「返事はあした」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|田辺聖子

「返事はあした」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|田辺聖子

【ネタバレ有り】返事はあした のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:田辺聖子 1985年9月に集英社から出版

返事はあしたの主要登場人物

江本留々(えもと るる)
大阪の名の知れた会社でOLをする二十四歳。恋に仕事に邁進しているが、恋人の孝夫からは結婚のけの字も出ず、じれじれしている。他の男から言い寄られることも多く、それなりに楽しんではいるが、本命の孝夫には弱く、核心に迫ることは出来ない。

蒲原孝夫(かんばら たかお)
天草四郎を彷彿とさせる美形なので、ルルたちから「シロちゃん」とあだ名をつけられる。落語が好きで、淡泊な性格だが、落語が絡むと饒舌になる。ルルと仲良くしておきながら別に本命の彼女がいたが、煮え切らない孝夫に愛想を尽かして振られる。その後ルルと復縁した。

村山くん(むらやまくん)
ルルと年齢が近い男性社員。独身で、料理が趣味。実家は兵庫の山奥で、大学から一人大阪暮らしのため家事炊事が得意。ルルとは「うどん仲間」で、村山の水のようにくせがない性格は、癒しでもある。

前沢たまみ(まえざわ たまみ)
ルルと村山と同じ会社の女性社員。ほっそりした美人の東京出身者で、男性社員からの人気も高い。内緒で村山と付き合っている。

高松泰蔵(たかまつ たいぞう)
ルルと同い年の男性社員。東京・千代田区出身。すらりとした長い脚に顔立ちのはっきりとした風貌で、さばさばした性格で女性社員から人気がある。

返事はあした の簡単なあらすじ

大阪の名の知れた会社でOLをする二十四歳の江本留々は、恋に仕事に邁進する日々を送っています。天草四郎を彷彿とさせる陰のある美青年の孝夫と落語を通じて懇意になりますが、しばらくして孝夫が二股をかけていることが発覚し破局。一年後に復縁しますが、その後も孝夫からは結婚のけの字も出ず、煮え切らない態度にジリジリするルル。そんな中、友人や会社の先輩が次々に結婚していき、二十五歳の誕生日も迎え、いよいよ結婚を意識するルルでしたが……。

返事はあした の起承転結

【起】返事はあした のあらすじ①

憎みつつ

大阪の名の知れた会社でOLをする二十四歳の江本留々は、趣味の落語を通じて二十六歳のサラリーマンの蒲原孝夫と知り合います。

孝夫は天草四郎を彷彿とさせる美形で、女友達とこっそり「シロちゃん」とあだ名をつけて楽しんでいました。

ある日落語の帰りに孝夫から声をかけられたのをきっかけに仲良くなり、すっかり懇意の仲になりますが、一か月ほど連絡が途絶え、様子を窺いに孝夫の下宿先まで出向くと、そこには別の女性と楽しむ孝夫の姿がありました。

後から聞いた話では、相手は孝夫の会社の女性で、ルルと知り合う前から付き合っていたらしいのです。

ルルはショックのあまり目の前が暗くなり、以来孝夫からの連絡を無視し続ていました。

落語にもすっかり行かなくなり、孝夫と接点もなくなっていた時、「シロちゃん」と一緒に呼び合っていた女友達から、孝夫と会ったと報告を受けます。

ルルに会いたがっていたと言われ、口では毒づきながら揺れ動くルル。

その後孝夫本人から連絡があり、落語のテープをルルに渡したいと言います。

未練はないから大丈夫だと自分に言い訳して約束の喫茶店に向かったルルでしたが、いざ孝夫を前にすると、より一層魅力が増して見え、胸がときめきます。

ぽつりぽつり言葉を交わし、店を出るころには、元通りになってしまった二人ですが、ルルは内心『おぼえてなさい、いまに、あたしが受けたのと同じショックを与えたげるから』と穏やかではありません。

憎みつつ愛している本音を隠しながら、孝夫の指を握るのでした。

【承】返事はあした のあらすじ②

恋する二十四歳

なし崩し的によりを戻したルルと孝夫でしたが、復縁しても尚、ルルの頭の片隅には、孝夫の浮気現場の残像が消えません。

相手の女性は、許婚と結婚するとかで田舎にひっこんで二人は別れたと聞きましたが、ルルは、二股中に孝夫が自分を値踏みするような醒めた目つきでじーとみていたことをありありと思い出せます。

