「地獄変」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|芥川龍之介

地獄変 芥川龍之介

著者:芥川龍之介 1919年1月に新潮社から出版

地獄変の主要登場人物

良秀(よしひで)
本作の主人公。高名な絵師。欲張りで高慢な性格で、周囲に嫌われている。自分の納得する絵を描くためならば手段を選ばない。娘を溺愛している。

娘(むすめ)
良秀の一人娘。大殿様の屋敷で働いている。父親に似ず、愛嬌のある娘。気が優しく、親思い。

堀川の大殿様(おおとのさま)
良秀が絵師として仕える殿様。良秀の絵の実力を認めており、また、気立てのよい良秀の娘をひいきにしている。


この物語の語り手。大殿様の屋敷で働いている。

猿の良秀(さるのよしひで)
屋敷に献上された猿。大殿様の子息である若殿さまが冗談で良秀と名付けた。良秀の娘に助けられたことから娘になついてそばにいるようになった。

地獄変 の簡単なあらすじ

堀川の大殿様に仕える絵師の良秀は、けちで高慢でお屋敷の人々からは嫌われていました。

一方、お屋敷で働く良秀の娘は気立てがよくかわいがられ、良秀にも溺愛されていました。

ある時、良秀は大殿様から地獄の様子を描いた屏風を描くようにと命じられます。

絵筆をとった良秀は屏風を描くことに夢中になるあまり、常軌を逸した行動をとります。

そしてある日、牛車に女性を乗せて燃やしてほしい、その様子を描きたいと大殿様に申し出ます。

大殿様はこれを承諾しましたが、牛車に乗せるために連れてこられたのは良秀の娘でした。

良秀は目の前で苦しみながら死んでいく娘の姿を描き、屏風を完成させますが、首をつって自殺しました。

地獄変 の起承転結

【起】地獄変 のあらすじ①

嫌われ者の良秀と気立ての良い娘

良秀は堀川の大殿様に仕える腕の良い絵師でしたが、その醜い容姿とけちで欲張りで高慢な性格からお屋敷の人々には嫌われていました。

良秀の絵には、近くを通るとため息やすすり泣きが聞こえるとか、良秀に似顔絵を描いてもらった人が病気になって死んだなどの気味の悪い噂ばかりがたっていました。

良秀の一人娘も大殿様のお屋敷で侍女として働いていましたが、こちらは気立てがよく愛嬌があり、みんなにかわいがられていて良秀には似ても似つかない娘でした。

お屋敷には、よそからもらわれてきた猿がおり、大殿様の息子の若殿様が冗談で良秀と名付けていじめていました。

ある時良秀の娘が猿を助けたことから、猿は娘になつき、お屋敷の人々にかわいがられるようになりました。

良秀は一人娘を溺愛していました。

そのため、素晴らしい絵を描いたほうびに何が欲しいかと大殿様に聞かれて、娘をお屋敷での仕事から外してほしいと頼みます。

娘をひいきにしていた大殿様はそれを許さず、機嫌を損ねてしまいます。

【承】地獄変 のあらすじ②

地獄変の屏風を描くことに夢中になる良秀

良秀は大殿様から地獄の様子を描いた地獄変の屏風を描くように命じられます。

良秀は5〜6か月の間、屏風を描くことにかかりきりになります。

そして常軌を逸した行動をとり始めます。

ある時は、弟子に昼寝の間枕元にいるようにと命じて寝入った後、何かにとりつかれたように恐ろしい形相で独り言を言いはじめ、顔に水をかけられるまで正気に戻りませんでした。

またある時は、鎖で縛られた人間が見たいといって弟子を鎖で縛りあげ、身動きが取れずに苦しむ弟子の姿を何枚も描きました。

さらには、人からもらったというミミズクに弟子を襲わせて、逃げ惑う弟子の様子を描きました。

弟子が苦しんでいる様子を平然と描く良秀を見て、弟子たちは師匠に殺されるかもしれないと恐怖を感じました。

しかし屏風には思い通りに描けない部分があるらしく、屏風は8割がた描かれたところで止まったまま、はかどっていませんでした。

良秀はそのせいでさらに陰気になり、物言いも荒くなっていきました。

【転】地獄変 のあらすじ③

娘に起きた出来事と良秀の頼み

良秀が屏風に夢中になっている間、良秀の娘は元気がなくなっており、父思いのせいだとか恋煩いだとかのうわさがたっていました。

ある夜この物語の語り手である私がお屋敷の廊下を歩いていると、猿の良秀が尋常ではない様子で助けを求めてきました。

何事かと思ってついていくと、部屋から良秀の娘が走り出してきました。

その様子がいつもの控えめな様子とは違ってあでやかで、美しい姿だったので私は驚きます。

同じ部屋から誰かが走り去る足音を聞いて、私は娘に誰ですかと聞きましたが、娘は答えませんでした。

私は見てはならないものを見たような気持ちになるのでした。

良秀はお屋敷に来て大殿様に面会し、屏風は完成間近だが、自分は見たものでないと描けないのでひとつだけ描けないものがあると言います。

大殿様がそれは何かと聞くと、良秀は、空から牛車が落ちてきて、その中に燃えている女性の姿を描きたいのだと答えました。

そして、牛車を用意してその中に女性を乗せ、燃やしてほしいと大殿様に頼みました。

大殿様はただならぬ形相になりましたが、良秀の願いを聞き入れ、牛車の中で悶え死ぬ女性を描こうと思いつくとはさすが天下の絵師だ、と言って良秀のことをほめます。

【結】地獄変 のあらすじ④

地獄変の屏風の完成

大殿様は約束通り、良秀のために牛車を用意しました。

真夜中近くになって、牛車を燃やすことになったとき、大殿様は中に罪人の女性が乗っているから見せてやると言います。

その女性は、良秀の娘でした。

良秀が反射的に牛車に向かって走りかけた時、大殿様は火をつけろと命じます。

火が燃え上がると、良秀は足を止めて牛車を見つめます。

その表情には恐れと驚きと悲しみがありました。

娘が炎の中で身もだえする有様は、地獄の業苦を写しだしたかのようでした。

その時、猿の良秀が炎の中に飛び込んでいきました。

牛車が燃える中、さっきまで苦しそうだった良秀の表情は嬉しそうなものに変わっていました。

語り手の私は、良秀に人間とは思えない怪しげな厳かさを感じました。

この出来事を知った人々は目前で娘を焼き殺されながら屏風を描く良秀を非難しましたが、完成した地獄変の屏風は見る者を不思議に厳かな気持ちにするものでした。

それ以来、お屋敷の中で良秀を悪く言う者はいなくなりました。

しかし、良秀がそれを知ることはありませんでした。

屏風が完成した翌日に首をつって自殺していたからです。

地獄変 を読んだ読書感想

平安時代の物語を芥川龍之介が書き直した短編小説です。

絵のリアルさを追求するために、溺愛していた一人娘の焼け死ぬ姿を目の前で見るという展開には強烈なインパクトがありました。

もちろん正気の沙汰ではないと思いますし、正しいことではないのです。

しかし、魂のこもった芸術作品を生み出すために、芸術家は何かしらの犠牲を払う必要があるのは確かなことでしょう。

それがどこまでなら許されるのか、考えてみると答えは簡単には出ないものです。

世の中で称賛される芸術作品の中にも、単純に善悪では割り切れない出来事や感情から生まれたものが少なからずあるのではないでしょうか。

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