著者:宮沢賢治 1979年11月に青空文庫から出版
洞熊学校を卒業した三人の主要登場人物
蜘蛛(くも)
洞熊先生の学校の生徒。
なめくぢ(なめくじ)
洞熊先生の学校の生徒。
狸(たぬき)
洞熊先生の学校の生徒
洞熊先生(ほらくませんせい)
洞熊学校の先生。三人に授業をした。
洞熊学校を卒業した三人 の簡単なあらすじ
蜘蛛、なめくぢ、狸の三匹は、洞熊学校で洞熊先生から授業を受けます。
三匹は学校で一番になることに固執し、お互いに競い合っていました。
そして、三匹はそれぞれ自分がこの二匹よりも偉くなってやると思いながら学校を卒業しました。
しかし、蜘蛛は大きくなろうと広い蜘蛛の巣で獲物をたくさん捕まえましたが食べきれない獲物が腐敗し自分も腐って溶けて死に、ナメクジは他人をだまして食べて大きくなろうとしましたが最後は逆に騙され塩をまかれて死に狸も宗教で騙していましたが最後は沢山食べた稲の種が発芽し腹が破裂して死んでしまいました。
それを見た洞熊先生は、みんな賢かったのにと言い大きなあくびをしました。
洞熊学校を卒業した三人 の起承転結
【起】洞熊学校を卒業した三人 のあらすじ①
赤い手の長い蜘蛛、銀色のなめくぢ、顔を洗ったことのない狸の三匹は、洞熊学校に入学し三人で洞熊先生からの授業を受けます。
洞熊先生の教えは「大きいものほど偉い」というものとうさぎと亀のかけっこのみでした。
三匹はそんな授業のなかで一番になってやろうと必死になります。
最初の一年はなめくぢと狸が遅刻をしょっちゅうしてしまったため蜘蛛が一位になりました。
なめくぢと狸とは泣いて口惜くやしがりました。
次の年は洞熊先生が点数の計算を間違えてしまったためなめくぢが一位になりました。
蜘蛛と狸とは歯ぎしりしてくやしがりました。
最後の一年は洞熊先生が、回りが明るかったため授業中に目をつむっていたりしていたため狸が本をみながら書いていたため狸が一位になりました。
こうして赤い手の長い蜘蛛、銀色のなめくぢ、顔を洗ったことのない狸の三匹は洞熊学校を卒業することとなりました。
そして三人は大変仲がよさそうに洞熊先生のための謝恩会を開くことにしました。
【承】洞熊学校を卒業した三人 のあらすじ②
卒業をする三人は洞熊先生のための謝恩会や三匹での離別会を開いたりしていました。
一見三匹は仲のよさそうに見えましたが、実際はそんなことはありませんでした。
三匹はそれぞれ、「あいつらに何が出来るものか。
これから誰が一番偉くなるか、今に見ていろ。」
と腹の中では互いに見下しあっていました。
こうして三匹は離別会を終え、自分の家に帰ることとしました。
そして、これからは洞熊学校で習ったことを実践していくこととなりました。
一方で洞熊先生も今度はドブネズミを洞熊学校に入学させようと日々追いかけまわしていました。
ちょうどそのときはかたくりの花の咲くころで、たくさんの蜂の仲間が、日光のなかをぶんぶんぶんぶん飛び交ひながら、一つ一つの小さな桃色の花に挨拶あいさつして蜜みつや香料を貰もらったり、そのお礼に黄金色をした円い花粉をほかの花のところへ運んだり、あるいは新しい木の芽からいらなくなった蝋たちを集めて六角形の巣を築いたりともう春の入り口にはいっていました。
【転】洞熊学校を卒業した三人 のあらすじ③
蜘蛛は洞熊学校でお金をほとんど使ってしまったためひもじい思いをしていましたが、いつか見ていろと思いながら小さな巣をつくりました。
そして、小さなあぶや目の見えないカゲロウを、なんの慈悲もなくだましながら食べていきました。
そして、妻をめとり子供をつくりましたがある日なめくぢに自分はむしけら会の副会長になると自慢され悔しがります。
そして、もっと大きくなろうと広い蜘蛛の巣で獲物をたくさん捕まえましたが、食べきれなかった獲物が腐敗しそのせいで家族や自分も腐って溶けてしまいある日雨に流されてしまいました。
なめくぢも蜘蛛を同じように他人をだましながら食べて大きくなっていましたがその手口からみんなから嫌われてしまいます。
しかしある日カエルがやってきて相撲を取ろうと言い出します。
なめくぢはこれ幸いにとカエルをだまして食べようとしますが、カエルが相撲をとるには塩をまこうと塩をまいてから相撲をとりました。
そして、なめくぢはその塩で溶けてしんでしまいました。
ちょうど秋に蒔まいた蕎麦そばの花がいちめん白く咲き出し、蜂は今年の終りの蜜をせっせと集めいる時でした。
【結】洞熊学校を卒業した三人 のあらすじ④
狸はわざと顔を洗わないでいたのでした。
蜘蛛が最初の巣をかけた時に自分の寺に帰っていました。
ひもじいのを我慢して立っていると一匹のうさぎがやってきました。
うさぎが自分がひもじくてしたかがないというと、狸は「そうだ。
みんな往生だ。
山猫やまねこ大明神さまのおぼしめしどおりだ。
なまねこ。
なまねこ。」
と言いなが念猫(念仏のようなもの)を唱え始めうさぎもこれにしたがいます。
そして山猫様のおぼしめしといいながら念猫を唱えているうさぎを耳から食べていき最後はうさぎを食べてしまいました。
次にオオカミが籾もみを三升さげて狸の寺にやってきました。
そしてうさぎを同じように念猫を唱えているところを食べてしまいます。
そして、狸の腹の中でオオカミは「ここにうさぎの骨がある。
誰が殺したんだろう。
殺したやつはあとで狸に説教されながらかじられるだろうぜ。」
と言いました。
狸はそれを黙らせるためにオオカミの持ってきた籾もみを丸ごと飲んでしまいます。
その後、狸は腹が膨れて、破裂した後の狸の腹は、発芽した稲の葉でいっぱいでした。
それを見た洞熊先生は三人とも賢かったのに残念だと言いながらあくびをしました。
洞熊学校を卒業した三人 を読んだ読書感想
宮沢賢治の作品の中でも特暗く、短く、難しい作品ですが、その分宮沢賢治の伝えたかったことが描かれている作品でもあります。
宮沢賢治は元々農民のために農業の指導をしたりとで農村振興に尽力した人であり、逆に金貸しなどの業種の人々や資本家のようなエリートを批判していたことでも知られています。
この作品での一番になることを固執する三匹が破滅している様相は、出世や他人よりも優れていると誇る当時のエリートを痛烈に批判しているようにみえるなど批判する内容の多い構成になっています。
短い作品でありながら「銀河鉄道の夜」のようなきれいな宮沢賢治でなく本当の宮沢賢治が見え隠れする名作だと思います。
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