ハロー・ワールド(藤井太洋)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

Hello, World(藤井太洋)

【ネタバレ有り】ハロー・ワールドのあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:藤井太洋 2018年10月に講談社から出版

Hello, Worldの主要登場人物

文椎恭洋(ふづいやすひろ)
本作の主人公。ITベンチャーのエッジに勤務する「何でも屋」のエンジニア。

郭瀬敦(くるわせあつし)
グーグルに勤務する優秀なエンジニア。

汪静英(ワンジンイン)
ソフト製作会社で事務員として勤務する中国国籍の女性。

本田沙織(ほんださおり)
シンガポール在住の連続起業家の女性。

Hello, World の簡単なあらすじ

文椎と郭瀬、汪の3人でチーム開発したiPhone用広告ブロッカー“ブランケン”が突然インドネシア方面で爆発的に売れ出した。その理由は“ブランケン”だけが消せる広告が存在したからだ。大手の広告ブロッカーですら消すことのできない広告を求め、消せる理由を探り始める。

ハロー・ワールド の起承転結

【起】ハロー・ワールド のあらすじ①

上手くいきますように

ITベンチャー企業<エッジ>に勤める文椎恭洋は、何かの専門を持たない「何でも屋」のエンジニアだった。

セミナーで知り合った郭瀬と出向先の企業にいた汪静英とチームを組んで広告ブロッカーアプリを作った。

しかし1週間に十数本売ほどの売れ行きしかなかった。

ある日、文椎と郭瀬、汪の3人でチーム開発したiPhone用広告ブロッカー“ブランケン”がインドネシア方面で爆発的に売れ出した。

たった一週間で七百を上回るダウンロードが行われていた。

その理由は“ブランケン”だけが消せる広告が存在したからだ。

大手の広告ブロッカーですら消すことのできない広告を消すためだけに“ブランケン”はダウンロードされていた。

その広告とは、政府広報だった。

ダウンロードはインドネシア全土ではなく、パプアニューギニア島に周辺に集中していた。

“ブランケン”だけが消せる政府広報の広告とダウンロードが集中する地域の調査を始める。

しかし、謎を追ううちに彼らは政府広報に隠された真実にたどりつく。

【承】Hハロー・ワールド のあらすじ②

道を染める革命の色

空撮用ドローン《メガネウラ》の研修のために五日間のバンコク出張の最終日、文椎はホーンの音で予定よりも早く目を覚ました。

宿泊するホテルの窓から道を見下ろすと、赤い色に染まっていた。

腕にはめたApple Watchに《赤シャツの反政府組織、バンコクを再び封鎖!》と緊急速報が表示されている。

会社からはデモが落ち着くまでホテルに待機するようにと指示がでた。

チェックアウトの取り消しと延泊を伝えに一階へと下りフロントへと伝える。

ホテルのレストランで朝食の傍ら、保険会社に勤めるケン・マツシマから反政府組織によるデモの情報を教えてもらう。

二人が情報交換の取引を行っていたとき、自動小銃の持った赤シャツを着た男女がレストランに入って来た。

女性は文椎の《メガネウラ》の入ったケースを提げていた。

文椎の視線に気づいた男女は、文椎が座るテーブルへとまっすぐ向かってくる。

自分たちは学生民主戦線の主任書記だと名乗った。

「ドローンを譲ってください」バンダナで顔を隠した女性は文椎に要求する。

【転】ハロー・ワールド のあらすじ③

インターネットは自由でなければいけない

飼い猫の肌触りで目を覚ました文椎。

手繰り寄せたiPhoneの時刻はまだ午前四時半だった。

文椎が起床したと勘違いしたiPhoneが、今日の予定といくつかのニュースをタスクバーに表示する。

スクロールさせながらそれらを眺めていると、気になる英文のニュースが目に留まった。

《緊急速報!中国がTwitterに門戸を開いた!》文椎はそのニュースに思わず声が漏れた。

匿名性の高かったTwitterが中国に屈したということはすぐに理解できた。

中国政府が運用するファイアウォール・金盾のせいで、中国ではTwitterもGoogleも使用できないはずだった。

金盾は中国全土のインターネットを政府によって検閲する。

それをTwitterやGoogleなどは受け入れるはずもなく使えなくなっていた。

中国政府による検閲でTwitterに愛想をつかした文椎は、Twitterのクローンである<マストドン>を使って匿名でメッセージを投稿できる《オクスペッカー》を作る。

郭瀬の協力で、《オクスペッカー》は秘匿化通信が可能となった。

そんなある日、急激に増え始めた<オクスペッカー>の利用者数の対応に追われていた文椎のもとに堅苦しいスーツに身を包んだ二人組の男性が訪れる。

【結】ハロー・ワールド のあらすじ④

いずれ通貨は形を変える

マレーシア財務省主催の仮想通過セミナー《コインソーシアム》に国外ゲストとして招聘された文椎恭洋はマレーシアへ来ていた。

三日間のセミナーを終えて空港に向かうためのタクシーを待っていたとき、1人の男性に声を掛けられる。

差し出された名刺には中国語で“律鎖”と社名が書かれていた。

セミナーのスポンサー企業の重役だった。

タクシーを待つ間にお話しでもどうかと誘いを受けて、ホテルに併設されたフードコートへと足を運んだ。

“律鎖”の呉は文椎にビットコインに代わる全く新しい仮想通過を作り出すことに協力する様にお願いをする。

政府に干渉されない《オクスペッカー》を運用する文椎に近づくことが最初から目的だった。

文椎は誘いを断わり立ち去ろうとしたとき、iPhoneが電波を受信していないことに気付く。

電波妨害を受けていることに気がつき行動を起こそうするが、女性が行く手を阻みテーブルへと戻される。

「これから中国に向かってください」呉は文椎の事情など訊くこともなく、要求する。

ハロー・ワールド を読んだ読書感想

プログラムの事は正直あまり分からない。

けれど、簡潔に説明されているから、知識がなくても物語を読み進めることができる。

五編構成の連作短編は、それぞれのテーマが異なっていて面白かった。

何かの専門ではない「何でも屋」の文椎だからこそ、さまざまなアイデアが浮かんだのだろう。

固定観念にとらわれない文椎のアイデアを、形にする郭瀬。

良いチームワークだと思う。

脅されながら、それでも誰もが納得するような仕組みを組み込む。

この物語を通じて少しだけプログラミングや仮想通貨に興味を持った。

これは、いつか訪れるかもしれない物語だ。

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