著者:池井戸潤 2013年7月に小学館から出版
ようこそ、わが家への主要登場人物
倉田太一(くらたたいち)
本作の主人公。中堅企業に出向中の52歳。争いを好まない性格。
倉田珪子(くらたけいこ)
太一の妻。優しい性格。
倉田健太(くらたけんた)
太一と珪子の長男。テレビ制作会社でバイト中。
真瀬(ませ)
太一の出向先のナカノ電子部品の営業部長。
西沢摂子(にしざわせつこ)
ナカノ電子部品の経理担当。シングルマザー。仕事ができる。
ようこそ、わが家へ の簡単なあらすじ
ある日、駅のホームで割り込みをした男を注意したのは会社員の倉田太一です。
その後、彼の過程に嫌がらせが始まりました。
その行為はどんどんエスカレートし、やがて盗聴器まで見つかります。
おびえながらも正体の見えない相手を追う太一と家族。
一方、太一は職場で上司の不正を疑ったことから、そちらでもトラブルに巻き込まれていくことになります。
果たして家族は嫌がらせを働く人物を暴けるのか。
手に汗握るストーリー展開を見逃せません。
ようこそ、わが家へ の起承転結
【起】ようこそ、わが家へ のあらすじ①
中堅企業・ナカノ電子部品に出向中の52歳の会社員である倉田健太。
彼はある夏の日に混雑する駅のホームで列の割り込みをした男を、勇気を出して注意します。
太一が注意すると慌てて逃げる男。
無事、問題が解決したかのように見えましたが、それは壮絶な太一の家への嫌がらせ行為の始まりでした。
自宅の花壇が荒らされていたり、ある日にはポストに弱った猫が入れられていました。
夜中には誰かが家の中をみています。
一方、出向先のナカノ電子部品では部下の西沢が上司の経費の不正を暴きました。
西沢に相談され、真瀬の不正を追及しようとする倉田。
しかし、口が上手い営業部の真瀬に上手く言いくるめられてしまい、争いを好まない太一は引き下がります。
そこで、太一は不正を行えようにシステムの変更を行います。
すると、在庫のチェックの過程で2000万円分のドリルの在庫の不足が発覚しました。
真瀬の仕業ではないかと疑う倉田。
しかし翌日、倉庫のチェックの担当者からドリルは見つかったと連絡がきます。
ただの見落としだったというのです。
【承】ようこそ、わが家へ のあらすじ②
ドリルについての問題は解決し、ただの間違えだったのかと戸惑う太一と西沢。
しかし西沢は真瀬について今度は出張費の二重取りの不正を指摘します。
西沢が追及の姿勢を弱めないので太一は真瀬の銀行口座について調べることにしました。
しかし、調べてみると真瀬に多重債務の疑いがあり、クレジットカードを作れなかった過去があるといいます。
真瀬のことをますます怪しむ太一。
そんな中、営業部の真瀬から新規取引先の審査の依頼が来ます。
真瀬が問題のドリルを販売したいという取引先です。
太一が銀行に行って取引先について調べるとその会社は二期連続で赤字を出していて、今にも倒産しそうだと発覚しました。
太一は真瀬に取引の中止を求めますが、真瀬は「数字しか見ないやり方だ」と反対します。
さらに、秡川社長から取引の許可を受けているから構わないのだといいます。
そこで太一は社長に直接、取引の中止を求めます。
しかし社長にも「今後優良企業になる」といって批判されてしまいました。
【転】ようこそ、わが家へ のあらすじ③
社長に情報不足を指摘された太一は謝罪をして引き下がります。
さて、倉田家への嫌がらせ行為はいまだに続いており、あるとき車を傷つけられたため、防犯カメラの設置をしました。
また、室内に盗聴器が仕掛けられており、犯人が家に不法侵入していたことも発覚します。
そこで太一の息子の健太は盗聴器にむかってわざと家族旅行をするという嘘の情報を聞かせます。
誰もいないはずの家に犯人をおびき寄せ、そこを捕まえる作戦です。
作戦の当日、太一と息子の健太が自宅で待ち構えてくると、狙い通り犯人がやってきます。
しかし、取り押さえようとしたところ息子の健太が犯人に刺されてしまいます。
幸い、命に別状はなく、犯人も警察の緊急捜索によって逮捕されました。
犯人は田辺覚という人物であり、健太と同じテレビ構成ライターだといいます。
健太に仕事を奪われた腹いせに犯行に及んだといいます。
しかし彼の顔は太一が駅でぶつかった男と別でした。
また、田辺は一部の嫌がらせ事件を除いて、犯行を否定します。
【結】ようこそ、わが家へ のあらすじ④
一方職場ではドリルを販売した例の新規取引先企業が、手形を受け取った後に姿を消してしまいます。
取引は完遂されなかった。
太一の主張は正しかったのですが、社長は自分の非を認めようとしません。
謝罪をしないうえに、社長は太一が元々働いていた銀行に太一の交代要員を要請します。
そのなか、事務処理をしていた太一が高額すぎる運送料の怪しい伝票を発見します。
不審に思って調べると、ドリルは例の取引先でなく、新潟にある別の中小企業に運ばれたことがわかりました。
不審な経緯をたどっていくと真瀬が取引先と新潟の中小企業と組んで不正を働いていたことが確実な情報となりました。
真瀬と社長の間を取り持っていた野口が、社長に嘘の情報を流していたことを認め、事件の真相は明らかになりました。
社長は倉田太一に謝罪をしましたが、結局太一の出向は解除となり元の職場の銀行に戻ることになりました。
その日の帰りに駅で出会った嫌がらせの犯人を見つける太一。
その場では取り逃してしまったが、防犯カメラを確認し、ついに真犯人にたどり着きました。
逮捕された真犯人の正体は出版会社の副編集長の赤崎という人物でした。
倉田家はようやく日常を取り戻しました。
ようこそ、わが家へ を読んだ読書感想
池井戸潤のリアルなストーカー被害と職場での戦いを描いた小説です。
主人公の太一はどこにでもいるような人物であり、些細なことからストーカー行為が始まることの恐ろしさを感じます。
また、職場での戦いは、争いを好まない柔和な性格ながら真面目太一が不正を追及し続ける姿を応援したくなります。
家庭での、妻・珪子や子供たちの言動も生活感たっぷりで読みごたえがあります。
後半にかけてどんどん面白くなってくるのがこの小説のポイントです。
真瀬が行った不正の結末をぜひ、ご自分の目で確かめてください。
ストーカーと会社のことに悩むごく普通の男性を主人公にした、最高にスリルのある小説を自信をもってお勧めします!
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