「総理の夫」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|原田マハ

原田マハ「総理の夫」

【ネタバレ有り】総理の夫 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:原田マハ 2013年7月に実業之日本社から出版

総理の夫の主要登場人物

相馬凛子(ソウマリンコ)
42歳で日本初の内閣総理大臣になった女性。曲がった事が大嫌いな正義の人。

相馬日和(ソウマヒヨリ)
凛子の38歳の鳥類学者の夫。人が良く可愛らしい男性。

相馬崇子(ソウマタカコ)
日和の母親。相馬財閥の奥様だが世間知らずで少し天然。

総理の夫 の簡単なあらすじ

相馬凛子は42歳という若さで、20××年に第111代内閣総理大臣に任命されます。そんな妻を心から愛する鳥類学者の日和は、この歴史的な出来事を後世に残すため日記を綴ることを決心。就任直後、相馬内閣は高い支持率だったのだが、混乱する世の中で再増税・脱原発・社会福祉問題と、凛子は信念を貫くことが出来るのか?日和が総理の夫として献身的に妻を支えながら、凛子が総理として奮闘する日々を記録した物語。

総理の夫 の起承転結

【起】総理の夫 のあらすじ①

ファースト・ジェントルマン

20××年9月20日、この記念すべき日に相馬日和は鍵付きの日記を綴ることを決心します。

日和は善田鳥類研究所に勤める38歳の鳥類学者。

大財閥相馬財閥を実家に持つイケメン男性です。

この日、日和の愛する妻・凛子が、女性初の日本国内閣総理大臣に指名されるのです。

凛子は現在42歳。

政策シンクタンクの研究員を勤めたのち、衆議院議員に立候補し31歳で初当選。

父は開田川賞受賞作家で、母は政治学者でしたが両親とも他界しており、母の遺志に従い政治家となった切れ味鋭い論客であり正義の人です。

そのうえ美人。

日和は総理の夫=ファースト・ジェントルマンとして凛子の健康を気遣い、精神的にも支えていこうと決心します。

そして未来の超一級歴史的資料になるに違いない、この日記を書くことにしました。

一野党の直進党党首であった凛子を総理大臣に担ぎ出したのは、先ごろまで与党だった民権党から離脱して民進党を立ち上げた原氏でした。

まだ米沢内閣が与党だったころ、凛子と日和夫妻は原夫婦に食事に招かれた事がありました。

米沢総理とソリが合わなかった原は、実に巧みに米沢内閣への批判を会話の中に紛れ込ませてきます。

その会話に呼応するように凛子は原に向かい、「今国会で内閣不信任決議案を提出されたら、どうされますか」と質問したのです。

この言葉を待っていた原は「一緒に倒閣しましょう」と答えます。

このとき希代の策士・原九郎によって、凛子が総理に祭り上げられることが決まったのです。

組閣も無事に済んだあと凛子の所信表明の演説があり国内外のマスコミ各社からも好評を得ました。

そして日和のファースト・ジェントルマンとしての初仕事、総理夫妻のアメリカ合衆国公式訪問も終えたころ、兄の相馬多和から実家へ食事に来るよう誘われます。

兄と母からの話の内容は、凛子の政策の柱である「再増税」と「脱原発」を相馬家の都合の良いように変えて欲しいというものでした。

【承】総理の夫 のあらすじ②

日和の秘め事

実家での会食の翌週、日和は広報担当の富士宮さんから首相官邸への引っ越しを告げられます。

凛子が総理大臣になったからには、この日がくることが分かっていましたが、毎日野鳥観察を続けてきた思い出深い護国寺の家を出ることに寂しさを覚える日和でした。

自分だけ護国寺に残るわけには行かないかと抵抗を試みる日和でしたが、凛子には公邸への夫婦での移住は総理の夫たる者の義務だと一蹴されてしまいます。

二人の間にちょっとした諍いがあって少ししたころ、ぶじ総理大臣公邸への引っ越しが済みましたが、中に入ってみると公邸は想像以上に味気ないところでした。

そして日和の日常は、家と公邸の往復という味気ないものへと変わってしまったのです。

そんなある日、研究所の所長が学会発表するために必要な資料を日和が所有しているということで、同僚の伊藤るいという女性と日和の自宅へ向かいました。

ただ珍しい鳥類図鑑をスキャンするはずだけのはずが、日和はるいから研究所を辞めなければならないかもしれないという相談を受けます。

そして、家を出てタクシーに乗り込んだ時、るいは日和の肩に頭をもたげハラハラと涙をこぼしたのでした。

何もなかったとはいえ後ろめたい気持ちの日和は、民心党党首である原から電話でホテルのバーに呼び出されます。

そのバーで原から語られたのは、日和の身辺を探っていた阿部久志という政治ジャーナリストが、日和とるいがタクシーの中で顔を寄せ合う写真を撮ったという話でした。

そして阿部は、その写真を公にしてほしくなければ一千万円払うように原を通して日和に要求してきたのです。

今迄どんな些細な事も凛子に相談してきた日和は、この事件を打ち明けるかどうか悩みますが、凛子の今置かれている状況を考えた日和は、この事件を自分で処理することに決めました。

