「スイートリトルライズ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|江國香織

「スイートリトルライズ」

著者:江國香織 2004年3月に幻冬舎から出版

スイートリトルライズの主要登場人物

瑠璃子(るりこ)
瑠璃子は結婚して3年が経過した作家。表面的には幸せな結婚生活を送っているように見えます。しかし内心では孤独感を抱えていて、自分の心の中で何か足りないと感じています。

聡(さとし)
聡は瑠璃子の夫で、IT企業に勤務している忙しい男性。結婚生活が安定しているものの、彼自身も仕事に追われる中で、感情の面では満たされていないと感じています。

春夫(はるお)
春夫は瑠璃子が個展で出会った青年で、瑠璃子に強く惹かれます。彼は瑠璃子に対して無邪気な好意を示し、彼女もまた彼の純粋な魅力に心を動かされます。

しほ(しほ)
しほは聡の大学時代の後輩で、再会後に聡に好意を抱かれるようになります。しほは、聡が自身の感情に向き合うきっかけとなる人物です。

スイートリトルライズ の簡単なあらすじ

「スイートリトルライズ」は、表面的には順調な結婚生活を送る瑠璃子と聡の2人の夫婦が、それぞれ別の恋愛に身を投じながらも心の中で孤独を感じ、互いの心の距離を埋められない様子を描いた物語です。

瑠璃子は春夫との関係を通じて自分が本当に求める愛を再確認し、聡はしほとの再会をきっかけに自分の感情に向き合います。

それぞれが抱える心の葛藤と成長が繊細に描かれ、最終的には2人が新たな絆を見つける過程が描かれます。

スイートリトルライズ の起承転結

【起】スイートリトルライズ のあらすじ①

二人だけど二人じゃない孤独

瑠璃子と聡は結婚して3年が経ち、周囲からは順調で幸せいっぱいの夫婦生活を送っているように見えます。

外から見れば完璧で幸せそうに見える二人ですが、瑠璃子は日々心に空虚感を抱え始めます。

結婚当初は情熱的で二人で未来を夢見ていたものの、最近ではその感情が薄れて日常に追われるようになっていました。

瑠璃子は心の中で「この家には恋が足りない」と感じ、孤独感を募らせます。

聡もまた、仕事に忙殺される日々の中で瑠璃子との距離が広がっていることに気づきつつも、その感情をどう伝えるべきか分からずにいます。

二人の間に言葉のキャッチボールが少なくなり、心の隙間は広がるばかり。

お互いの不満や孤独感が積もり、言い表すことなく過ぎていく日々が続きます。

二人だけれど二人ではない、孤独を抱える夫婦の様子が垣間見えるのです。

外から見ると順調な夫婦に見えるものの、実際には微妙にすれ違いが生じているという夫婦の心情が静かに描かれています。

【承】スイートリトルライズ のあらすじ②

それぞれに訪れる転機

瑠璃子はある日、テディベアの個展で春夫という青年と出会います。

春夫は無邪気で純粋な魅力を持ち、その存在は瑠璃子にとって新たな刺激となります。

春夫と共に過ごす時間が次第に心地よくなり、彼との関わりが進む中で、瑠璃子は自分が結婚生活の中で何を求めていたのかを再認識します。

彼女は春夫との関係を通じて、情熱を取り戻し、聡との結婚生活に対する疑問が強まります。

日々の生活に埋もれていた自分の感情を掘り起こし、瑠璃子は「本当に自分が求めているものは何か?」という問いを突きつけられます。

一方、聡もまた、大学時代の後輩であるしほと再会します。

しほとの再会を通じて、聡も自分の心の中にある隙間に気づきます。

しほは聡にとって癒しとなり、彼もまた、しほと共に過ごす時間を通じて自分が感じていた結婚生活の違和感に気づき始めます。

二人とも、それぞれ異なる形で新しい感情に触れ、秘密の恋が始まります。

秘密の恋愛が進むことで、聡と瑠璃子の心の距離はますます広がり、お互いにそれを感じつつも、認めることができずに日々が過ぎていきます。

【転】スイートリトルライズ のあらすじ③

自分たちの心と向き合う

春夫との関係を通じて、瑠璃子は聡との愛情を再確認します。

春夫に惹かれながらも、彼女は聡との絆を完全に失っていないことに気づきます。

春夫との関係が進展することで、瑠璃子は複雑な感情に引き裂かれます。

彼女は聡との関係に対する期待や未練を抱きつつも、新たに芽生えた春夫への思いに戸惑います。

瑠璃子は心の中で葛藤し、聡との結婚生活をどうすべきかを悩むことになります。

彼女は春夫と聡の間で揺れ動き、最終的には聡に対する本当の気持ちを見つめ直すことになります。

一方、聡もまた、しほとの関係を通じて自分の中に眠っていた瑠璃子への思いを再認識します。

しほとの交流が深まる中で、聡は自分が本当に求めていたのは瑠璃子の存在であることに気づきます。

彼はしほとの関係に浸りながらも、心の中で瑠璃子を忘れることができず、次第に彼女への思いを再燃させていきます。

二人はそれぞれ新しい恋愛にのめり込みながら、自分が本当に求めている愛を見つめ直し、次第にその気持ちに気づいていきます。

お互いが心の中で求めていたものを再確認し、少しずつ心の距離が縮まっていきます。

【結】スイートリトルライズ のあらすじ④

再びよみがえる夫婦の心

物語の終盤、瑠璃子と聡はそれぞれの恋愛を通じて大きな心の変化を遂げます。

瑠璃子は春夫との関係を通じて、聡に対する深い愛情を再確認します。

彼女は、聡との結婚生活における不満やすれ違いを乗り越え、再び彼との絆を大切にしたいと強く思うようになります。

同時に、聡もまた、しほとの関係を通じて瑠璃子への愛情が消えていないことを痛感します。

彼はしほとの時間が、瑠璃子を忘れるためではなく、逆に瑠璃子を再び愛する理由を見つけるきっかけであったことに気づきます。

二人はそれぞれ、心の中で自分の気持ちを整理し、再びお互いに対する愛と信頼を取り戻す決意を固めます。

過去に抱えていた「小さな嘘」やすれ違いを乗り越え、二人は新たなスタートを切る準備が整いました。

物語の最後では、瑠璃子と聡が再び向き合い、過去を乗り越えて愛を再生させる場面が描かれ、二人は未来に向けて新たな一歩を踏み出します。

読者に対して温かな希望を与える結末が描かれ、物語は心温まる形で締めくくられます。

スイートリトルライズ を読んだ読書感想

「スイートリトルライズ」は現代ならではの恋愛や結婚生活に潜む複雑な感情や、愛と孤独が交錯する様子を深く掘り下げた作品です。

登場人物たちの心情が静かに、とても繊細に繊細に描かれていて彼らの葛藤に共感し、引き込まれました。

作品に出てくる「人は守りたいものに嘘をつく」というセリフが特に心に響きます。

大切なものだからこそ壊してしまう、人間の儚い心情が忘れられません。

物語が進むにつれて瑠璃子と聡の関係は試練を乗り越えていき、最終的には愛の再生が描かれます。

彼らの成長とともに、わたしたちもまた自分自身の人間関係に思いを馳せることができる深い余韻を残す作品です。

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