著者:太田紫織 2014年11月にKADOKAWAから出版
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 6 白から始まる秘密の主要登場人物
九条櫻子(くじょうさくらこ)
ヒロイン。大学や動物園から頼まれた標本を作っている。家事ができず世の中の流行に疎い。
館脇正太郎(たてわきしょうたろう)
地元の中学から無難なランクの高校に進学。柔道を習っていて趣味はサックスを吹くこと。
谷内ハツ江(やちはつえ)
館脇家のご近所さん。正太郎を孫のようにかわいがる。
磯崎齋(いそざきいつき)
正太郎の担任。「要領よく、ほどほどに」がモットー。
花房(はなぶさ)
複数の殺人事件に関わっている。自分の手は汚さない。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 6 白から始まる秘密 の簡単なあらすじ
九条櫻子と音信不通になった館脇正太郎にとって、唯一の心の支えになっていたのはメル友「Phantom」です。
差出人が不明の1通の手紙をきっかけに久しぶりに再会を果たしたふたりは、罪を犯しながら逃亡を続けている花房と対決するために和解します。
ようやくPhantomの正体が花房だと気が付いた頃には、つながりが途絶えてしまうのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 6 白から始まる秘密 の起承転結
【起】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 6 白から始まる秘密 のあらすじ①
館脇正太郎が初めて九条櫻子と出会ったのは中学3年生の秋、旭川市永山町に住んでいる祖父の柔道教室で稽古を付けてもらった帰りのことです。
近所に住んでいる高齢の女性・谷内ハツ江が特養ホームを抜け出して行方不明になり、幼い頃に世話になった正太郎としても気が気ではありません。
永山神社の周辺を探し回っていたところ、ドラム缶で骨のようなものを煮つめている年上の女性を目撃しました。
彼女が谷内の遺体を始末していると勘違いした正太郎は警察に通報してしまいますが、動物の標本を作っていただけです。
櫻子の助けを借りて谷内を無事にホームに送り届けた後、永山神社から並木道を抜けた先にある九条邸に招待されます。
大きなお屋敷でばあやと暮らしている櫻子は正真正銘のお嬢様で、「正太郎」と名乗った途端に気に入られます。
それ以来なにか事件がある度にふたりで協力して解決してきましたが、函館近郊のじゅんさい沼で正太郎がケガをしてからは連絡を取っていません。
(前巻「冬の記憶と時の地図」参照)
【承】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 6 白から始まる秘密 のあらすじ②
次から次へと学校の友だちがお見舞いにきて、普段は面倒くさがりな担任の先生・磯崎齋も病室に顔を出してくれました。
過去に受け持ちの生徒が花房に操られて自殺に追い込まれたことがある磯崎としては、正太郎が安易に危険に近づくことに反対しています。
世間のルールに縛られないという点では、櫻子も花房も変わりはないそうです。
そんな正太郎が入院中にSNSを通じてメールアドレスを交換したのは「Phantom」ですが、ハンドルネームだけで年齢も性別も分かりません。
北海道に住んでいること、ものすごく博識であること、人体や犯罪だけでなく法医学にも詳しいこと。
櫻子がいない寂しさを埋め合わせるかのように、正太郎はPhantomとスマートフォンを通して心を通わせていきます。
「体を大切にしてほしい」というPhantomのメッセージの通りに安静にしていたため、1週間ほどで体力はもとに回復して傷跡も薄っすらとしか残りません。
退院した正太郎が高速バスに乗って向かった先は、櫻子の父の弟・設楽がいる札幌です。
【転】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 6 白から始まる秘密 のあらすじ③
設楽は体中の筋肉が萎縮して徐々に動かせなくなっていましたが、発話補助装置を使えば会話が可能です。
中学生の時に「正太郎」と自己紹介をした時の櫻子の驚きの表情、じゅんさい沼で意識が途切れる瞬間に聞いた「惣太郎。」
惣太郎が早くに亡くなった櫻子の弟だとはチラリと聞いていましたが、不慮の事故に巻き込まれていたとは知りませんでした。
名前だけでなく顔つきや性格も似ているために、九条家の人たちは初対面でもあっさりと正太郎を受け入れてくれたのでしょう。
これまで自分が惣太郎の「代わり」をしていたと気がつき、正太郎はショックを受けてしまいます。
設楽のもとを早々とおいとましてバスに飛び乗り、旭川市にとんぼ返りしましたが真っすぐに帰宅する気になれません。
行きつけのカフェに立ち寄るとマスターが紅茶とシフォンケーキをサービスしてくれて、ようやく気持ちが落ち着いてきます。
帰り際にマスターから手渡されたのは「九条櫻子様へ」と書かれた手紙で、先ほど店内にいた客が置いていったそうです。
【結】櫻子さんの足下には死体が埋まっている 6 白から始まる秘密 のあらすじ④
初めて九条のお屋敷を訪問した時は秋でしたが、今は永山神社からの200メートルほどの道のりが雪で覆われていました。
館脇家から正太郎を奪いたくないという櫻子、もう中学生ではなく自分の交遊関係は自分で決めると正太郎。
門前払いを食らわされそうになりましたが、例の手紙に「クリナウラモジタテハ」という言葉が記されていたのを見て表情が一変します。
南米の奧地にしか生息しない希少なチョウチョの品種で、正式な学名を知っているのは一部の研究者をのぞけば花房くらいでしょう。
このタイミングで正太郎のスマホに着信があり送信者は「Phantom」、SNSのデータはすでに削除されていてメールを送ってみても返信はありません。
毎晩必ずメールではなく電話で無事を知らせ合うこと、決して単独で行動はしないこと。
このふたつを条件に正太郎はこれまで通りに九条家に来ることを許されます。
胸騒ぎを覚えながらも、正太郎は天国の惣太郎とふたりで櫻子を守り抜くことを誓うのでした。
櫻子さんの足下には死体が埋まっている 6 白から始まる秘密 を読んだ読書感想
櫻子さんと正太郎の貴重な初対面シーンが登場しますが、いきなり殺人犯と勘違いしてしまうという何とも色気のないエピソードですね。
前話では名前しか出てこなかった惣太郎についても、少しずつ明かされていて興味深いです。
弟の代用品でもいいから彼女の側にいたいという、正太郎の胸のうちに思いを巡らせるとちょっぴり切なくなってしまいました。
SNSを通じて顔の見えない相手とやり取りをする危険性についても、鋭く指摘されていて考えさせられます。
体の自由を奪われながらも知性を失うことのない設楽と、言語デバイスを通じて意思の疎通をする場面と比べてみてください。
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