「仮面の告白」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|三島由紀夫

「仮面の告白」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|三島由紀夫

著者:三島由紀夫 1949年7月に河出書房から出版

仮面の告白の主要登場人物

私(わたし)
この物語の主人公。「私」としてしか語られず、名前などは記されていない。

草野園子(くさのそのこ)
主人公の「私」が恋心を抱く女性で、友人の草野の妹です。「私」が草野の家に遊びに行った時に偶然出会い、以降、急速に親しくなります。

近江(おうみ)
たくましい体と粗暴な態度で級友たちを従えている少年。主人公の「私」は、近江に淡い恋心と性的な憧れを抱きます。

仮面の告白 の簡単なあらすじ

幼いころから少女や女性ではなく、男性に心惹かれる傾向があった主人公の「私。」

宗教画などに描かれる美しい裸体の男性が傷ついている姿を見ると、性的な興奮を覚えてしまいます。

そんな「私」は、美しい少女・園子と出会い、これまで感じたことのないような想いに囚われます。

園子と一緒にいられれば、異常な私も生まれ変われるかもしれないと淡い期待を抱きますが…。

仮面の告白 の起承転結

【起】仮面の告白 のあらすじ①

「私」の性への目覚め

祖母に溺愛されて育った主人公の「私」は、幼いころから体が弱く内気で繊細な子どもでした。

病弱な孫を心配した結果か、同じ年ごろの子どもと遊ぶことも許されず、ほぼ家族としか交流をしないような孤独な幼年期を過ごします。

しかし、「私」は、人知れず心の中に自分だけの世界を持ち始めます。

それは、傷ついた美しい男性への性的な憧れと彼らのようになりたいと願う気持ちです。

「私」がとりわけ性的興味をそそられるのは、汗や泥にまみれた肉体労働の男性や、戦地で負傷してしまった兵士のような美しくもたくましい男性です。

そのような男性の姿を目にすると、「私」はいつも激しい性的興奮を覚えるばかりか、彼らに同化する自分を想像し恍惚とするのでした。

いつしか「私」のそのような想いは、同級生のリーダー的存在の少年・近江への恋心となって現れました。

彼のたくましい肉体に釘付けになる「私」でしたが、病弱でひ弱な自分との違いをまざまざと見せつけられたような気分にもなり、嫉妬の感情の前に恋心はもろくも崩れ去ってしまうのでした。

【承】仮面の告白 のあらすじ②

園子との出会い

男性にしか性的な興味を持てないままでいた「私」は、ある日思いがけない出会いを経験します。

それは、友人の草野の妹で、名を園子という少女との出会いでした。

彼女の聡明で少年のように健康的な美しさに思わず心を奪われ、「私」は初めて女性に恋心を抱くのでした。

園子と「私」はすぐに親しくなりますが、それは好意を寄せあう若い男女のそれとは少し違っていました。

「私」が強く園子を愛し、ずっとこの先一緒にいたいと思っていることは確かでしたが、園子を女性として求めていたのではなかったのです。

その事に気づいても、「私」は園子への想いを募らせていきます。

これまで男性に感じていたような性的な興味や興奮などは全くないものの、「私」は園子を強く求めます。

それは、美しいと思う女性と肉体的な関係を持ちたいという感情ではなく、ただただ一緒にいたい、一緒にいる事によって自分が変わっていけたら良い、というようなとても純粋な気持ちのものでした。

【転】仮面の告白 のあらすじ③

園子と男女の関係になれないと悟った「私」の絶望

園子もまた「私」に惹かれていき、二人の仲は、兄の草野を始め、周りの人々の知るところとなります。

依然として心の中に男性への性的な憧れが捨てきれないでいる主人公の「私」でしたが、ある日ふと気持ちが高まり、園子にキスをしました。

しかし、傷ついた男性の美しい肉体を見た時のような興奮も欲情も得られないことに気付き、愕然とします。

肉体的な欲求はないものの、園子への想いは紛れもなく恋だと思っていた私でしたが、果たしてそのようなことはあり得るのかという疑念が湧きます。

園子への想いはまやかしだったのか、それは自分が異常すぎるからなのか。

「私」は絶望し苦悩します。

いつしか「私」との結婚を望むようになっていた園子でしたが、自分は園子の望むような夫には成れない、彼女と男女として幸せになることはできないと痛感し、苦しんだ末彼女の元を去ることにしました。

やがて、園子は別の男性と結婚し、「私」はますます自分の事を蔑むようになります。

【結】仮面の告白 のあらすじ④

園子との再開と「私」の行く末

自分から選んだことであるというのに、園子との別れに心を引き裂かれ、自暴自棄になる主人公の「私。」

毎晩のように遊び歩いて憂さを晴らそうとしますが、やはり女性では自分の心も身体も反応しません。

ボロボロになりかけていたころ、偶然訪れた園子との再会に救われたような気分になります。

そして、再び園子と会い始めるようになるのですが、彼女はすでに人妻の身です。

世間一般には不倫の関係と非難されても文句も言えないような間柄です。

しかし、園子の間には肉体的な関係はただの一度もありませんでした。

園子自身もそのような関係に疑問を抱き始めます。

「私」は、依然として葛藤の最中にいて、彼女との関係、そして自身のセクシャリティについて答えを出せないでいました。

ある日、いつものように二人で会っていた園子と「私」でしたが、旦那の待つ自宅を心配する姿に「私」の中で何かが生まれ変わりました。

ちょうどその席の近くには若くたくましい男性がおり、「私」はよからぬ妄想を繰り広げていたのです。

「私」は、自分の求めていたものは、幼少期に感じたあの世界にしかないと確信するのでした。

仮面の告白 を読んだ読書感想

三島由紀夫が初めて華々しい成功を収めた長編小説であり、自身の自伝的要素もある小説と言われているのがこの『仮面の告白』です。

幼少の頃からの特異な体験や性的興味を赤裸々に語った、一見スキャンダラスな内容でありながら、主人公が自分の存在や居場所、他者との確かな関係性を切実に求めているようにも見え、読み進めるうちに切なく苦しくなってしまう作品だと思います。

同性愛に対する告白、とだけとらえるのではなく、社会や自分の大切な人ととの関わり方、そして自分自身の在り方などをそれぞれの人が自分の人生に置き換えて読むとさらに胸に深く刺さることでしょう。

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