著者:宮部みゆき 2001年6月に集英社から出版
R.P.G.の主要登場人物
武上悦郎(たけがみえつろう)
主人公。警視庁捜査一課の四係に所属する。公文書の制作や情報管理が専門。
石津ちか子(いしづちかこ)
本庁の放火捜査班から所轄に異動したばかり。 「おっかさん」の愛称で呼ばれ面倒見がいい。
所田良介(ところだりょうすけ)
食品会社の顧客管理課長。浮気癖がある。
所田一美(ところだかずみ)
良介の娘。 私立の有名女子高に通い成績も優秀。
今井直子(いまいなおこ)
カラオケ店のアルバイト。 年上男性に憧れ良介と不倫中。
R.P.G. の簡単なあらすじ
所田良介は年下の愛人・今井直子との関係を続けて、さらにはインターネットで見ず知らずの男女と家族ごっこをしています。
所田一美は良介と直子を殺害した揚げ句に、父とネット上でやり取りしていた3人の身元を突き止め危害を加えるつもりです。
武上刑事と石津刑事は面通しと称して一美を呼び出し、代役の警察官をネット家族だと信じた一美は犯行を自供するのでした。
R.P.G. の起承転結
【起】R.P.G. のあらすじ①
都内の食品会社・オリオンフーズに勤める所田良介の遺体が発見された場所は、杉並区内のビニールシートで覆われた建築中の住宅現場です。
所田の遺体には200限定物のパーカー・ミレニアムブルーの繊維が付着していて、同じ証拠品が3日前に渋谷区のカラオケボックス「ジュエル」で殺害された今井直子からも検出されました。
直子は3年前にオリオンフーズで食品モニターのアルバイトをしていて、モニターを募集した開発部の宣伝チームに所田は籍を置いています。
所田は刃渡りが20センチほどの果物ナイフで全身24カ所を刺された出血性のショック、直子はビニールひものようなものを背後から首に巻き付けられて絞殺。
捜査員が所田のノートパソコンを調べたところ、インターネットを通じて「お父さん」というハンドルネームを使って3人の人物とメールでやり取りをしていました。
他のメンバーたちはそれぞれ「お母さん」「カズミ」「ミノル」と呼ばれていましたが、4人の間に血のつながりはありません。
【承】R.P.G. のあらすじ②
所田良介には42歳の妻・春恵と16歳になる娘の一美がいましたが、父親がネットで「家族」を作っていたことを知りません。
今回の事件を担当する警視庁捜査一課のデスク担当・武上悦郎は、一美にマジックミラー越しに容疑者の顔を確認する「面通し」をお願いします。
一美に付き添っているのは杉並署の刑事で、事件以来所田家の周辺のパトロールに当たっている石津ちか子です。
最初に入ってきたのはハンドルネーム「ミノル」の北条稔で東京都八王子市に在住、2番目は「カズミ」の加原律子は会社員の父親と専業主婦の母と3人暮らし、3番目の「お母さん」は都内の電装会社に勤める独身女性の三田佳恵。
武上が3人のプロフィールを読み上げるたびに、一美が素早く携帯電話で誰かにメールを送っていることをちか子は見逃しません。
取り調べが進む中で東高円寺駅から600メートルほど離れたボーリング場のゴミ箱から、血液の付いたミレニアム・ブルーのパーカーが見つかったという報せが届きました。
【転】R.P.G. のあらすじ③
パーカー発見の一報はたちまち取り調べ室にいる面々にも伝わって、みるみるうちに一美の顔色が悪くなっていきます。
今井直子が亡くなった日にミレニアム・ブルーのパーカーを着ていたのは、一美のボーイフレンドの石黒達也という青年です。
ちか子がもうひとりだけ見てほしい証人として取り調べ室に石黒を呼んだ瞬間に、一美はすべてを自供しました。
父親が自分と同じ年頃の女の子とネットで出会って「カズミ」と名前をつけていたのが許せなかったこと、ひそかに尾行してみると父がジュエルで今井直子と密会していた現場を目撃して彼女が「カズミ」だと勘違いしたこと。
日頃から一美に悩み事を打ち明けられていた石黒は一美のことを心配してついてきただけで、今井直子と所田良介の殺害にも直接は手を出していません。
先ほどから一美が盛んに携帯電話でメールを送っていた相手も石黒で、武上が読み上げた「カズミ」「ミノル」「お母さん」の身元を送信してネット家族たちに報復するためです。
【結】R.P.G. のあらすじ④
一美が面通しさせられた「カズミ」「ミノル」「お母さん」はいずれも警察官で、代役の芝居(ロールプレイング・ゲーム)をしていただけです。
もちろん一美がメールで送信した3人の名前や住所に経歴もすべてが架空のもので、未成年者の彼女が罪を償って早めに自由になったとしても永久に「カズミ」のもとへたどり着けません。
所田良介のノートパソコンに一美の指紋が付いていたことから、警察は一美が父親の秘密の遊びを覗き見していたことを早い段階から疑っていました。
一美から自白を引き出すための大掛かりなお芝居を考えたのは、武上でもちか子でもなく中本房夫という巡査部長です。
デスク担当ひと筋で30年以上の経験があるベテランで、武上にとっては尊敬すべき先輩であり親しい飲み友だちでもあります。
今回の計画の発案者であった中本が突然に心筋梗塞で倒れたのは取り調べが始まる2日前のことで、いま現在でも集中治療室に横たわっていて意識がありません。
みんなで演じた一幕の劇は何とか無事に終わり、代役の武上は早く主役が元気に戻ってくることを祈るのでした。
R.P.G. を読んだ読書感想
この本のタイトル「R . P. G.」の3文字を見た瞬間に勇者が魔王を退治するテレビゲームを思い浮かべてしまい、見事に著者のミスリードに引っ掛かってしまいました。
現実の世界であれインターネットのような仮想空間であれ現代に生きる多くの人たちが、集団の中で何らかの役割りを演じていることを考えさせられます。
武上悦郎は劇場型の連続殺人鬼の正体を追い詰める「模倣犯」で、石津ちか子は人体連続発火事件のミステリーに挑む「クロスファイア」で。
宮部みゆきの作品の中でも屈指のベストセラーで大活躍したふたりが披露する、息の合ったコンビプレーは必見です。
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