【ネタバレ有り】きらきらひかる のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:江國香織 1991年5月に新潮社から出版
きらきらひかるの主要登場人物
岸田 笑子(きしだ しょうこ)
お見合い結婚をして、睦月の妻になる。アルコール中毒で情緒不安定。睦月に恋人を持つことを容認している。
岸田 睦月(きしだ むつき)
内科医で、笑子の夫。ゲイであることを両親に打ち明けるも世間体を気にされお見合いさせられる。幼馴染の紺と現在も交際中。
紺(こん)
睦月の幼馴染で恋人。貧乏学生をしている。野生的で皮肉屋。
羽根木(はねぎ)
笑子の元恋人。睦月と結婚する前に付き合っていたが、笑子の情緒不安定についていけず別れを告げる。
柿井 大介(かきい だいすけ)
睦月の大学時代からの友人で同僚の婦人科医。ゲイで樫部という脳外科医と交際中。
きらきらひかる の簡単なあらすじ
笑子と睦月は新婚ほやほやの夫婦です。両家の両親による熱心なすすめでしぶしぶ見合いをし、結婚に至りました。しかし二人には秘密があります。笑子はアル中で情緒不安定、睦月はゲイ。睦月には結婚前から付き合っている幼馴染の紺という恋人もいます。お互いすべて許し合って結婚したはずでしたが、どんどん歯車が狂っていき……。
きらきらひかる の起承転結
【起】きらきらひかる のあらすじ①
睦月と笑子は十日前に結婚したばかりの新婚夫婦です。
睦月は医者をしており、笑子はイタリア語の翻訳をアルバイト程度にしています。
睦月は几帳面で潔癖な性格で(実際、潔癖症)、笑子は自由奔放で正反対の二人。
そんな二人はお見合いで知り合いました。
両家の親が、我が子の行く末を案じ、無理やりお見合いの場に引っ張り出してきましたことが出会いです。
睦月と笑子にはそれぞれ秘密があります。
睦月はゲイ、笑子はアルコール中毒で情緒不安定。
お互い脛に傷を持つ同士なのです。
夫婦干渉はなく、外に恋人を作ることも容認していて、実際睦月には恋人がいます。
紺というその青年とは幼馴染で、笑子との結婚前から続く関係です。
笑子は紺の存在を知っており、睦月から聞く紺の話を楽しみにしているくらいです。
笑子は睦月と結婚する前に羽根木という年上男性と付き合っていましたが、笑子の情緒不安定が顕著になると別れを告げられ、以来恋愛はこりごりだと感じています。
【承】きらきらひかる のあらすじ②
睦月は几帳面で潔癖な性格なので、一日の行動はルーティーンとして決まっています。
対して笑子は、自由奔放で型通りに行動することは苦手です。
睦月が笑子に課した唯一の家事は、ベッドメイキングだけです。
気ままでごっこ遊びのような結婚でしたが、両家の親はパートナーが見つかり安心していました。
睦月の両親はゲイで独身だと世間体が良くないと気にし、笑子の両親は、医者から結婚でもすれば情緒もお落ち着くはずという助言を鵜呑みにし結婚させたがりました。
無事夫婦になった二人の様子を、両家の両親はちょくちょく様子を見に訪ねて来ます。
その度に睦月と笑子は現実と向き合わなければならず、惨憺たる気持ちになりました。
ある日、突発的に睦月の病院へ遊びに行った笑子は、睦月の同僚で友人の柿井と遭遇。
後日新居に招くことになります。
柿井は睦月と同様にゲイで、樫部という医者と交際しています。
柿井と樫部、紺を招待し、夕食を囲みます。
睦月の心配をよそに楽しい時間を過ごした五人。
笑子と紺は馬が合い、それからちょくちょく遊びに来るようになります。
紺はきまって睦月が留守の時にふらっと遊びに来るので、笑子は紺と時間を過ごすことに慣れていきました。
