【ネタバレ有り】グスコーブドリの伝記 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:宮沢賢治 初出1932年4月に不明から出版
グスコーブドリの伝記の主要登場人物
グスコーブドリ(ぐすこーぶどり)
主人公。天災で家族を失い、苦難の中に成長した。
ネリ(ねり)
ブドリの妹。子供の頃に誘拐される。
赤ひげの男(あかひげのおとこ)
ブドリの二番目の雇い主。ブドリに勉強を奨めてくれる。
クーボー博士(くーぼーはかせ)
ブドリの恩師。革新的な考えの持ち主。
ペンネン技師(ぺんねんぎし)
火山局でのブドリの上司。
グスコーブドリの伝記 の簡単なあらすじ
冷害で一家が離散してしまい、妹とも生き別れになったグスコーブドリは家族と暮らしていた土地を買い取った実業家の元で苦しい労働に従事します。その後森を出て沼ばたけで六年間働いた後、大都市イーハトーヴで自らが影響を受けた本の著者クーボー博士を訪れたブドリは博士の紹介によって火山局に勤める技師になり、農民達の助けになろうと懸命に働きます。時に誤解を受けながらも多くの農民達を助け、行方不明だった妹のネリとも再会を果たします。ある年、再び冷夏になろうとしていました。自らが孤児となったあの飢饉が繰り返されないよう、ブドリは自分が犠牲になって火山を噴火させ、冷害を食い止めるのでした。
グスコーブドリの伝記 の起承転結
【起】グスコーブドリの伝記 のあらすじ①
ある年冬が終わってもいつまでも暖かくならず凶作になります。
翌年も同じだったため、とうとう飢饉になりました。
グスコーブドリは森で両親と妹と暮らしていましたが飢饉のため両親は行方不明になり、妹も人さらいに連れて行かれてしまいます。
疲労に倒れたブドリが再び目覚めた時飢饉は終わっていましたが家も家の建っている森も人手に渡っていました。
ブドリは森を買った男の元で働くことになります。
それは森の木にてぐすを飼って糸を取る仕事でしたが、ただ同然に働かされて、仕事は厳しく危険でした。
ブドリは仕事のない冬の間、家に残されたてぐすに関する書物を読んで懸命に勉強します。
翌年もブドリは男の元でてぐす飼いの労働を続けますが、火山の噴火による降灰で事業はだめになってしまいます。
雇い主は逃げ出してしまい、ブドリはたった一人野原へ出て行かねばなりませんでした。
町へ向かう途中、ブドリは沼ばたけで賭けのような米作りをしようとする男に出会い、その男の元で働くことにします。
【承】グスコーブドリの伝記 のあらすじ②
男は元は大百姓でしたが冷害のために零落してしまい、常識外れの大量の施肥をして損害を取り返そうとしていたのでした。
しかし稲は病害で倒れます。
男は無茶な所もありましたが磊落な性格でした。
自分を笑った他の農民達を見返したいと、ブドリに死んだ自分の息子の本で勉強することを奨めます。
読んだ本の中でもブドリはクーボー氏の本に興味を覚え、町で学びたいと思うようになります。
ブドリは次第に知識を身につけて雇い主の男の役に立つようになりますが、病害に続いて干ばつのために男の稲作りはうまくいきません。
男は次第に貧しくなり、仕方なくブドリは暇を出されます。
子供の頃から多くの苦労をしたブドリはイーハトーヴに出て働きながら勉強し、農民達の困窮を救おうと意欲に燃えます。
そしてもっとも影響を受けたクーボー博士の学校を目指します。
漫然と講義を聴いているだけの学生達よりもブドリはいつの間にか多くの知識を得ていました。
学校を訪れたその日にもう優れた成績を示したブドリに博士は出来たばかりの火山局の仕事を斡旋してくれます。
【転】グスコーブドリの伝記 のあらすじ③
火山の多いイーハトーヴでブドリは機械の設置や観測を仕事として懸命に働き、勉強します。
ある時サンムトリ山が噴火の兆候を示します。
火山局では火山に穴を開けて噴火がサンムトリ市に及ばないようにすることに成功します。
工作は命がけの危険なものでした。
ブドリは数多くの火山を渡り歩き工作を重ねます。
クーボー博士の構想により、潮汐を利用した発電所もたくさん作られました。
人工降雨やそれを利用した施肥も出来るようになりました。
施肥の指導を間違えた農業技師が火山局に責任を転嫁したせいで、ブドリは誤解した農民達に暴力を振るわれますが、多くの農民にとって火山局の仕事は大変役立つものでした。
そんなブドリの元に、子供の頃に生き別れになっていた妹ネリが訪ねてきます。
ネリはさらわれた後農家に拾われてそこで働いていました。
農家の息子と結婚していて、やがて子供も生まれました。
ブドリはかつて世話になった雇い主にも再会し、充実した幸福な日々を過ごします。
【結】グスコーブドリの伝記 のあらすじ④
ブドリが二十七の年、再び寒い気候が訪れますが凶作を防ぐ方策は見つかりません。
必死になったブドリはカルボナード火山島を噴火させれば炭酸ガスの効果によって気温を上げることが出来ると考えます。
クーボー博士は火山を噴火させることは出来るがそれを行う人間がどうしても一人犠牲になると言い、ブドリを止めます。
ブドリは自分の代わりはこれからたくさん出てくると言い博士の止めるのを聞きません。
火山局の上司ペンネン技師は若いブドリの代わりに自分がそれを行うことを主張しますがブドリの決意は固いのでした。
噴火後の対応にペンネン技師が必要であることを説いてとうとう説得します。
いよいよ決行となり、ブドリは一人島に残ります。
その日イーハトーヴの人々は空の色が変わるのを見ました。
その後噴火の影響で気候が温かくなり、ついにその年は凶作を免れました。
ちょうど昔のブドリのような、多くの子供達はその年を家族と共に食べ物の心配をせず送ることができたのでした。
グスコーブドリの伝記 を読んだ読書感想
宮沢賢治の物語は鋭い感性と共に、豊富な科学知識にとても驚かされます。
この『グスコーブドリの伝記』は特にそうで、ほどんどサイエンスフィクションと言っていいくらいです。
潮流を利用した発電や人工降雨、火山ガスの温室効果を利用して冷害を未然に防ぐなど、時代をはるかに先取りした内容には本当にびっくりします。
小型飛行船を移動の足にしている大博士など空想もいっぱいですが、一方自分の田で一か八かの収穫を当て込む農民や、科学者に不信を抱く農民の姿にはリアリティがあって、この物語に説得力を与えています。
自己犠牲と信念の物語ですが読み物としても優れた内容を持つ不朽の名作です。
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