三四郎(夏目漱石)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

三四郎(夏目漱石)

【ネタバレ有り】三四郎 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:夏目漱石 1909年5月に集英社から出版

三四郎の主要登場人物

小川三四郎(おがわ さんしろう)
主人公、九州出身の純朴な青年、東京帝国大学入学のため東京へ。

広田 萇(ひろた ちょう)
第一高等学校の教師。生徒たちからは教師としての力は確かだと評価されているが、世俗に疎く出世からは無縁。三四郎や与次郎から「先生」と呼ばれる。

佐々木 与次郎(ささき よじろう)
三四郎の帝大の同級生で口八丁手八丁の性格。広田を尊敬している。

野々宮 宗八(ののみや そうはち)
帝国大学理科大で光線の研究をする。三四郎とは同郷で7歳年上。海外にも名の知れた研究者。

里見 美禰子(さとみ みねこ)
三四郎の憧れのヒロイン、美人かつ聡明な女性で三四郎の心を悩ませる。

三四郎 の簡単なあらすじ

日本文学界の巨星・夏目漱石による青春小説。田舎から帝国大学に進学してきた三四郎の視点から、当時の知識人たちの交流や学生の生活ぶりを鮮やかに描き出します。三四郎たちの青春ならではの輝きと懊悩は、100年以上の時を越えてもなお色あせていないことに驚かされます。もちろん、青春には絶対に欠かせない恋愛もこの小説の見どころの一つ。三四郎達と一緒に、100年前のキャンパスライフを堪能してみてください。

三四郎 の起承転結

【起】三四郎 のあらすじ①

上京

九州から東京帝国大学入学のために汽車に乗り込んだ三四郎は、車内で夫が満州にいる夫人と知り合います。

ひょんなことから夫人と同じ宿の同じ部屋に泊まることになった三四郎ですが、女性経験はなく何もせずに夜を明かすことに。

夫人からは「貴方はよっぽど度胸のない方ですね」と言われてしまった三四郎。

彼は、生まれてこのかた九州の田舎の世界しか知らない純朴な青年だったのです。

大学の講義がスタートすると、目まぐるしく移り変わる東京に圧倒されつつも、三四郎は次第に学生生活に馴染んでいきます。

学業もそこそこに口八丁を利用して駆け回る与次郎と知り合い、光線の研究に一途に打ち込む野々宮に感心し、泰然とした姿勢と深い洞察力を持つ広田を「先生」と慕うようになります。

こうした個性豊かな面々と交誼を結んだ三四郎は、今まで暮らしてきた田舎から飛び出して広い世界に飛び出していくのでした。

そして、広田先生の引越しを手伝った際に、大学内で一度見て心に焼き付いていた美女と再会。

彼女の名が里見 美禰子だと知ります。

【承】三四郎 のあらすじ②

stray sheep[ストレイシープ]

大学生活にも慣れ、色々な人と交わるうちに三四郎は自分を取り巻く三つの世界に気づきます。

1つは、これまで生活してきた九州の国の保守的ながら懐かしい生活。

2つ目は、野々宮さんや広田先生が属する世俗から離れてアカデミズムを追求し続ける世界。

3つ目は、美禰子や野々宮の妹よし子らが属する華やかで煌びやかな女たちに代表される世界。

これからどういった道を歩むべきか、三四郎には青年期特有の悩みが訪れるのでした。

三四郎らは連れ立って菊人形小屋を見に行くと、気分の悪くなった美禰子は一人その場を離れようとします。

三四郎は美禰子を介抱し、残りのメンバーからはぐれてしまいます。

美禰子は三四郎に迷子の訳は「stray sheep」だと教えます。

転びかけた美禰子を支えようとした三四郎、偶然にも彼女を抱きかかえる形に。

三四郎の腕の中で、美禰子は「stray sheep」とつぶやくのでした。

美禰子に完全に心を奪われた三四郎、やがて授業にも身が入らなくるようになってしまいます。

【転】三四郎 のあらすじ③

偉大なる暗闇と20円の行方

美禰子が野々宮と良い仲なのではないかと感じた三四郎は、自分と野々宮を比べて劣等感にさいなまれます。

その頃、与次郎は尊敬する広田を帝国大学の教授に就任させようと奔走、三四郎も与次郎に協力するうちに騒動に巻き込まれていきます。

与次郎は広田を「偉大なる暗闇」と評しました。

広田の教授就任運動に打ち込む与次郎に対し、三四郎は母親からの仕送り20円を貸し付けます。

借金の返済を促された与次郎は、三四郎に返す分の20円を借りるために美禰子のもとへ。

しかし、美禰子は与次郎を信頼せず、お金は直接三四郎が取りに来るように命じます。

美禰子のもとに訪れた三四郎は好意を上手く表現することができません。

その後、美禰子からの誘いに乗り、知り合いの画家・原口の美術展を訪れた三四郎。

そこには野々宮の姿も。

美禰子は三四郎に耳打ちをするふりをして必要以上に親密な雰囲気を見せつけ、あからさまに朴念仁の野々宮を愚弄します。

美禰子と野々宮の駆け引きのために都合よくつかわれた三四郎は怒りと戸惑いを覚えます。

【結】三四郎 のあらすじ④

美禰子の結婚と「森の女」

与次郎から美禰子が結婚すると聞かされた三四郎。

その相手は、野々宮ではなく彼女の兄の古くからの知り合いでした。

その頃、与次郎が暗躍していた広田の教授就任のための数々の工作が露呈。

広田は帝大教授の座に就くことはできませんでした。

三四郎が広田のもとを訪ねると、そこには以前と変わらず超然とした態度の広田が。

出世欲や結婚願望を一切もたない広田の態度に触れ、三四郎はある種の感銘を覚えずにはいられませんでした。

三四郎は美禰子の下に向かい、彼女からもらっていたお金を返します。

様々な思いを振り切り、三四郎は美禰子に背を向けて去るのでした。

三四郎の帰省中、美禰子は結婚。

彼女をモデルにして原口が描いた作品は評判となり、美術展に出展され好評を博していました。

広田、野々宮、与次郎と展覧会を訪れた三四郎。

評判の絵には「森の女」という題名がつけられてしました。

三四郎は題名が悪いと言い、「迷羊(ストレイシープ)」と何度も口の中で呟くのでした。

三四郎 を読んだ読書感想

夏目漱石の作品群の中でも、比較的読みやすい部類に入ると思います。

主人公は小川三四郎という平凡な大学生(とはいっても帝国大学の超エリートですけど)なので、現代の青年たちと同じ悩みを抱えており感情移入しやすいです。

アイデンティティの確立に悩み、恋の駆け引きに翻弄される純朴な三四郎。

三四郎と同世代の人が読めば、自分たちと同じような悩みを抱えている三四郎に親しみを覚えることでしょう。

また、不器用だった自分自身の青春時代を思い起こし、グサッと心に刺さる大人も多いのではないでしょうか。

青年期特有のセンシティブな感情を上手くすくい上げる着眼点と描写力は流石の一言。

時代を超える名作だと感じました。

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