【ネタバレ有り】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:太田紫織 2013年9月に角川書店から出版
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘の主要登場人物
館脇正太郎(たてわきしょうたろう)
物語の語り手。旭川市内の明聖高校に通う。
九条櫻子(くじょうさくらこ)
標本士。永山のお屋敷でばあやと2人暮らし。
磯崎(いそざき)
正太郎の担任の先生。担当科目は生物。
佐々木敦郎(ささきあつろう)
明聖高校の元生物教師。故人。
春間小雪(はるまさゆき)
佐々木の姉。現在は近文の老人ホームに入所。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘 の簡単なあらすじ
館脇正太郎が通っている北海道旭川市の明聖高校では、9月になると「明聖祭」と呼ばれる一般公開の文化祭が開催されます。標本士・九条櫻子のお目当ては、文化祭の出し物ではなく理科室に保管されている膨大な量の骨格標本です。正太郎の担任・磯崎を交えて3人で資料の整理をしていると、中からは人間の骨が発見され大騒ぎになるでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘 の起承転結
【起】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘 のあらすじ①
明聖高校の文化祭「明聖祭」では2日目が一般公開となるために、館脇正太郎は九条櫻子を招待しました。
ふたりが一緒にいると何かと目立ち、勤続20年になる校務員の堀も驚いています。
正太郎のクラスの出し物はメイドカフェでしたが、窓辺の席でパンケーキとオレンジジュースを食べているはずの櫻子がいつの間にか居ません。
気が付くと彼女は、理科室に展示されて動物の標本に夢中です。
この場所を管理しているのは正太郎の担任でもあり生物教師でもある磯崎でしたが、整理整頓が苦手でした。
櫻子が標本士だと聞いた途端に、旭川市でも有名なカボチャのモンブランを奢るという約束で標本の整理をお願いしてきます。
3人が再びここに集合したのは、明聖祭が終わった次の週の土曜日です。
動物の骨を運び出してリストを作っていた正太郎は、箱の中に収められている火葬された女性の遺骨を発見しました。
警察に通報した櫻子たちが骨の主について知ったのは、それから2週間後のことです。
【承】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘 のあらすじ②
明聖高校には資料室にこもって骨格標本ばかり作っていた、佐々木敦郎という変わり者の先生がいました。
在学中に急死した佐々木には体の不自由な春間小雪という姉がいて、今回発見された骨は彼女の身の回りの世話をしていた曽根夏子というお手伝いさんのものだと判明します。
夏子の骨と一緒に段ボール箱の中に入っていた徳富蘆花の小説「寄生木」を返しに行くために櫻子と正太郎が向かったのは、春間が入居している旭川中心部の近文にある有料老人ホームです。
春間と夏子は単なる雇い主と使用人の関係ではなく、ふたりだけの秘密を守り抜くと誓い合った親友でした。
夏子が未婚のまま妊娠して、春間の部屋で出産をしたのは17歳前後の頃です。
生まれてきた赤ちゃんは死産となり、夏子は亡骸を何処かへ捨てに行きます。
春間は明聖高校に赤ちゃんの骨があると考えているようでしたが、櫻子たちが先日理科室を整理した時には見つかっていません。
櫻子は「寄生木」の中にも登場する、旭川市春光台まで車を走らせます。
【転】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘 のあらすじ③
「蘆花寄生木の礎」と刻まれた石碑は、旭川の街並みを見下ろす公園の休憩所に建てられていました。
用意しておいた折りたたみのショベルで石碑の根本を掘り進めていくと、20センチ四方の壊れたオルゴールが出てきます。
中に収められていたのは、赤ちゃんのつま先の骨です。
櫻子さんの話によると「ケルト型」と呼ばれる人差し指を除いた4本の指が同じ長さの珍しい指の形で、日本人では余り見かけません。
先ほど春間と会った時に彼女もケルト型の指をしていることを思い出し、老人ホームへ引き返しました。
未婚で出産したのは春間で、相手は父親の知り合いでもあり妻子ある男性でもあります。
結ばれることは許されないと知りながらも、春間は彼との逢瀬を止めることができません。
ついには身籠ってしまった春間は、恋の手引きをしてくれていた夏子に頼んで遺体の始末をしてもらった次第です。
「寄生木」の文庫本の中には若き日の春間と夏子が写った写真が挟まっていて、裏には「寄生木のようにままならない人生でしたが、その悲しみの上にも花が咲いています」という夏子からのメッセージが残されていました。
【結】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘 のあらすじ④
週明けの月曜日に学校の授業が終わった正太郎は、旭川の永山地域にある九条邸に急ぎました。
事件は解決しましたが、気掛かりなことが残っています。
文化祭の日に勤続20年の校務員が櫻子の顔を見て驚いていたこと、初めて来たはずの櫻子が勝手知ったる様子で校内を歩いて理科室まで辿り着いたこと、初対面の人を呼び捨てにする櫻子が「佐々木先生」と敬意を払っていたこと。
これらの手掛かりから正太郎が導き出したのは、櫻子が明聖高校の卒業生であり正太郎の先輩であるということです。
森で動物の亡骸を探す方法、余分な組織を取り除いて解剖する方法、骨を取り出して組み立てる方法。
これらの技術や知識の全てを、櫻子は10年前に佐々木から教わっています。
佐々木からもらった「たった一人のまな弟子」という言葉は、今でも櫻子にとっては大切な宝物です。
いつものようにテーブルの上に置かれた骨格標本の解説を始める櫻子を見て、正太郎はいつか自分が標本士になり佐々木の孫弟子になっていくような予感を覚えるのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 雨と九月と君の嘘 を読んだ読書感想
オープニングの文化祭での和やかな雰囲気が、理科室で人骨が発見されることによって一転していき引き込まれます。
「彼女には、いつだって死体が待っているのだから。」
という正太郎のセリフ通りに、思わぬ事件へと巻き込まれていく展開がスリリングな味わいでした。
徳富蘆花の「寄生木」に込めたメッセージと、許されざる関係を貫いた男女の行く末が痛切です。
時折旭川市内の観光スポットが映し出されたり、グルメ情報や人気のスイーツが登場するために程よいバランスが取れています。
ヒロインの櫻子さんと正太郎の予想外の繋がりに、両者の間に芽生えていく師弟のような絆も微笑ましかったです。
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