【ネタバレ有り】ユートピア のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:湊かなえ 2015年11月に集英社から出版
ユートピアの主要登場人物
堂場菜々子(どうばななこ)
仏具店の嫁として嫁ぐ。夫の修一は食品加工会社の八海水産に勤めている。小学一年生の娘の久美香は幼稚園の時、交通事故に遭い、足を不自由にし車いすで生活をしている。
相場光稀(あいばみつき)
「プティ・アンジェラ」という雑貨屋を開き、ハンドメイド商品を売っている。夫の明夫が八海水産に勤めており、東京から転勤するのと同時に、社宅に娘の彩也子と3人で暮らしている。
星川すみれ(ほしかわすみれ)
陶芸家。祭りの主催者。鼻崎町の美しい景色が気に入り、そこに家を建てた健吾と共に引っ越してきた。
宮原健吾(みやはらけんご)
大学時代のすみれの元恋人であり、現在はパートナー。すみれの為に、鼻崎町に工房を建てた。
ユートピア の簡単なあらすじ
5年前、鼻崎町で資産家の老人が殺害されるという事件が起きた。その当時、現場からの目撃情報で芝田という男が指名手配された。その指名手配のポスターは「お前、芝田か!?」というキャッチフレーズで今も尚、町に貼られている。そして、現在、仏具店に嫁いだ菜々子は義父の介護が嫌になり出て行った義母の代わりに毎日せっせと働く。そんな菜々子の周りで事件が起こるのだ。
ユートピア の起承転結
【起】ユートピア のあらすじ①
鼻崎町で仏具店を営む菜々子は、この町出身で、一度は町を出るが夫の修一との結婚をきっかけで、再びこの町に戻った。
7歳の娘の久美香は幼稚園の時に事故で足が不自由になり今もなお車イスで生活していた。
そんな久美香と小学4年生である彩也子は仲良くなった。
そんな時、鼻崎町の美しい景色に魅せられて、この町に越してきた陶芸家のすみれは昔行われていた商店街のお祭りを復活させようと、1丁目から6丁目まで役員を選出し、「第1回花咲き祭りatユートピア商店街」を開催した。
若いからという理由で選ばれた菜々子は嫌々ながら参加するが、そこで、菜々子は彩也子の母親である光稀と出会う。
娘同士が親友ということもあり、菜々子と光稀も交流をもつことになった。
【承】ユートピア のあらすじ②
祭りが開催され、商店街にはいつも以上に大勢の人で賑わっていた。
一番の人気は地元の高校の家庭科部の生徒たちと協力して出店した、クリームコロッケとクラムチャウダーの無料配布であった。
そこに、行きたいという久美香は菜々子が店番で行けない代わりに、彩也子に車イスを押してもらい食べに行った。
そんな祭りの最中、クリームコロッケの配布場所でコロッケを上げていた油から火が上がり、大きな火災が発生してしまった。
中にいた大人や女子高生たちは外へと避難する。
運悪く、その場に居合わせた久美香と彩也子も避難しようと、彩也子は足が不自由な久美香をおぶって助けようとした。
その時、彩也子は転んで額に傷をつけてしまった。
その後、女子高生たちが2人を無事助け出してくれた。
その後、「友達を救ったご褒美」ということで、光稀は彩也子にすみれの工房で翼のストラップを2つ購入した。
もう1つは「大変な思いをした久美香ちゃんにも」ということだった。
光稀は怖い思いをした筈なのに、友達の心配をしてあげる彩也子のことを称賛した。
翌日、新聞に火災事故のことが小さく掲載されたが、賞賛されたのは久美香と彩也子を助け出してくれた女子高校生だけであった。
光稀は、彩也子が久美香をおぶって外に出ようとした上に額に傷までつくったのに、一目散にその場から避難した女子高校生たちを称賛したことを、あまりよく思わなかった。
【転】ユートピア のあらすじ③
彩也子は小学校の作文で、光稀に買って貰った翼のストラップを題材に「翼をください」というタイトルで詩を書いた。
