「猫の目犬の鼻」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|丹下健太

猫の目犬の鼻 丹下健太

著者:丹下健太 2014年3月に講談社から出版

猫の目犬の鼻の主要登場人物

根本心美(ねもとここみ)
ヒロイン。地方都市の出身で関西の大学を卒業後にUターン。二者択一を自分の意志で決められない。

小山一樹(おやまかずき)
心美にとっては初めの彼氏。スポーツマンだったがケガで挫折。

春子(はるこ)
心美の親友。誰とでも気さくに話し多くの情報を持っている。

矢下真由美(やしたまゆみ)
心美の行きつけのカフェでアルバイトをする。大人の雰囲気を漂わせる女子大生。

猫の目犬の鼻 の簡単なあらすじ

中学生の時に同じ学校に通う小山一樹から告白された根本心美でしたが、その返事を延々と先延ばしにしてしまいます。

結局のところはエンピツの転がる先に決めてもらい付き合うことにしますが、引っ越しをきっかけに疎遠になりふたりの関係は自然消滅です。

10年後に一樹との再会を果たした心美でしたが、またしてもその決断をエンピツにお任せするのでした。

猫の目犬の鼻 の起承転結

【起】猫の目犬の鼻 のあらすじ①

コロコロと転がる乙女心

根本心美が「猫目」と呼ばれるようになったのは、修学旅行の記念写真の中で両面がキラリと光っていたからです。

同じ委員会で活動していた小山一樹とはあいさつくらいはする仲でしたが、旅行から帰ってきた1学期の後半に交際を申し込まれました。

恋愛に関するルールがまったく分からない心美は、学校でもいちばんに仲がよく早熟グループに所属する春子に相談してみます。

「お友だちから始めましょう」が無難な答えだそうで、夏休みに入ると一緒に図書館で勉強をするようになりましたがハッキリと返事をしていません。

いよいよ2学期が始まる直前、心美は真っ白な紙に大きな円を描いて真ん中に縦線を引きます。

右の半円には「付き合う」、左半円には「付き合わない。」

円の中心に立てたエンピツが右に倒れたために、心美と一樹は正式なカップルになりました。

ファーストキスは数カ月後の冬休み最後の日の夕方、場所は家の近くの公園。

まさにその瞬間に心美が視界の片隅に捉えたのは、白と黒のぶち模様が入った1匹の猫です。

【承】猫の目犬の鼻 のあらすじ②

春の公園に取り残される

一樹の鼻が犬にそっくりなことに気がついたのは、お気に入りの喫茶店に立ち寄った時です。

心美が注文するのは砂糖とミルクをたっぷりと入れたカフェオレ、一樹はブラックコーヒー。

何となくお互いの距離を感じ始めていた時に、一樹の父親に転勤の話が舞い込んできました。

週末ごとのデートは月に1回の遠距離恋愛に、週に2回だった電話が1回に、電話のやり取りだったのがメールに… どちらからともなく連絡を取らなくなり、ハッキリと言葉にはしていませんが関係を続けることは不可能でしょう。

県内の高校に進学した心美でしたが、春を迎えて桜が満開になっても気持ちは一向に晴れません。

自然と足が向かう先は一樹と初めてキスを交わした公園で、例の喫茶店の店員が野良猫にエサをあげていました。

名前は矢下真由美、心美が通う高校の近所にある大学の3年生、すでに自宅で猫を飼っているために連れては帰れないこと。

特徴的なぶち模様からあの時の猫だとすぐに分かりましたが、すぐ側の草むらには産まれたばかりの2匹の子猫がうずくまっています。

たった1年のあいだで立派な母親になった猫に比べてみると、心美はいまだにコーヒーをブラックで飲めません。

【転】猫の目犬の鼻 のあらすじ③

変わりゆく街並みと受け継がれた小さな命

県外の大学に進学した心美には新しい彼氏ができましたが、お相手はバイト先のフリーターで4歳ほど年齢が離れています。

初体験を済ませた彼とも就職活動が忙しくなるにつれて話が合わなくなり、決定的だったのは心美が2社から採用通知を受け取った時です。

ひとつは関西に本社を置く大手企業、もうひとつは心美が生まれ育った町にある小さな会社。

相変わらずのその日暮らしの彼に相談してみても、「好きにしたらいい」という答えしか帰ってきません。

合鍵を玄関に投げ捨てた心美は彼のアパートを飛び出して、関西の企業に内定辞退を申し出ました。

久しぶりに地元に帰ってきた心美でしたが、思い出の喫茶店はラーメン屋に変わっていて矢下真由美の姿も見当たりません。

公園の向かいの駐車場でぶち猫を見つけましたが、模様は同じでも体がひと回りほど小さいためにあの猫の子どものうちの1匹でしょう。

動物病院で雌猫と診断されたために、「ぶー子」と名付けて実家の近くにある「ペット可」のワンルームマンションを借ります。

【結】猫の目犬の鼻 のあらすじ④

猫パンチが明るい未来を示す

都内の大学を卒業してインターネット関連の企業を目指している春子が、年末年始の休暇を利用して帰郷してきました。

SNSを通じて交友関係を広げている春子は、一樹が東京にいることを教えてくれます。

サイトにアクセスして友だちリクエストを申請すると、すぐに承認されて今度の同窓会に顔を出すそうです。

当日になって会場に現れた一樹は長く茶色かった髪の毛を短く黒色に染めていて、大好きだったサッカーも医者に止められたために続けていません。

親戚の事業を手伝っているという一樹から同せいを持ちかけられましたが、つい最近になって猫アレルギーを発症しためにぶー子は連れていけません。

いったん家に帰って用意したのは10年前と同じように丸い円を描いた紙、右半分は「猫」で左は「男」です。

エンピツが左に倒れそうになった瞬間にぶー子が前脚で弾き飛ばしたために、先端はしっかりと「猫」を指しています。

一樹の電話番号を押してお断りの返事を考えていた心美は、ようやく長い夏休みが終わったことを確信するのでした。

猫の目犬の鼻 を読んだ読書感想

迷ってばかりの優柔不断なヒロイン・根本心美が、ほろ苦い大人のコーヒーを飲めないのは猫舌だからなのでしょうか。

犬を思わせるような彼・小山一樹との、付かず離れずといった微妙な距離感も印象的です。

オープニングでこそ野暮ったい田舎の女子中学生といった心美も、進学・就職と着実にステップアップしていることが伝わってきます。

何ひとつ悩みを抱えているようには見えない野良猫の方が、妊娠・出産と人生の一大イベントを人間よりもハイペースでこなしているのも面白いですね。

最後まで「エンピツ占い」に頼ってしまう成長のなさには笑わされますが、女ひとりメス1匹の新居にお邪魔したくなりました。

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