「川っぺりムコリッタ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|荻上直子

川っぺりムコリッタ 荻上直子

著者:荻上直子 2019年6月に講談社から出版

川っぺりムコリッタの主要登場人物

山田(やまだ)
出所後、ハイツムコリッタで暮らし始める。イカの塩辛工場で働いている。

島田(しまだ)
ムコリッタの住人。山田の隣の部屋に住んでいる。小さな菜園を持っている。

南さん(みなみさん)
ムコリッタの大家さん。娘のカヨコと暮らすシングルマザー。

溝口さん(みぞぐちさん)
ムコリッタの住人。いつも黒いスーツを着て墓石の訪問販売をしている。場面緘黙症の息子、洋一と暮らしている。

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川っぺりムコリッタ の簡単なあらすじ

刑務所で30歳を迎えた山田は、出所後に北陸の塩辛工場で働き始めます。

川べりのムコリッタという名前のアパートで暮らし始めた彼は、図々しい隣人の島田、墓石を売り歩く溝口親子、シングルマザーの大家の南など訳ありな人々と出会います。

あるとき山田のもとに、幼い頃に別れた父親の遺骨を引き取って欲しいという電話がきます。

山田はためらいながらも遺骨を引き取り、ムコリッタの住人たちと父の葬式をするのでした。

川っぺりムコリッタ の起承転結

【起】川っぺりムコリッタ のあらすじ①

山田

 詐欺の罪でつかまり刑務所で30歳を迎えた山田は、出所後、北陸の海の近くの塩辛工場で働き始めました。

そして、生きるか死ぬかのギリギリを感じる川べりに住むことを願っていた彼は、川っぺりに建つ「ハイツムコリッタ」という変わった名前の木造アパートを紹介してもらい、そこで暮らすことになりました。

 山田は、物心ついた頃には父親はおらず、高校生のときには母親に捨てられ、その後は知り合いの家や建設現場を転々としながら生きてきました。

出所後はイカの塩辛を作っている小さな工場で働くことになった山田ですが、ただ淡々と仕事をこなす日々でした。

工場の社長は優しく、ベテラン社員の中島さんは山田に丁寧に仕事を教えてくれますが、彼は誰とも関わらずに一人でひっそりと暮らしていきたいと思っているのでした。

そんな彼の唯一の楽しみは、お風呂上りにパンツ一丁で、窓を正面に正座をして、冷たいコップ一杯の牛乳を一気飲みすることでした。

【承】川っぺりムコリッタ のあらすじ②

ムコリッタの人々

ある日、いつものようにお風呂上がりの牛乳を一気飲みしていたところ、ノックの音が聞こえました。

ドアを開けると、「風呂貸してくんない?」と伸び切った髪に無精ひげの男が立っていました。

無理だと断る山田に気にせず関わってくるこの男は、隣に住む島田という男でした。

ムコリッタには、島田のほかに、203号室にはシングルマザーの大家の南さんとその娘のカヨコ、201号室には墓石の訪問販売をしている溝口さんと息子の洋一が住んでいました。

 島田は庭で野菜を育てており、山田が給料日前に空腹に耐えかねていた時にはキュウリとトマトをくれました。

そのお礼に、山田が工場からもらったイカの塩辛を島田に渡そうとすると、塩辛より風呂を貸してほしいと言って、島田は山田の部屋の風呂に入っていきました。

それ以降、島田とは一緒に畑作業をしたり、山田の部屋でご飯を食べたりするようになりました。

 島田の幼馴染のガンちゃんがお寺の坊さんだと聞いた山田は、市役所から届いた手紙のことを島田に相談しました。

それは孤独死した父の遺骨を引き取りに来てほしいという内容の手紙でした。

葬儀をする義理も感じない山田でしたが、島田に父親がどんな人だったとしても、いなかったことにしてはいけないと言われ、遺骨を引き取りに行くことにしました。

【転】川っぺりムコリッタ のあらすじ③

ムコリッタでの日々

 ある日、201号室からすき焼きの匂いを嗅ぎつけた島田は、溝口さん親子が止めるのも構わず、いつものようにどかどかと部屋に入っていき、「マイ箸」を取り出してすき焼きを食べ始めました。

山田が箸を取りに戻り、山田と同じように201号室ですき焼きをつついていると、美味しそうな匂いにつられて南さん親子もやってくるのでした。

 こうして島田やムコリッタの人々と交流をしながら暮らしていた山田ですが、あるとき、いつもは自分からどかどかとやって来る島田が来ないことを不思議に思います。

庭で畑仕事をしている島田に話しかけてみても、やはり様子が変です。

そして島田は、山田の秘密を知ってしまったと言うのです。

 島田のそっけなくなった態度に落ち込む山田は、仕事中に手を切ってしまいます。

社長に中島さんが心配していたことを伝えられても、自分の前科を知れば中島さんとも今まで通りにはいかないと言う山田に、「中島さんは初めから知ってるよ。

今辞めんな。」

と言って社長は去っていくのでした。

【結】川っぺりムコリッタ のあらすじ④

「せつな、たせつな、ろうばく、むこりった」

休みの日、山田は父の火葬を手伝ってくれた市役所の職員を訪ねました。

父の最期について職員に尋ねると、父が最後に住んでいたという場所に連れて行ってくれました。

そして、父は窓を正面に座っていて、急な心不全か何かで倒れたようだと話してくれました。

しかも上半身裸のパンツ一丁で、テーブルの上には飲みかけの牛乳が置いてあったことも教えてくれました。

それを聞いた山田は「やっぱり父親でした」と笑いが止まらなくなるのでした。

数日後、島田が山田に謝りに来ました。

そして、山田が隣に引っ越してきてくれて本当に嬉しかったのだと伝えます。

山田が土手で父の遺骨を砕いていると、南さんが「お葬式しましょう。

お父さんの。」

と言いました。

美しい紫色の空の中、ムコリッタの住人と父親の葬式を行いました。

ムコリッタの住人とガンちゃんが並んで土手を歩いていきます。

山田が遺骨を掴んでゆっくりと目の前で手を開くと、白い骨粉は手のひらからこぼれ、紫色の光を受けてキラキラと輝きながら、風に流されていくのでした。

川っぺりムコリッタ を読んだ読書感想

映画「彼らが本気で編むときは、」「かもめ食堂」などの監督をされた荻上直子さんが書かれた小説ということで、気になって読んだ本です。

とても良い作品でした。

誰とも関わらずにひっそりと生きていくつもりだった孤独な主人公が、少しずつアパートの住人たちと心の距離を縮めていく姿が優しく描かれていました。

風変わりなムコリッタの住人たちとのゆるやかな温かいつながりは、家族でなくても、友達でなくても、人は誰かとのつながりのなかで生きていくものだということを感じさせてくれました。

読んだ後に優しい気持ちになれるお話でした。

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