【ネタバレ有り】人間椅子 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:江戸川乱歩 1925年9月に春陽堂書店から出版
人間椅子の主要登場人物
佳子(よしこ)
本作の主人公。美しい女性作家。外務省書記官の夫がいる。豪邸に住んでおり、どのような手紙であろうと、自分に届いたものは一通り目を通す主義。
私(わたし)
原稿用紙で佳子に手紙を送った人物。世にも醜い容姿をしている男。椅子職人。
女中(じょちゅう)
佳子に手紙を持ってくる人物。
人間椅子 の簡単なあらすじ
美しい女性作家の佳子は、毎朝夫の登庁を見送り、自分の仕事前に彼女あての手紙を読むのが日課でした。
ある日、いつものように手紙を読んでいると、かさ高い原稿用紙に書かれた手紙を見つけます。
小説の原稿かと思ったのですが、表題も署名もなく、突然「奥様」という書き出しから始まるこの手紙は、なんとなく異常な、妙に気味の悪い予感がしました。
それは、椅子の中で生活する、ある醜い男の懺悔でした。
人間椅子 の起承転結
【起】人間椅子 のあらすじ①
女性作家の佳子は、毎朝夫の登庁を見送り、夫と共有の豪邸の書斎で閉じこもり仕事をするのが日課です。
彼女は今、K雑誌の夏の増大号に載せるための長い創作に取り掛かっており、最近では未知の崇拝者からの手紙が大量に届くほどの人気でした。
そして優しい彼女は、自分あての手紙は必ず仕事前に一通り読むことに決めていました。
ある日の朝、かさ高い原稿らしき手紙が届きます。
彼女は表題だけでも見ておこうと封を切ったのですが、それは突然「奥様」という呼びかけの言葉で始まる、長い長い手紙でした。
何気なく二行、三行と目を走らせていくうちに異常な、気味の悪い何かを予感しつつも、持ち前の好奇心が後押しし、ぐんぐんと先を読んでいきました。
その手紙の差出人は数か月間もの間、人間界から姿を消し、悪魔のような生活を続けている醜い容姿の椅子職人だと書かれています。
その男が佳子に聞いてもらわなければならない、と懺悔の手紙を書き、送ってきたのでした。
【承】人間椅子 のあらすじ②
手紙を送ってきた「私」という人物は、生まれつき世にも醜い容姿を持ちながら、胸の中では甘美で贅沢な暮らしを夢見て生きてきた男でした。
もっと豊かな家庭に生まれていれば…もっと才能があれば…という思いを抱えながら、家具職人の子として親譲りの仕事をこなし、その日その日を暮らしていました。
「私」の専門は椅子を作ることであり、どんな難しい注文主も気に入るとのことで、次第に条件の良い仕事が来始めます。
豪華な椅子を作っては一番に腰掛け、どんな素敵な人が使うのだろう、どんな贅沢な豪邸に使われるのだろう、と妄想しては楽しんでいました。
そして、この妄想はどんどん増幅し、現実に戻ると言いようのない虚無感に襲われるようになっていきます。
「こんなうじ虫のような生活を続けるなら、死んだほうがましだ」とさえ思うようになっていきました。
しかし、死んでしまうくらいならもっといい方法がないだろうか、とだんだん恐ろしい方向に考えるようになりました。
【転】人間椅子 のあらすじ③
「私」が思い悩んでいたちょうどその頃、外人の経営するホテルへおさめる椅子を作るという、大きな仕事がありました。
「私」はその椅子を作るために寝食も忘れ、没頭し、出来上がった椅子を見てかつて感じたことのない満足を感じました。
この丹精こめた美しい椅子と一緒に、どこまでもついて行きたい、そう思い、椅子の中に椅子の形に座ればぴったり入れるスペースを作り、「私」は中に潜り込みました。
最初の目的は、人のいなくなったホテルで盗みを働き、裕福になることだったのですが、ホテルのラウンジに置かれたこの椅子に人が座り、初めてそのぬくもりを感じた瞬間、この不思議な感触の世界に溺れていったのです。
「私」のように醜く、気の弱い男が絶対に口を利くことのできない美しい人に接近し、声を聞いたり肌に触れることのできる、椅子の中の恋に夢中になっていきました。
世界的な詩人として知られているとある国の大使館や、有名なダンサーが「私」の椅子に座り、その肌を感じたときは誇らしくも感じたのでした。
【結】人間椅子 のあらすじ④
では、なぜ佳子に手紙を書き、何を懺悔したいのでしょうか。
手紙を読み進めると、その理由がわかり始めました。
「私」が居座り続けていたホテルの経営者が変わり、居抜きのまま日本人の会社に譲り渡し、一般的な旅館経営をすることになりました。
そのため、雰囲気に合わない家具などは大手の家具屋で競売にかけられることになり、その中に「私」の椅子が加わっていたのです。
数か月の間、椅子の中で恋をし続けていた「私」でしたが、相手がすべて外国人だったため、肉体は好みでも精神的な物足りなさを感じていました。
やはり日本人は日本人相手でないと本当の恋を感じることができないのではないか、そう考えていた矢先だったので、もしかすると日本人に買い取られるかもしれない、と希望を抱いていました。
すぐに買い手がついた「私」の椅子は、とある豪邸の書斎に置かれることになりました。
「私」はずっと豪邸の夫人とともに過ごし、深く愛し、できることなら自分を認識し、愛してほしいと思うようになりました。
そしてその夫人というのが、佳子のことだったのです。
「私」は昨夜、手紙を書くために椅子から抜け出し、佳子に会うために豪邸の周りをうろついている、もし会ってくれるなら、書斎の窓の鉢植えにハンカチをかけてくださいと締められていました。
佳子は気味が悪くなり、身震いしていると一人の女中が「奥様、お手紙でございます」と今届いた手紙を持ってきのです。
震える手で開封すると、「私」の手紙と同じ字で「私は日頃、先生の作品を愛読しているものです。
別封で送ったのは私の拙い創作です。
いかがだったでしょうか。
表題は人間椅子、とつけたい考えです。」
と書いてあるのでした。
人間椅子 を読んだ読書感想
人間椅子は登場人物も少なく、手紙を読み進めていくというシンプルな構成なのですが、さすが江戸川乱歩!と言いたくなる気持ち悪さ全開のお話です。
読み終えて、ああ、なんだ、創作だったのか…とも思えない、なんとも言えない感覚に襲われます。
手紙の内容が妙にリアルで、結局、本当に椅子の中に人が入っていたのか、ファンの作った創作話だったのか…他に読んだ人と一緒に議論したくなりますよ。
他の江戸川乱歩作品に比べ、言葉もわかりやすく、読みやすい作品です。
映像化もされているので、小説が面白かった!と感じた方は是非そちらも見てみてくださいね。
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