著者:原田マハ 2015年6月に株式会社集英社から出版
ジヴェルニーの食卓の主要登場人物
ブランシュ(ぶらんしゅ)
本作の主人公。モネの義理の娘であり、現在はモネと2人暮らし。モネの作品制作を誰よりも願いながらモネを支え続ける。
クロード・モネ(くろーど・もね)
画家。睡蓮装飾画の完成に尽力する。
ジョルジュ・クラマンソー(じょるじゅ・くれまんそー)
2度首相を務めた経験を持ち、30年以上にわたり、モネを支援し続ける。
ジヴェルニーの食卓 の簡単なあらすじ
「睡蓮」で有名なクロード・モネをモチーフにした物語です。
ブランシュは、ジヴェルニーの館で、モネと2人で暮らしています。
このジヴェルニーの館で、モネは睡蓮装飾画に取り組んでいます。
今や、モネはその名を世界に轟かせる巨匠のなったものの、ただひたすら絵を描き続けたいと願う一画家でした。
そんな中、モネの白内障が発覚します。
モネは絶望し、絵を描き続ける気力を失いつつありました。
しかし、モネは両目の手術に成功し、再び制作を続けることができるようになるのです。
ジヴェルニーの食卓 の起承転結
【起】ジヴェルニーの食卓 のあらすじ①
ブランシュは、その日、朝の光が部屋の中をたっぷりと満たすよりずっとまえにあたたかなベッドを抜け出さなければなりませんでした。
なぜなら、今日は特別なお客さまがいらっしゃるからです。
ここは、ジヴェルニーにあるクロード・モネの王国です。
窓を大きく開け放った向こう側に広がっているのは、夜明けを待つ広大な庭。
ここで、ブランシュは、料理や家事、庭仕事の監督、帳簿の管理、モネの仕事のマネジメントなど家の一切を仕切りながら、モネと2人で暮らしています。
一時は、10人もの大家族がひきめしあっていたジヴェルニーの館でしたが、子供たちはみな成人して独立し、家庭を持って、ジヴェルニーから出て行ってしまいました。
そして、ブランシュの母であり、モネの妻であるアリスが他界した3年後に、モネの長男・ジャンまでもが他界しました。
そうして、血の繋がらない義理の兄弟であるジャンと結婚していたブランシュはモネのもとへと帰ってきました。
そして、今、ブランシュは、忙しく食卓の準備にとりかかります。
【承】ジヴェルニーの食卓 のあらすじ②
エンジン音を轟かせ、表通りに最新型プジョーの自動車が停まりました。
クレマンソーが、ブランシュに案内され、広々とした第三のアトリエに足を踏み入れると、壁を埋め尽くす巨大なカンヴァスに吸いこまれました。
そこには、2点の睡蓮を描いた連作がありました。
ひとつの作品は、真昼の池、もうひとつは、2本のしだれ柳が並ぶ池のほとりです。
クレマンソーは、これらの作品について会談をするためにジヴェルニーを訪れたのです。
ブランシュにとって、子供の頃からモネは「先生」でした。
ブランシュは初めてモネにまみえたのは、11歳のときでした。
ブランシュの父、エルネストはモネのパトロンだったのです。
ブランシュは自宅であるロッテンブール城に飾られているモネの絵に惹き付けられていました。
そうして、モネにおだやかなまなざしを向けられたとき、自分の中にかすかに芽吹く何かがあるのを感じました。
今や、モネはフランス政府と契約をするような、その名を世界に轟かせる巨匠のなったものの、ただひたすら絵を描き続けたいと願う一画家でした。
ブランシュの願いは、彼が絵を描くことを煩わす、どんな事件も悩みごともあってほしくないということに尽きました。
【転】ジヴェルニーの食卓 のあらすじ③
クレマンソーは再び、ジヴェルニーの館を訪れました。
しかし、モネは体調が芳しくなく、寝室で臥せっており、面会に応じませんでした。
ブランシュは、それでも昼食の準備にとりかかります。
食後のプラム酒を味わいながら、クレマンソーは、ブランシュにモネの白内障について問いかけます。
モネは、パリの眼科医から、手術をせずにこのまま制作を続ければ、失明するだろうとの診察を受けていました。
ブランシュからの手紙で、モネの視力が衰えていることを知り、クレマンソーは一も二もなくすっ飛んできたのです。
モネは、絵を描き続ける気力を失いつつありました。
モネが初めてロッテンブール城を訪問し、居間に飾る作品を制作してから、モネと一家の人々は急接近しました。
その後も、モネは度々ロッテンブール城を訪れ、制作をしていました。
しかし、ある日、ブランシュの父、エルネストの会社が倒産してしまいます。
一家はモネのもとへ転がり込むことになりました。
ふたつの家族が貧しく暮らす中、モネの妻、カミーユが他界します。
モネは、絵を描きに出かけることもなくなりました。
ブランシュは、またモネと一緒に絵を描きに出かける日を願い続けました。
そんなある日、ブランシュは凍ったセーヌ川を見せようと、モネを連れ出します。
ついに、モネの絵筆が動き始めたのでした。
【結】ジヴェルニーの食卓 のあらすじ④
モネは、白内障と診断されてから3ヵ月間、クレマンソーとブランシュに根気強く説得され、ようやく手術に至りました。
まず右目に施術し、成功しました。
そして、半年後、今度は左目に施術し、成功します。
83歳にしてモネは再び視力を取り戻しました。
以前より格段に見えるようになったのがよほどうれしかったのか、すぐに睡蓮装飾画の制作をすぐにでも再開したい、と息込んでいました。
しかし、医者からは当面制作禁止との忠告を受け、モネはそれっきり絵筆を置いてしまいます。
ブランシュはモネがへそを曲げてしまったと思い込んでいました。
しかし、モネは、もう「睡蓮」を描けないかもしれないと感じていたのです。
苦しみながら手術を受けても、睡蓮装飾画を仕上げることができないなんて、残酷すぎると嘆くモネに、ブランシュは、「残酷なのは、あの睡蓮の絵が、完成せずに見捨てられてしまうことです」と、言葉をかけます。
さらに、クレマンソーからの手紙を読み、モネはかすかな希望を取り戻します。
クレマンソーが再びジヴェルニーの館を訪れると、モネはアトリエで制作をしているのでした。
ジヴェルニーの食卓 を読んだ読書感想
原田マハさんの作品には、絵をモチーフにしたものが数多くあり、実際に絵を目にしているかのような鮮やかな描写が人気です。
本作品も、画家クロード・モネをモチーフにしています。
誰もが、モネを知っているのではないでしょうか。
まず、そのモネの絵の描写の美しさに魅了されます。
また、モネの絵を前にしたときの、思わず吸いこまれるような感覚が的確に表現されています。
そして、モネが白内障を患ったときの、モネや周囲の人々の絶望に、思わず打ちひしがれてしまいます。
モネの描くことへの純粋な思いを感じ、ひたむきな画家の姿の感動させてくれる作品です。
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