【転】きらきらひかる のあらすじ③
結婚したら治まると言われた笑子の情緒不安定は、次第に悪くなっていきました。
周囲から子供を産むことを望まれ、反発する笑子。
取り乱したり、睦月に八つ当たりすることが増えていきます。
手の付けられない笑子に睦月も疲弊していき、二人の夫婦関係は行き詰まり状態に。
鬱状態の笑子に何かできることがないかと考えた睦月は、遊園地に誘います。
笑子の連れ出しに成功した睦月は、病院から呼び出されたと抜けてしまいます。
そこに現れたのは、かつての笑子の恋人・羽根木でした。
腑に落ちないながらもその場を楽しむことにした笑子でしたが、羽根木が口を滑らせ、睦月がこの場をセッティングしたことを笑子に言ってしまいます。
それを知り笑子は大激怒。
興奮してその場で泣きじゃくるうちに倒れ、遊園地の医務室まで運ばれます。
慌てて駆け付けた睦月を笑子は寝たふりをして迎えます。
自分はゲイで、笑子を抱くことはできず、寂しさばかり募らせてしまうことに心を痛めている睦月は、笑子にも恋人を持つように仕向けたのですが失敗に終わります。
【結】きらきらひかる のあらすじ④
笑子は睦月との生活を守ろうとしていました。
子供を持つことを熱心にすすめてくる両親や友人を遠ざけ、殻に閉じこもる笑子の様子を、睦月は痛々しく見守っていました。
そして睦月は、自分がゲイであること、ゆえに子供を持つことはできないことを笑子の両親に打ち明けます。
両家を交えた家族会議が開かれ、秘密にしていた睦月のゲイ、笑子のアルコール中毒に情緒不安定の事実を公表した二人。
睦月と笑子よりも、両家の両親の方が取り乱し収拾がつかないほどです。
その場はなんとか事情だけ説明し帰ってもらいましたが、これで終わりとはなりません。
婚姻関係という現実が睦月と笑子を蝕んでいきます。
そしてついに、笑子はある意思を持って、婦人科の柿井のもとへ足を運びます。
それは突拍子もない考えでした。
自分と睦月と紺の遺伝子を人工授精できないかと相談したのです。
笑子の話を柿井から知らされた睦月は唖然とし声も出せないほどでした。
そして次の瞬間、紺のこぶしが睦月に飛んできます。
『そんな風に相手を追いつめるんなら、睦月は笑子ちゃんと結婚なんかするべきじゃなかったんだよ』と強い口調で睦月を糾弾し、翌日姿をくらましてしまいます。
紺がいなくなってショックを受けたのは睦月よりも笑子でした。
泣きわめき、恋人の睦月よりも悲しむ笑子。
笑子にとっても紺は大切な存在になっていたのです。
紺不在のまま日は経ち、九月三十日、睦月と笑子のお見合い記念日がやってきました。
朝目を覚ました睦月に笑子は、下のマンション部屋まで来るように言います。
指定された部屋まで行くと、そこには紺の姿が。
睦月には内緒で笑子と紺は連絡を取り合い、今日のために準備していたらしいのです。
再出発という名目でパーティーが始まります。
きらきらひかる を読んだ読書感想
アル中で情緒不安定な妻・笑子とゲイで潔癖症の夫・睦月の奇妙な夫婦生活を描いた本作。
初めて読んだのは高校生の時だったので、睦月みたいな穏やかで綺麗好きで医者の旦那さんが欲しいな、と睦月の「記号」部分しか読み取らず、単純に羨ましく思っていました。
いざ結婚してみて、自分が妻という立場になってみて、笑子の虚しさが理解できるようになりました。
パートナーは申し分ないくらい非の打ち所がないけれど、絶対自分は抱いてくれない絶望感。
女としてこれほど悲しいことはないです。
それにしても、睦月が笑子に贈った数々のプレゼントがどれも最高です。
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