著者:原田マハ 2011年9月に祥伝社から出版
でーれーガールズの主要登場人物
佐々岡鮎子(ささおかあゆこ)
ヒロイン。「小日向アユコ」のペンネームで活躍するマンガ家。人前で話すのが不得意。
秋本武美(あきもとたけみ)
鮎子の親友。 高校教諭。ハキハキとして意志が強い。
篠山みずの(しのやまみずの)
鮎子の高校時代のクラスメート。親子で鮎子の作品を愛読する。
中谷純一(なかたにじゅんいち)
鮎子の恩師。 教師を退職してからも教え子には人気がある。
荒川雄哉(あらかわゆうや)
鮎子の担当編集者。 生身の女性が苦手。
でーれーガールズ の簡単なあらすじ
東京から岡山の名門女子高に転校してなかなかクラスに溶け込めなかった佐々岡鮎子にとって、初めてできた友だちが秋本武美です。
マンガ家として成功した鮎子のもとに母校の記念式典での講演依頼が届き、27年ぶりに足を踏み入れた岡山で先生をしている武美と再会します。
講演会の当日の朝に息を引き取った武美のために、鮎子は悲しみを乗りこえて大勢の在校生の前に立つのでした。
でーれーガールズ の起承転結
【起】でーれーガールズ のあらすじ①
東京で生まれた佐々岡鮎子が父親の転勤で岡山県に引っ越してきたのは、高校に入学する直前のことでした。
伝統と格式で有名だった白鷺女子高校の進学コースに入学しましたが、鮎子が話す標準語は地元の女の子たちの中で目立ってしまいます。
「でーれーお嬢さんぶっとる」とからかわれますが、「でーれー」が岡山弁で「ものすごい」だと分かってきたのは随分と後になってからです。
1年生のクラスの中で鮎子と同じくどこのグループに属さずに、いつもひとりで行動していたのが秋本武美でした。
鮎子が趣味で書いているマンガを武美がとても気に入ったのがきっかけで、ふたりは少しずつ仲良くなっていきます。
武美にとってたったひとりの肉親である母親が、当時お付き合いをしていた男性を頼って広島に移り住んだのは高校1年生の春休みのことです。
鮎子は高校卒業後に神戸の短大に進学して、その後は東京に戻って慌ただしくしていために武美と連絡を取る暇はありません。
【承】でーれーガールズ のあらすじ②
鮎子が老舗の少女マンガ雑誌「別冊お花畑」の新人賞に輝いて、「でーれーガールズ」でデビューしたのは20歳の時です。
20代から30代にかけてわき目も振らずに仕事に打ち込んでいる間に、母校の白鷺女子高は創立120周年を迎えました。
売れっ子マンガ家として活躍を続けている鮎子はOGの中でも1番に知名度が高く、記念講演の依頼が舞い込んできます。
口下手であがり症な鮎子が思いきってこの講演会を引き受けたのは、この機会に開かれる同窓会に参加するためです。
読み切りの原稿を入稿して新幹線に飛び乗った鮎子は、27年ぶりの同窓会の会場である岡山駅前のホテルへ最向かいました。
学級委員長だった篠山みずのは結婚して娘を授かり、今ではその娘が成長して白鷺女子高の1年生に通っています。
クラスを受け持っていた中谷純一先生はとっくに定年退職していて、孫娘が鮎子のマンガのファンだそうです。
今回の記念事業の実行委員でもあり、岡山に帰って母校で国語教師をしている秋本武美とも再会を果たしました。
【転】でーれーガールズ のあらすじ③
同窓会が終わった後にホテルを出た鮎子が路面電車に乗って向かった場所は、武美の嫁ぎ先がある岡山市内の古い日本家屋が集まった住宅街です。
3年前に夫と死別した武美はいま現在では義理の両親と暮らしていて、鮎子は実の親子のように仲のよい3人から大歓迎を受けてその日は泊めてもらうことになりました。
ひと晩だけ女子高校生に戻ったような気持ちになった鮎子と武美は、翌日の午前11時に迫った白鷺女子高の講演会に備えてそれぞれ準備を進めます。
桃太郎大通りにある書店で働いている篠山みずのには即席のサイン会を頼まれていて、店内は鮎子のマンガ本を抱えた人たちで長蛇の列です。
本と色紙にひとつひとつ心を込めてサインをした鮎子は、東京から講演会を聴きにきてくれた編集者の荒川雄哉と市の中心にある料理屋で食事をともにしました。
鮎子のデビュー作「でーれーガールズ」の中に登場するヒロイン・孝美こそが理想の女性だと熱く語る荒川ですが、武美が孝美のモデルになっていることは知りません。
【結】でーれーガールズ のあらすじ④
講演会の開始まで1時間となった次の日の朝、白鷺女子高の事務局から緊急連絡が入り武美が急死したことを知らされました。
鮎子が学校の正門の前に駆け付けると、赤く泣きはらした目の篠山みずのと武美の義理の母が待っています。
結婚してすぐに武美が心臓の病気になっていたこと、高額な医療費がかかる移植手術を受けずに投薬治療を続けていたこと、ここ2週間ほどはろくに寝ていなかったこと。
おだやかなで眠るような顔だったいう武美の遺体に会いに病院へ行こうとする鮎子を、力の限りに引き留めたのはみずのです。
この講演会を成功させなければ、休みも取らずに残業して頑張った武美の努力はすべてが無駄になってしまうでしょう。
白鷺女子高等学校の体育館ではセーラー服にまぶしい白のリボンをつけた、500人あまりの生徒がパイプいすに着席しています。
盛大な拍手に迎えられた鮎子がスピーチのために用意した原稿を握りしめた瞬間、武美の「でーれー、ええ夢を見せてもろうた」という声を聞くのでした。
でーれーガールズ を読んだ読書感想
東京で生まれた主人公・佐々岡鮎子が、岡山県の女子高に溶け込むために慣れない方言を無理やり使おうとする様子が涙ぐましいです。
「でーれー」というユーモラスで心地よい響きの中にも、青春時代のちょっぴりほろ苦い思い出を感じてしまいました。
駅前の桃太郎大通りから城下町を駆け抜けていく路面電車や、後楽園の緑を見下ろす鶴見橋など。
1980年と27年後のふたつの時代を行き来しながら、岡山市内の観光スポットや歴史的な名所が映し出されていて美しいです。
27年がたっても変わることのない鮎子と秋本武美の友情と、予期せぬの別れも心に残ります。
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