その内容は、親友の久美香を思って書いた詩であった。
その詩が新聞に掲載されることになった。
その記事を見たすみれは、これは自分の作品の良い宣伝になると考え、自身のウェブサイトにも詩を載せたいと光稀に頼んだ。
そこで反響があり、すみれは翼をモチーフにした商品を売って、その利益を障碍者のために募金をする活動『クララの翼』を立ち上げた。
また、光稀に有名ファッション雑誌の関係者がいることを知ったすみれは『クララの翼』を記事にしてほしいと頼み、掲載された。
これをきっかけにローカルなテレビ局からも取材を受け、すみれは『クララの翼』に誇りをもち活動していた。
しかし、同じ芸術村のアーティストたちは、そんなすみれをよく思っていなかった。
さらに、一方であの火災現場にいた女子高校生たちの証言から、久美香は歩けるのではないかという噂がたちはじめていた。
その噂がきっかけで、「車イスの女の子」をシンボルに活動していた『クララの翼』 は騙して商品を売っているのではないかと言われ、詐欺罪に問われないかと心配する菜々子と光稀は『クララの翼』の活動をやめようと言う。
すみれは収益100万円が集まったところで募金をし活動をやめた。
【結】ユートピア のあらすじ④
5年前の事件は芝田ともう1人、すみれのパートナーである健吾も共犯であった。
当時、殺害後に芝田と口論になった健吾は芝田を殺害した。
そして、資産家から奪い取った金の延べ棒を持って逃走しようと目論むが、芝田の殺害現場を当時の芝田の不倫相手である菜々子の義母に目撃されるのであった。
義母は怖くなり金を3枚だけ家に置き、町を出た。
健吾は芝田の死体を、現在すみれの工房がある場所に埋め、それを監視しながら金の行方を追った。
そんな時、菜々子の趣味の編み物で、芝田の不倫相手が菜々子の義母たど気づき、娘の久美香とそこに居合わせた彩也子を誘拐した。
そこで、また火災が起きた。
菜々子と光稀はすぐに工房に駆けつけ、そこで目にしたのは自分の足で外に逃げてくる久美香の姿であった。
現場には健吾の姿はもうなかった。
この誘拐事件には裏があった。
久美香がもう既に歩けることを知っていた彩也子は、火事にビックリして歩けるようになったことにしようと健吾に話し、誘拐事件をでっち上げて貰ったのだ。
そして、健吾はその騒ぎに乗じて金を取り返そうとしていた。
しかし、金の在り処は分からず、火災現場から芝田の遺体が見つかる。
それがニュースで流れ、そのニュースを見た菜々子の義母は警察に1通の手紙を匿名で書いた。
5年前の事件の真相が綴られていたのだ。
そして、菜々子もまた1つ隠し事があった。
義母が事件当時、家に出る時に置いていった金は3枚あったが、1枚は自分の手元に置き、残りの2枚を夫の修一に見せた。
菜々子はその残りの1枚の金で鼻崎町を出たいと、ずっと思っていた。
なんなら、健吾が迎えに来てくれるのをまっているのであった。
ユートピア を読んだ読書感想
話は5年前の事件がきっかけで、現在の鼻崎町に住む住民たちを事件に巻き込みます。
話を読み進めていくうち、健吾が芝田なのかとしれないと思ったら、まさかの健吾は共犯者で芝田は既に死んでいました。
また、久美香と彩也子の企てた誘拐事件、菜々子の隠し持ってる金、この町には沢山の秘密が芝田の死体と共に埋まっているのだと思いました。
すみれは、菜々子が健吾の好きな好みだと勘付いていました。
また、菜々子は一見、はっきり意見が言えず、皆んなの顔色を伺っているように見えて、一番強かな女性でした。
夫・修一の不倫に気づき、義父の介護に解放された菜々子は今すぐにでも、この鼻崎町から出て行きたいのだろうと思いました。
物語は終わっているのに、健吾が菜々子を迎えに来て連れ去っていくという物語が続いているようでした。
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