【転】総理の夫 のあらすじ③

原九郎の腹黒さ

同僚との写真を盗撮された日和は、その写真を撮った阿部に直接会って話をすることにしました。

一千万円を払う覚悟はできたのですが、後々の事を考え振込ではなく現金で支払おうと思ったのです。

この密談の場で、阿部はこのスキャンダルは原九郎に雇われてやったのだと白状しました。

凛子を総理大臣に担ぎあげ圧倒的な国民の人気を得たあとに、どうにか消費増税法案を可決させる。

そのうえで、なるべく早い時期に退陣させ自分が次期総理大臣の座に就く。

それが原の描いたシナリオで、退陣させるためのスキャンダルとして利用されたのが日和だったというのです。

阿部はスクープを取るために原に協力したのですが、凛子の日本を変えようとする本気の姿に心を動かされ、全てを日和に打ち明けてくれたのでした。

原が週刊誌にスキャンダル写真が載ると思っている日の前日、日和は最近起こった出来事と原が考えているシナリオを凛子に打ち明けることにします。

日和の話で、自分が原の人形にされていたことを知った凛子は、原より大きな技を仕掛けるべく挑戦的な微笑みを浮かべるのでした。

年が明け凛子は宮中での新年祝賀の儀のため皇居へ出掛けたあと、夕方には相馬家新年会へ夫婦二人で出席しました。

そこで凛子は日和の兄・多和から消費税増税を実行するつもりなのかと質問されますが、政治資金パーティー券を買っていることを盾に詰め寄る多和に、凛子の政策秘書である島崎がビシッと意見し多和は黙るしかなくなりました。

相馬家を後にした二人は、次に原九郎の自宅を訪れます。

この時、原から消費税率引き上げ法案に関して、自分は反対に回るつもりだと告げられた凛子ですが、通常国会で予定通り消費税率の再引き上げを含む政策を打ち出します。

凛子は「皆さんの生活を私が守ります。

私は皆さんを信じています。

だから、皆さんも私を信じてください。」

と、国民に信を問いました。

【結】総理の夫 のあらすじ④

子育てという日記

施政方針演説を行った翌週、凛子の支持率は八十%を記録しました。

国民の支持を得た凛子でしたが、経済界の面々からは強い反発を受けます。

国会では相馬凛子総攻撃の様相を呈し、原九郎も相馬内閣を退陣させるべく水面下で動いていました。

原としては国民に「やはり増税は困る」と思わせ、少しでも総理の支持率を下げてからと待ち構えていたのです。

しかし凛子は先手を打ち、内閣不信任が提出される前に自ら「解散」をしたのでした。

解散総選挙は原九郎との一騎打ちとなりましたが、激しい戦いの結果「もう決して後戻りしてはならない」という凛子の本気が国民に伝わり、凛子一派が辛くも勝利を収めます。

敗れた原九郎は悔しさを滲ませながらも、相馬凛子が国民に選ばれ彼女こそが総理大臣にふさわしいのだと潔く認めました。

第二次相馬内閣が発足後、凛子は政治改革断行のために邁進すると同時に、家庭を顧みなかったことを反省し日和との時間も持つようになります。

忙しいながらも二人の時間を取り戻したある日、凛子の妊娠が分かり喜ぶ日和でしたが、その三日後に凛子は総理大臣を辞任するという驚くべき記者会見を開いたのでした。

政界のみならず国民も激しく動揺し、世論は辞任賛成と反対の二つに分かれます。

日和も凛子の真意を図りかねているころ、日和の母・崇子に二人は呼び出されました。

崇子と、その場に同席した原九郎から凛子は心のこもった説得を受けます。

原からの「もっと凛子が総理である姿を見ていたい。

働く女性が子供を産み、育てやすい社会を整備すると約束したことを実践しなければ、あなたは大嘘つきになる」という言葉に動かされ、凛子は辞意を撤回することになりました。

凛子が国会で代表質問を受けている間、日和は子供の世話をしています。

子育てこそが成長を綴る日記だと気づいた日和は、日記をつけるのはこの日を最後にしたのでした。

総理の夫 を読んだ読書感想

政治にあまり興味のない人でも、楽しく読み進められる小説だと思いました。

なぜ増税しなければいけないのか、このままでは日本の未来はどうなってしまうのかという事を少しでも知ることが出来たのは有意義でした。

そして、なんといっても凛子総理という人物が興味深かったです。

頭脳明晰でバイタリティー溢れる強い女性でありながら、優しく気配りも出来るチャーミングな美人。

こんな魅力あふれる女性だからこそ献身的に尽くしてくれる夫がいて、敵対していた人をも大きな味方に変えてしまうのだなと感じました。

いつか凛子のような本気で日本を変えてくれる、素敵な女性総理大臣が日本に登場する日が来ることを期待してしまう作品でした。

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