【ネタバレ有り】暗幕のゲルニカ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:原田マハ 2016年3月に新潮社から出版
暗幕のゲルニカの主要登場人物
八神瑤子(やがみようこ)
ニューヨーク近代美術館の絵画彫刻部門のキュレーター。同時多発テロで夫を亡くしている。10歳の頃にゲルニカを見て心を奪われていた。
カイル(かいる)
ニューヨークタイムズの記者。空爆を推し進めるアメリカに対して批判的は記事を載せている。瑤子の親友。
ルース・ロックフェラー(るーす・ろっくふぇらー)
ニューヨーク近代美術館の理事長。資産家。普段は物静かな貴婦人だが、逆鱗に触れると容赦ない一面がある。
暗幕のゲルニカ の簡単なあらすじ
八神瑤子は反戦のためにピカソ展を開こうとしていました。しかしゲルニカに関してはマドリッドの美術館から借り出しの許可がおりません。それでも仲間の力を借りて借り出しの許可を得ます。それでもテロ組織に拉致され、命の危機にさらされます。そこで特殊部隊に助け出され、瑤子は何とかピカソ展を開くことができ、会見でゲルニカを披露するまでに至りました。
暗幕のゲルニカ の起承転結
【起】暗幕のゲルニカ のあらすじ①
八神瑤子はニューヨーク近代美術館にキュレーターとして務め、夫であるイーサンと共に幸せに暮らしていました。
結婚時に指輪の代わりに貰ったのはピカソが描いた鳩の絵のドローイングでした。
この鳩がイーサンと遙子の思いを繋げるものでした。
しかしそんな幸せを同時多発テロによって奪われます。
それでも新聞記者のカイルやその他の多くの人の支えがあり、瑤子は元気を取り戻します。
しかしアメリカは同時多発テロの後、イラクとの戦争に舵を取っていました。
テロで夫を失った瑤子でしたが、戦争には反対でした。
また自分のように悲しい思いをする人を生み出したくありませんでした。
そこで反戦のためにピカソのゲルニカを展示しようと企画します。
ゲルニカはピカソがパリ万博のスペイン館で発表した作品です。
ピカソの故郷であるスペインのゲルニカが空爆で焼け野原になった記事を見て描かれたものです。
そこにはピカソの戦争に対する怒りや悲しみ、負の感情が全て注ぎ込まれた作品です。
それを反戦のために展示しようと瑤子は思ったのです。
しかしマドリッドにあるピカソを借り出すことは不可能でした。
そこで国連にあるゲルニカのタペストリーを借りようと決断しました。
しかし国連でイラクへの武力行使が承認された時の会見場ではゲルニカのタペストリーに周りの目を遮るような暗幕が掛けられていました。
【承】暗幕のゲルニカ のあらすじ②
ゲルニカに暗幕をかけたことについて世間は話題になりました。
特にカイルはニューヨークタイムズで批判的な記事を載せます。
そのことでピカソに最も詳しいとされる瑤子も記者に狙われます。
誰の指示で暗幕を掛けたのかが焦点でした。
なんとか気づかれないようにオフィスに向かって上司からとんでもない話を聞かされます。
暗幕の指示をしたのが瑤子だという噂が飛び交っているというものです。
当然、遥子は否定します。
これはホワイトハウスが自身の火の粉を払うために遥子の名前を出したものでした。
同じくニューヨーク近代美術館の理事長であるルースも暗幕を掛けたという噂を流されていました。
このままではピカソ展が中止になってしまうと遥子は危機感を募らせます。
そこでマドリッドに向かい、直接本物のゲルニカを連れて帰ると決心します。
瑤子はマドリッドでゲルニカを展示している美術館の館長、アダと交渉する予定でした。
しかしそこに資産家のパルドイグナシオを入れて三人で話すことになります。
遥子はアダとパルドにゲルニカを貸してほしいと頼みます。
しかし返事はnoでした。
理由はゲルニカを奪おうとテロ組織が動いているということでした。
遥子は諦めてゲルニカの展示は断念すると記者会見で発表する予定でした。
しかしルースからの手紙で記者会見を中断して、パルドの下に向かいます。
そこでゲルニカを借りる約束を取り付けることができました。
しかしゲルニカを動かしたその夜に遥子は拉致されてしまいます。
【転】暗幕のゲルニカ のあらすじ③
瑤子は縛られた状態で目を覚ましました。
瑤子を拉致したのはテロ組織ETAでした。
瑤子の命とゲルニカとを交渉のテーブルにつかせ、強奪することが目的でした。
瑤子はマイテに拉致されている間、世話をされました。
マイテは心優しく、話もわかる人でした。
瑤子はマイテにゲルニカの持つメッセージや意義を説明して、こんなことをやめるように説得しました。
するとマイテはピカソの作品かの真贋を見て欲しいと一枚の写真を出しました。
それは鳩の絵が描かれた絵の写真でした。
鳩はピカソが好んで描いた対象でした。
今までの経験から瑤子はこの絵がピカソの真筆で加えて未発表のものであると推測しました。
マイテの話から彼女の母親がドラの娘であり、その写真を撮ったのがドラであると判明します。
自身がピカソの血縁だと知り、マイテは泣いて喜びます。
そしてゲルニカを守りたいと誓います。
ETAは交渉が決裂したために瑤子を殺そうとします。
しかしそこに瑤子を救助に来た特殊部隊が突入して、瑤子は救出され、マイテと離れ離れになります。
【結】暗幕のゲルニカ のあらすじ④
瑤子はピカソ展のオープニングレセプションの日を迎えていました。
拉致されてからは激動の日だったために食事が喉を通りませんでした。
しかし念願のピカソ展にたどり着いた今日は朝から食欲があり、全身がエネルギーに満ち溢れていました。
ニューヨーク近代美術館に入ろうとすると報道陣に囲まれます。
彼らの注目はピカソ展にゲルニカが展示されるのかどうかでした。
瑤子は質問には答えずにニューヨーク近代美術館に入っていきます。
そこで瑤子はパルドと再会します。
パルドは瑤子に渡したいものがあるといいます。
一つは鳩の絵でした。
それはマイテが大切にしていたピカソの絵です。
もう一つはパルドが若い頃に貰った赤い涙というピカソの作品でした。
両方ともを展示してほしいと渡されます。
そして瑤子は記者会見場に立ちます。
そこでカイルからゲルニカについて質問をされます。
そこで瑤子は国連のロビーで行われた演説での暗幕が掛けられたゲルニカについて話をします。
あるはずなのになかったゲルニカを瑤子は取り戻したと暗幕を剥がします。
そこにはタペストリーではなく本物のゲルニカがありました。
暗幕のゲルニカ を読んだ読書感想
この本はピカソの恋人ドラと瑤子の話が交互に繰り広げられました。
ピカソの話はゲルニカという作品が作られてから、スペインに帰るまでの話です。
瑤子はスペインからアメリカに連れてこようという話でした。
この作品からゲルニカという作品の持つ影響力が分かります。
教科書でしか見たことのない作品ですけど、作者のピカソの思いが伝わってきます。
祖国への愛情と戦争への恨みがあの絵に描かれているとは思いませんでした。
そしてそれに関わる多くの人々が魅了されています。
ただそれは絵だけではなく人としての魅力があったからだと思います。
ゲルニカという絵を愛していたにもかかわらずピカソは自分のものではないと言い切るところが素晴らしいですね。
それで世界から戦争が無くなるのなら手元から離れても惜しくないという気持ちだったのでしょう。
エンターテイメントの作品ですが、非常に考えさせられる作品でした。
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