著者:太田紫織 2018年9月にKADOKAWAから出版
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 14 キムンカムイの花嫁の主要登場人物
九条櫻子(くじょうさくらこ)
ヒロイン。骨を愛でるお嬢様。誰にも侵されない世界で生きている。
館脇正太郎(たてわきしょうたろう)
櫻子とは家族ぐるみの仲。高校卒業後は旭川に残るか道外に行くか未定。
沢梅(さわうめ)
幼い頃から櫻子の面倒を見てきた。「ばあや」の愛称で親しまれる。
姉歯あす香(あねはあすか)
自殺願望のある20代。旅行が好きで承認欲求もつよい。
星頼子(ほしよりこ)
あす香の中学時代の親友。学校の成績は良かったが周囲に馴染めなかった。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 14 キムンカムイの花嫁 の簡単なあらすじ
九条櫻子たちと因縁あさからぬシリアルキラーの花房、今まで守ってきたパターンを破ってまで急接近を試みてきます。
意に介さぬ櫻子はこれまで通りの生活を続けると豪語しますが、館脇正太郎の説得もあってぬかびらの温泉地へ一時的な避難を。
この地でも死体に鉢合わせすることになったふたりは力をあわせて、不審死事件の解決にひと役買うのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 14 キムンカムイの花嫁 の起承転結
【起】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 14 キムンカムイの花嫁 のあらすじ①
九条邸に盗聴器が仕掛けられていることが分かりましたが、櫻子に言わせると今さら私生活を知られても恥じることはありません。
入院していた沢梅(シリーズ11弾「蝶の足跡」参照)の具合もすっかり良くなって、誕生日も11月最初の土曜日ともうすぐ。
彼女の故郷でもある上士幌町糠平で退院祝いをやらないかと館脇正太郎は提案、櫻子もようやく重い腰をあげてくれました。
梅は温泉にのんびり浸かってもらうためにひと足先に宿へ、櫻子と正太郎は歴史的な建造物として名高いタウシュベツ川橋梁へ。
正太郎としては名物の鹿丼やジンギスカンでランチにしたかったのですが、櫻子はヒグマの骨を拾って標本にしたいとのこと。
フィールドワークに出掛けることになり、この辺りに古くから伝わるキンカムイ伝説について聞かされます。
「キンカムイ」とは山の神、アイヌ神話でいうところのヒグマ神、はるか昔に人食い熊に襲われた女性がいてキンカムイの花嫁… 林道につながった湖のほとりを歩いていたふたりの前に現れたのは、動物に食い散らかされた遺体です。
【承】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 14 キムンカムイの花嫁 のあらすじ②
所持品などから亡くなったのは帯広在住の22歳で姉歯あす香、メールで遺書を送信していた警察は自殺と断定しました。
防寒準備がまったく整っていない薄着だったこと、市街地から1時間半弱のあの場所に運転免許を所持していない彼女がたどり着いたこと。
いくつかの気になる点があるという櫻子は独自に調査を開始、危なっかしくて見ていられない正太郎も付き合うしかありません。
母親や同せい相手には普段から「死にたい」とこぼしていたというあす香、その一方では「いいね!」をたくさん貰うために絶景スポットを回って写真を撮っていた一面も。
最近はもっぱらSNSに投稿していたという彼女のアカウントにアクセスしてみると、100件近くのコメントと10万件以上ものリツイートです。
いじめにあっていた中学生時代、たったひとりだけ手を差し伸べてくれたクラスメート、心配して転校を決めた両親。
転校先では幸せになれたというあす香の書き込みは、大切な友だちを置き去りにしてしまったことへの謝罪で締めくくられています。
【転】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 14 キムンカムイの花嫁 のあらすじ③
その友だちの名前は星頼子、美術で賞を取ったり哲学書を読んだりと博識だったそうですが彼女もまた犠牲者です。
ターゲットになったのはあす香が引っ越してから、いじめを見過ごせない正義感のある性格だったから。
自らの命を絶った思われるのが3〜4年ほど前、その場所こそがあす香が発見されたぬかびら。
頼子の父親がいま現在住んでいるのが東神楽町、いったんは正太郎の自宅がある旭川市へ引き返し隣町へ。
玄関先で門前払いを食らわせようとする父、11月の旭川は寒さが厳しいのに脂汗が止まりません。
櫻子に問い詰められると、たまたまインターネットであす香のブログを見たことを白状しました。
頼子を見捨てた人間がのうのうと生きていること、何万人もの共感を得て支持されているのが許せなかったこと。
あす香を呼び出してぬかびらまで連れていきアルコールを飲ませたことは認めましたが、殺意だけは否認しています。
通報をうけて駆け付けた警察に連行されましたが、直接手を下していないために「未必の故意」といった容疑になるでしょう。
【結】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 14 キムンカムイの花嫁 のあらすじ④
正太郎に日常が帰ってたのは、暦が12月に変わってそろそろ雪が積もるころ。
ぬかびらの1件に花房が関与していないことが決定的となりましたが、櫻子の家の中に何者かが入り込んでいる可能性は否定できません。
当面のあいだはふたりだけの合言葉を決めて、聞かれたくない話をする際には「犬の散歩に行こう」を合図に外に出るつもりです。
ひとつだけ言えるのは今までと明らかに違う動きをしていること、花房自身に心境の変化が生まれていること。
「変化」といえばこれまでは静かだった九条家、正太郎が出入りするようになって賑やかになり沢梅も元気に。
先日の三者面談ではいい加減に大学をしぼるようにと担任から言われてしまいましたが、いまだに進路を決めかねています。
受験勉強が本格的になればこれまでのように沢梅の手料理をごちそうになったり、櫻子とカフェでホットチョコレートを飲む機会も減ってしまうでしょう。
櫻子と自分とのあいだにある砂時計、その時の砂が落ちきるまで残りわずかであることを正太郎は噛みしめるのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 14 キムンカムイの花嫁 を読んだ読書感想
姿なき殺人鬼としてシリーズを通して不気味な影を落としている花房、いよいよリスクを犯してまで強硬手段に打ってでるのかと緊迫感が高まってきます。
たまには温泉旅行でもしてリフレッシュすればいいのにと思いきや、やっぱり死体を見つけてしまうんですね。
いつの時代にも根深い学校のいじめ問題を取り上げつつ、SNS時代の危険性も鋭くついていて考えさせられました。
相変わらず心配性な正太郎くん、何があろうともマイペースとルーチンを崩さない櫻子さん。
この巻から「最終章」と銘打っているだけに、ふたりの名コンビも見納めが近いのかと名残しくなりますよ。
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