著者:太田紫織 2015年9月にKADOKAWAから出版
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 8 はじまりの音の主要登場人物
九条櫻子(くじょうさくらこ)
ヒロイン。高校卒業後に骨格標本士になる。日常的に動物の遺体を扱っているために死に免疫がある。
館脇正太郎(たてわきしょうたろう)
高校2年生に無事に進級。犯罪者に何度も遭遇している。
阿世知蘭香(あぜちらんか)
正太郎のクラスに転校してきた。ゴシックロリータ調の制服で威圧する。
鴻上百合子(こうかみゆりこ)
正太郎のクラスメイト。料理が上手で家庭的。
今居(いまい)
正太郎の友人。普段は仏頂面のスポーツマン。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 8 はじまりの音 の簡単なあらすじ
高校2年生になった館脇正太郎のグループに、新しく加わったのはよその地区から編入してきた女子生徒・阿世知蘭香です。
彼女のひと目を引く奇抜なファッションや挑発的な言動も、すべては過去のいじめが原因であったことを九条櫻子は見抜きます。
うわべだけで付き合っていた正太郎も、心から阿世知のことを友だちとして向き合い始めるのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 8 はじまりの音 の起承転結
【起】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 8 はじまりの音 のあらすじ①
不安で迎えた4月のクラス分けの結果、館脇正太郎は前々から仲のよかった鴻上百合子や今居と一緒になりました。
お昼休みになると百合子が手作りしてくれたお弁当をみんなで囲んで、楽しい時間を過ごすことができます。
正太郎の脳裏に不安がよぎったのは、転校初日からクラスで孤立していた阿世知蘭香の存在です。
ブレザーの裾にはレースのリボン、まぶたの周りには黒いアイシャドウ、ブルーのリップクリームにニーハイソックス。
少し校則がルーズなこの学校でも明らかに異質なスタイルのために、彼女に声をかける女子も男子もいません。
たまたま前の席に座っていた百合子が「親友になってほしい」と話しかけられたのは、新学期が始まってから2週間ほどのある日のことでした。
翌日からふたりは連れ立って登校するようになり、カバンやアクセサリーもお揃いのものを身につけています。
すぐに当たり前としてクラスに受け入れられたのは、百合子というワンクッションがあったからでしょう。
【承】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 8 はじまりの音 のあらすじ②
女の子ふたりが「親友」である以上は、正太郎と今居も表面上は和やかなムードで付き合わなければなりません。
阿世知がネットで拾い集めた不幸なニュースをよくネタにしたり、人が亡くなった事件を面白いことのように言いふらすのも引っ掛かっていました。
いつもは4人で帰るところをひと足先に校門を出た正太郎は、旭川市永山の閑静な住宅街に住んでいる九条櫻子に相談しにいきます。
最近になって新しい友だちが増えたこと、やたらと死を話題にすること、これまでの心地よかった3人でのバランスが微妙に崩れていること。
そもそも人間関係を構築しようとはしない九条櫻子にはピンとこないようで、毎日のように標本を作ったり解剖をしたりしている点では阿世知よりも変わり者です。
正太郎が介入する問題ではなく、いざとなった時には百合子が阿世知を切り捨てるはずだとまったく心配していません。
なぜだか思春期の少女と月経の関わりについて講義を始めたために、正太郎は早々と退散します。
【転】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 8 はじまりの音 のあらすじ③
ゴールデンウィークが始まる数日前、正太郎はスーパーの駐車場で自転車に乗った阿世知と乗用車が接触する場面を目撃しました。
駆け寄って抱き上げると幸いにケガはないようですが、お世話になっているおばに迷惑をかけたくないと警察には通報しません。
「あずる」や「ぬっせーか」などという単語の端々から、阿世知が札幌地方の出身だと知ったのもこの時です。
引っ越し先のマンションまで送り届けますが部屋の中はまだ片付いていないようで、ダンボール箱の中から出てきたのは動物の骨らしきもの。
老衰で死んだ愛犬を標本にしたという阿世知の言葉に疑問を抱いた正太郎は、スマートフォンで写真を撮影して櫻子に送信しました。
高校のOGでもあり動物の骨を賛美するもの同士で意見を交換したいという、櫻子からの招待を阿世知は了解します。
老犬にしては歯がきれいで磨り減っていなかったこと、下顎の底が直接的だったこと。
インターネットの通販で購入したタヌキの頭蓋骨のようで、阿世知が自分で作った訳ではありません。
【結】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 8 はじまりの音 のあらすじ④
札幌市内の高校に通っていた頃に、裏アカウントを利用したアルバイトに関わったのがそもそもの始まりです。
グループのリーダーに逆らって個人的な写真をネット上に拡散されてから、阿世知は学校に通えなくなってしまいました。
見かねたおばが旭川市に誘ってくれたために、1からやり直すつもりでヘアースタイルから服装まですべてを変えます。
櫻子とは違って骨も死体も好きではないという阿世知ですが、かつての自分のように女友だちとうまくいっていない様子の百合子のことだけは放っておけません。
テニス部のエースでモテモテな今居と、殺人犯に刺されたという武勇伝を持つ正太郎(前巻「謡う指先」参照)。
ふたりの男子に囲まれて楽しそうにしている百合子は、いずれは女子から目を付けられるでしょう。
男2女1は危険だけれども、2対2ならきっとうまくいくことを正太郎たちは確信します。
タヌキの骨が櫻子の貴重なコレクションに加わった連休明け、ようやく正太郎に高校生活2年目のはじまりを告げる音が聞こえてくるのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 8 はじまりの音 を読んだ読書感想
主人公が歳を重ねていくのか、それともいつまでも変わらないのか。
シリーズものの場合はその二者択一が悩ましいところですが、この巻でひとつのターニングポイントを迎えるようです。
2年生になった正太郎の前に現れたのは何ともミステリアスな女の子・阿世知蘭香、その背後に悪意が潜んでいるのかと邪推してしまいました。
不特定多数の悪意が飛び交う学校裏サイトなど、今の時代を反映した社会問題もしっかりと取り上げられていて考えさせられます。
学園ドラマに徹しているために今回は出番なしかと思いきや、年齢不詳の櫻子さんの活躍もしっかりと用意されていますよ。
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