【ネタバレ有り】ラビット病 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:山田詠美 1991年12月に新潮社から出版
ラビット病の主要登場人物
ゆり(ゆり)
ヒロイン。 無職。
ロバート(ろばーと)
ゆりの恋人。 アメリカ軍基地で働く軍人。
アレックス(あれっくす)
ロバートの同僚。
アマノ(あまの)
ゆりの顧問税理士。
石原(いしはら)
ゆりの後輩。
ラビット病 の簡単なあらすじ
幼い頃に両親と死別して身内も居ないゆりでしたが、 巨額の遺産を相続したためにお金に困ることはありません。仕事をすることもなく怠惰な日々を過ごしていた彼女は、ひとりの生真面目なアメリカ軍兵士・ロバートと出会います。ふたりで真っ当な暮らしを送るつもりのロバートでしたが、相も変わらぬゆりに翻弄されていくのでした。
ラビット病 の起承転結
【起】ラビット病 のあらすじ①
ゆりとロバートがお付き合いを始めたのは、1ヶ月ほど前のことでした。
周囲からは交際を反対されながらも、ふたりはあっという間に同棲生活へと突入します。
幼い頃に両親が亡くなって兄妹もいないゆりには莫大な遺産が転がり込んでいたために、彼女は自分の力で1円も稼いだことがありません。
好きな洋服を買ったり取り巻きたちとパーティーを開いたりと、親から受け継いだ財産を食い潰しているだけの毎日です。
ガス料金の未納で集金人がやって来たり水道局から給水停止勧告が郵送されてきた時に、尻拭いをさせられるのがロバートでした。
ゆりの財産管理を引き受けている税理士のアマノから、 ロバートはしばしば呼び出されます。
電気であろうと水道であろうと1度止めて、 その有り難みを身を以て解らせた方が良いというのがアマノの考え方です。
ゆりは放って置くと何日間もシャワーを浴びなくなるために、結局ロバートが口座を開いて公共料金を支払うことになりました。
【承】ラビット病 のあらすじ②
いつものようにロバートの出勤を見送った後にゆりが家に独りでいると、見知らぬ女性が訪ねてきました。
ミミコと名乗ったその女性は、横田基地界隈の派手な商売女とは明らかに違う地味で上品な出で立ちです。
以前にロバートと付き合っていたというミミコの目的は縒りを戻すことでしたが、ゆりの気迫に驚いてその場を立ち去ります。
ミミコを撃退したゆりでしたが、彼女が掃除洗濯から料理までロバートの身の回りの世話をこなしていたという話が面白くありません。
夕方になって帰宅したロバートに八つ当たりした挙げ句に、家出を敢行してしました。
元々ふたりが住んでいるアパートはゆりの名義になっているために、部屋に残されたロバートは困惑してしまいます。
都内の高級ホテルでルームサービスやシャンパンを注文したゆりも、いまいち美味しく感じません。
ゆりはタクシーでロバートの待つ自宅へと帰って、彼が買ってきた安いシューマイをふたりで食べることにしました。
【転】ラビット病 のあらすじ③
ロバートの仕事仲間・アレックスが腫れた額を押さえ基地内のバーに駆け込んできたのは、勤務終わりの夕方のことでした。
牛浜駅の前を歩いていたアレックスが、高校生らしき日本人の一団からロバートと間違われて暴行を受けます。
彼らは以前からゆりと仲が良かったようで、突如として彼女の恋人の座に収まったアフリカが許せません。
すぐさま帰宅してゆりに事情を聞いてみると、ロバートと暮らし始める前に少年グループを引き連れて豪遊してたとのことです。
それから数日間は基地では牛浜事件として持ち切りになり、ロバートは報復を言い出す兵士を何とか諫めていました。
少年たちとロバートが鉢合わせをした場所はアレックスの部屋で、みんなで一緒にフットボールの試合中継を見ていた時です。
リーダー格の少年は姉御肌のゆりに憧れていることを、涙ながらに告白します。
「ゆりのところに来るなら、堂々と遊びに来ればいい」というロバートの言葉によって、少年たちと和解することができました。
【結】ラビット病 のあらすじ④
ふたりが国際結婚をするための書類一式をかき集めてきたロバートでしたが、ゆりはいつまで経っても必要事項を書き込もうとしません。
まるで小学校の先生が児童に読み書きを教えるかのように、ロバートは辛抱強く彼女の側に寄り添って書類を完成させました。
移り気なゆりが心変わりをしないうちに届けを出して、めでたく受理されます。
後はふたりで大使館に行き、立ち会い人が見守る中でサインをするだけです。
当日はお天気にも恵まれて、待ち合わせ場所となるホテルオークラのロビーには双方の立ち会い人が緊張した面持ちで正装していました。
ロバート側からは牛浜事件から立ち直ったアレックス、ゆりの側からは彼女を姉のように慕う石原という青年。
格好つけるのが嫌いなゆりはスパッツ姿で、ロバートはナイキのスニーカーを履いています。
4人はそれぞれの思いを胸に秘めて大使館の門をくぐっていき、手続きを終えた3時間後には晴れ晴れとした表情を浮かべて出てくるのでした。
ラビット病 を読んだ読書感想
1日中ベッドに横になって好きな本を読み耽ったり、朝風呂に浸かった後でワインを飲んで二度寝してしまうヒロイン・ゆりの奔放さがユーモアたっぷりです。
自由気ままな彼女に振り回されながらも、 一途な愛を貫くロバートには心温まるものがありました。
人種や国境の違いを受け入れてお互いを理解し合うふたりに、時折浴びせられる誹謗中傷や差別的な言葉が痛切です。
今の時代に異質な存在をあっさりと排除してしまう、寛容性の無さについても考えさせられます。
幾多の困難を乗り越えて共に歩んでいく、ゆりとロバートを応援したくなるはずです。
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