【ネタバレ有り】孤独な夜のココア のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:田辺聖子 1978年10月に新潮社から出版
孤独な夜のココアの主要登場人物
麻(あさ)
大阪の小さな出版社に勤めるアラサー。仕事にやりがいを感じ、結婚後も仕事を続けるが、連日の残業、出張で夫の透とすれ違いの生活を送るように。
透(とおる)
麻の夫。勤務時間は一定で残業はなく、週休二日。結婚する前はよく働く麻に感心していたが、結婚し、麻が仕事で家を空けがちなことに不満を持つようになる。
孤独な夜のココア の簡単なあらすじ
大阪の小さな出版社に勤める麻は、仕事に熱中するあまり気がつくと二十七歳になっていました。仕事にやりがいを感じ、結婚後も働くことを了承してくれた透と結婚した麻。仕事にかまかけ、家のことがおろそかにならぬよう、掃除をし、料理を作り、夫のためにセーターを編んだり、お酒に付き合ったりと、家にいる時は良き妻を頑張りますが、次第にすれ違いの生活を送るようになり……。
孤独な夜のココア の起承転結
【起】孤独な夜のココア のあらすじ①
麻は大阪の小さな出版社に勤めています。
労働組合もない小さな会社ですが、仕事量は多く、社員の麻は連日てんてこ舞いになりながら楽しく働いていました。
仕事にやりがいを感じ熱中するあまり、気が付くと二十七歳になっていた麻。
結婚願望は希薄だったものの、友人の紹介で知り合った透とは気が合い、仕事で消耗する麻を労わってくれる透に癒されていきます。
透は毎日くたくたになるまで働く麻に、仕事だけが人生ではないと優しく諭しながら、結婚を申し込みます。
冗談かと思い、結婚したらますます働くかもという麻に、『まあ、そない楽しんで仕事してる女の人は、見てて気持ちええけど、しかし、仕事よりもっと面白いこと世の中にあるかもしれへん。
そんなん考えたことある?』と麻に問います。
麻は考えたことがありませんでした。
それからこの透の言葉がふっと頭に浮かぶようになります。
限界まで働き、『ああ、しんど』と言いながらデートの待ち合わせに現れる麻に、『でも、この前よりは顔色きれいデ』なんて元気づけたりしてくれる透の優しさが嬉しく、麻は結婚することを承諾します。
【承】孤独な夜のココア のあらすじ②
麻は結婚後も仕事を続けることを透に宣言します。
透は了承します。
麻は結婚式当日もギリギリまで仕事をし、大急ぎでドレスを着つけしてもらい、披露宴の席で透と顔を合わせた時に思わず漏れたのは毎度ながら『ああ、しんど』という言葉でした。
黒いモーニングを着た透はかすかに笑みを浮かべ、麻を労わってくれました。
麻は透からの労りの言葉が欲しいがために結婚したので、これからの結婚生活、ふんだんに透から優しのシャワーが浴びせられるのを夢見ていました。
結婚後も相変わらず、仕事は忙しく、連日残業で出張で家を空けることもありました。
仕事にかまけ、家のことがおろそかになるのは嫌だったので、毎日きちっと料理を作り、冷蔵庫にあるので温めて下さいだのと書いたメモを似顔絵を添えてテーブルや冷蔵庫に置いておきました。
家にいる日は、掃除をし、透にセーターを編んだり、お酒の相手をしたり、良き妻として奮闘しました。
その分、週に一二度家を空けることなんて充分償えると信じていました。
【転】孤独な夜のココア のあらすじ③
麻はますます忙しくなり、サイン代わりの似顔絵を添えた置手紙はどんどん増えていきました。
台所の床や戸棚の前に散らばったそれを透は読んでいるのかさえ、麻にはわからなくなっていました。
その日は珍しく早く仕事が片付きそうだったので、いそいそと透に電話し、今日は六時には帰れそうだと伝えました。
麻の手料理が食べたいと言う透のために、先に帰ってご飯の支度をしておくと言った麻でしたが、電話を切った後、次々と仕事が舞い込み、結局約束の六時をだいぶ過ぎて帰宅しました。
透は先に帰ってきてからまた外出したようで、仕事着は吊るされている状態でした。
雨の降る寒い梅雨の夜で、レインコートを着ずに外出している透のことが気になり、麻は雨の中、透を探し歩きます。
行きつけの焼き鳥屋をのぞいてみますが、そこに透の姿はありません。
以前、先に帰宅した透が、この焼き鳥屋で拗ねて飲んでいたことがあり、落ち合った二人は楽しく飲んで食べて仲直りしたことがありました。
しかし、今夜は焼き鳥屋にも小料理屋にも透はいませんでした。
【結】孤独な夜のココア のあらすじ④
諦め、帰宅した麻。
透は夜の十一時頃、ひどく酔っ払った状態で帰ってきました。
言葉も交わさず、寝床にもぐりこんでしまった透に、そんなに飲まなくても……と声をかけた麻でしたが、透からは静かな返答しかありませんでした。
怒るでもない透の態度に、言葉を重ねて事情を説明する麻。
だったら最初から電話なんかしてこなければいいじゃないかと言われ、麻もその通りだと思います。
久しぶりに透の喜ぶ声を聞きたいがために電話して、期待させ約束を守れなかった自分の落ち度を呪います。
夏が過ぎ、寒くなった頃、透は家を出て行ってしまいました。
今日、麻の会社に透の相手の女性が訪ねて来ると言います。
対面した相手は、麻より年下の小柄でひよわなおどおどした目つきの女性でした。
麻はベテランの職業婦人らしく世慣れた挨拶を交わし、ランチに誘います。
頭の中では、結婚が破綻し仕事一筋で働く自分の姿をリアルに思い浮かべることができる一方、会社をやめ、仕事をやめ、なんとかして関係を修復したいと願う自分もまた存在しているのです。
孤独な夜のココア を読んだ読書感想
恋愛のまるわる12編の短編が収録された『孤独な夜のココア』から、多忙によって結婚生活が崩壊していく様を描いた『おそすぎますか?』をご紹介しました。
恋愛の名手、田辺聖子さんによる珠玉の作品集で、短編でありながら、恋愛の甘さも苦さも存分に味わえる一冊になっています。
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