを信じ始めた矢先に、刑事から呼び出しがかかりました。

進学校・洋明学園の副理事長を務めている川崎明男という男性と結婚して、いま現在では中央区の新富町に住んでいる小枝子が何者かに誘拐されたことを知らされます。

犯人が電話越しに要求した身代金の金額は1億円で、受け渡し役に指名されたのは高坂です。

【転】龍は眠る のあらすじ③

もうひとりのサイキック

慎司から織田直也という青年を紹介してもらった高坂は、現金の詰まったトランクを持って受け渡し場所の晴海の埋め立て地へと向かいました。

小さな倉庫に両手首と両足を縛られた小枝子にナイフを突き付けていたのは、川崎明男の秘書でもあり今回の計画の発案者でもある三宅令子です。

川崎明男はもともと令子と付き合っていましたが、地元の県立高校を卒業しただけの彼女との結婚を父親は許してくれません。

洋明学園の理事長でもある父に言われるままに小枝子と夫婦になった後も、明男は令子との不適切な関係を続けています。

令子に唆された明男が高坂にぬれ衣を着せるための狂言誘拐に踏み切ったことを、慎司を上回る超能力を秘めた直也は早くから察知していました。

小枝子は無事に保護されましたが、犯人を取り押さえる際に直也が刺されて亡くなってしまいます。

高坂は迫真のドキュメントを書けとデスクからせっつかれますが、しばらくは何もしたくありません。

【結】龍は眠る のあらすじ④

内なる龍を眠らせて

たったひとりの同じ力を持った仲間を失って落ち込んでいた慎司元気付けるために、高坂はかつて神奈川県警の捜査課にいた村田薫と面会しました。

20年近く前に神奈川で発生した未解決の連続殺人事件を、村田は透視能力のある明子という女性と協力して解決に導いています。

村田が明子との仕事を通じての関係を一切絶ったのは、他人の心が分かりすぎて苦しんでいた彼女が30歳の時に自殺未遂の騒動を起こしたからです。

村田は今でも年賀状のやり取りだけは明子と続けていて、近所の神社で拾った龍の牙だというお守りを肌身はなさずに身に付けていました。

人間は誰でも自分の中に1頭の龍を飼っている、底知れないエネルギーに満ちあふれた龍、いったん目覚めると振り落とされないように背中にしがみついているのが精一杯。

稲村慎司が真のサイキックであるならば彼を救えるのは彼自身しかいないと村田は断言しますが、それでも高坂は手を貸すことくらいはするつもりです。

龍は眠る を読んだ読書感想

大手新聞社に就職を決めて前途も有望だったはずの主人公・高坂昭吾が、いつの間にやら芸能人のスキャンダルを扱う週刊誌の編集部でくすぶっている姿が何とも情けないです。

特ダネになるはずの超能力少年をいち早く発見しながらも、疑り深いところも記者としては致命的でしょう。

普段はパッとしない高坂がかつての婚約者・小枝子に危機が迫った時だけは、体を張って事件の予想外の真相を解き明かしていくジャーナリストに変身しています。

優れたれたサイキックが自分たちの存在に対して、異端者のような引け目を感じているところも印象的でした。

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