ばいにんぶるーす(阿佐田哲也)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

ばいにんぶるーす

【ネタバレ有り】ばいにんぶるーす のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:阿佐田哲也 1982年5月に講談社から出版

ばいにんぶるーすの主要登場人物

立花(たちばな)
かつては官僚でありながらギャンブルの世界へと足を踏み入れていく。

ロッカ(ろっか)
ロックバンドでギターを弾いていた過去から「ロッカ」のニックネームで親しまれる若者。本名は安藤幸夫。

和合克治(わごうかつじ)
闇賭博の胴元。

波目井鉄五郎(なみめいてつごろう)
刑期を終えたばかりの老人ギャンブラー。ロッカの父。

ばいにんぶるーす の簡単なあらすじ

風来坊のロッカ、元は厚生省のお役人だった立花、貪欲なる地下カジノの元締め・和合、刑務所帰りの鉄五郎。4人の登場人物たちのバックグラウンドが深く掘り下げられていきます。ギャンブルの世界を生き抜く男たちの悲哀や、その道のプロフェッショナルが随所に披露する秘技など見どころ満載です。

ばいにんぶるーす の起承転結

【起】ばいにんぶるーす のあらすじ①

馬が合うふたり

立花は長年にわたって務めた厚生省を退職した1年前に、元上司や同僚の仕事を引き受ける事業所をオープンしました。

対するロッカはギャンブルに熱中し過ぎてロックバンドを馘になった冴えない青年でしたが、ふたりは共通の趣味である競輪を通して親しくなります。

近頃では多忙な立花に代わって、ロッカが競輪場まで足を運んで車券や予想紙を購入することもしばしばです。

行く当てがなかったロッカは、立花が自治会の委員を務めている団地の一室に転がり込みました。

更には住人たちから掛け金を集めて配当を配る、無尽でひと儲け企みます。

そんなロッカに対して立花は、団地の生活協同組合の積立金を流用していることを打ち明けることが出来ません。

【承】ばいにんぶるーす のあらすじ②

死ぬまでに一目会いたいあの子

夏の朝、中野刑務所の裏門からひとりの老人が出てきました。

彼の名前は波目井鉄五郎で、その筋の人たちからは有名なギャンブラーです。

鉄五郎を出迎えたのは和合克治と名乗る30歳前後の男性で、かつての学生運動のリーダーでありカジノのボスとしても恐れられています。

新宿のレストランで軽く腹ごしらえをした後に、早速花札賭博へと向かいます。

予想以上の強さに魅入られた和合は彼を仲間に引き入れようとしますが、保釈中の鉄五郎には相手にされません。

老い先短い時間鉄五郎にとって気になるのは、幼い頃に養子に出して以来合っていない息子の存在です。

今ごろは20歳くらいの若者に成長しているであろう、その姿を頭の中で思い浮かべるのでした。

【転】ばいにんぶるーす のあらすじ③

巡り合う4人

立花が前々から推進してきたインドネシアに病院を建設する計画がようやく軌道に乗り出した頃、団地の自治会員たちが帳簿の監査を要求してきました。

3000万円にも上る使い込みが発覚することを恐れた立花が頼ったのは、以前からの付き合いがある和合です。

一時的に立花の口座に和合が用意した3000万を振り込み、監査が無事に終わると引き上げます。

その見返りとして和合が求めたのは、インドネシアでの事業の協同経営です。

更には立花の事務所に出入りしていたロッカにも目を付けていて、彼をビジネスパートナーに勧誘します。

和合と手を組むことに一抹の不安を覚えたロッカは、「ばくちうちの神様」の異名を持つ老人を訪ねて相談してみることにしました。

【結】ばいにんぶるーす のあらすじ④

人生最期の大穴

鉄五郎の出身地が滋賀県と岐阜県の県境に位置する川西村であること、幼い息子を預けて東京に出奔したこと。

ふたつの昔話からロッカは鉄五郎が自分の父親であることを確信しますが、本名の「安藤幸夫」を名乗ることが出来ません。

鉄五郎は成人した息子に気がつくこともなく、入院中の自分に代わって馬券を購入することを頼みます。

予想したレースは見事に的中して万馬券となりますが、直後に鉄五郎は静脈瘤破裂によって亡くなってしまいました。

1億5000万円を超える配当金を残された3人で山分けして、立花は横領していたお金を補填します。

立花の会社は解散へと追い込まれますが、ロッカと和合が彼の意志を受け継いでインドネシアへと旅立っていくのでした。

ばいにんぶるーす を読んだ読書感想

かつては官僚でありながらギャンブルの世界へと足を踏み入れていく、立花の転落ぶりが印象的でした。

仕事をほっぽり出して、川崎競馬場や千葉県松戸市の競輪場に入り浸る姿が哀愁たっぷりになります。誰しもが欲しがる社会的な地位と財産を手に入れながら、どこか満たされることのない立花の表情が忘れ難いです。

特に感動したセリフは、「遊び人は他人に頼れないからな。

他人のためになることを何もしてないんだから。」

です。老骨のギャンブラー・波目鉄五郎が呟く言葉になります。

自分で自分の始末をつける、勝負師としての誇りを貫き通す生きざまには胸を打たれました。

孤独を背負いながらも矍鑠たる鉄五郎が、最後に咲かせたひと花には驚かされます。

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