それでも一緒にいるのは、やはり愛しているからなのですが、当の孝夫は、好きな落語以外は淡泊で、ルルとの未来を考えている節もありません。

いまいち噛み合ない二人です。

孝夫との関係にもんもんと悩みながらも、ルルはそれなりに充実した毎日を送っています。

同じ会社で年齢の近い村山くんと、美味しいうどんを食べに行ったり、女性の先輩たちとお酒を飲んだり、お気に入りの食事処で一人季節のお料理と日本酒を楽しんだり。

孝夫以外にも言い寄ってくる男性は結構いて、そういう相手ならば口軽くいなしたり、相手が喜ぶようなことを言ってその場を楽しんだりすることができるルルなのですが、孝夫が相手になると、途端に恋する乙女になって、自分の欲求を優先してしまうのでした。

【転】返事はあした のあらすじ③

分岐点

ルルは二十五歳になりました。

女も二十五歳となると、将来について真剣に考え始める年齢で、ルルも例外ではありません。

女友達は次々に結婚していき、シングルを楽しんでいた会社の先輩も、年下の相手と結婚を決めました。

キャリアウーマンになるほど専門技術があるわけじゃなく、独り立ちするほど自活能力もなく、恋人の孝夫は煮え切らず。

ルルはいよいよ焦り出します。

ある日、孝夫は住んでいた下宿先から安アパートに引っ越すことになり、孝夫から手伝いを頼まれたルルは嬉々として孝夫のもとへ駆け付けます。

ルルは掃除やら家具の整頓をしていると、だんだんこれは二人の新居で、これから同棲を始める錯覚を覚えます。

片付けに追われ、腹が減ったと嘆く孝夫の為に、近所まで総菜やらを買い出しに行き、卓袱台もない部屋で二人、宴をはじめます。

ルルは安アパート暮らしでも孝夫がいれば毎日楽しいだろうと想像し、孝夫もルルの働きぶりに感謝を示します。

気分良く落語の話を始めた孝夫にルルが、女より落語が好きなんじゃないと冗談で言うと、孝夫はちょっと黙り、三十歳までは一人で趣味を楽しんでいたいと言い放ちます。

まだ結婚する気はないし、子供も要らないという孝夫。

そして『ルルが時々、泊まりに来てくれれば、いうことなし』と、それまでルルが思い描いていた未来とは、程遠いことを口にします。

そんなことに付き合ってられないと返すルルに孝夫は、『そんならしょうがないな。

ええ人みつけて幸福になって下さい』と突き放します。

【結】返事はあした のあらすじ④

返事はあした

孝夫の独身宣言を受けて、ルルは一人なんとなしに自分の将来について考えこむようになっていました。

以前より口数が減ったルルを心配して、同僚の村山くんがルルをご飯に誘います。

新鮮な松茸が手に入ったから手料理をふるまいたいと言うのです。

ルルの他にも後輩の高松くんを誘い、三人で食卓を囲むはずでしたが、急遽高松くんは仕事が入り、ルルは一人で村山くんの家にお邪魔することになります。

異性の部屋で二人きりの状況ですが、村山くんは水みたいな男なので安心です。

村山くんが作る松茸料理に舌鼓を打ち、塞ぎ込んでいたルルの顔に笑顔が戻ります。

そんなルルを見て、村山くんも嬉しそうな顔をみせます。

村山くんは最近まで、総務の前沢たまみと付き合っていたのですが、東京人のたまみと食の好みが合わず破局していました。

ココロとココロの結びつきは味覚が一致してこそだとルルと村山くんは認め合います。

ルルは村山くんから手料理をごちそうになって、自分も孝夫に手料理をふるまいたいと考えます。

アパートに遊びに行き、それを孝夫に提案しますが、そんなもの必要ないと取り付く島もありません。

世帯臭い手料理なんかよりマクドナルドの方が良いと断言する孝夫。

数日経ち、村山くんが会社を休み、田舎へ帰っていると高松くんから聞かされます。

急遽田舎の実家を継ぐことになり、お見合をしているらしいのです。

めらめらとルルの中に嫉妬心が芽生えます。

会社に出てきた村山くんを捕まえて問い詰めると、今回のお見合いは断られたらしく、ルルはほっとします。

ご飯を食べながら、村山くんの村おこし計画を聞いているうちに、ルルにも村山くんの熱意が伝染し、気が付くと、次の見合い相手に立候補していました。

冗談だと思い、真剣に取り合わない村山くん。

ルル自身驚いていたので無理はありません。

村山くんへのアプローチ後、孝夫とデートしていたルルは、今まで抱かなかった感情をもって孝夫を見ていました。

それまでは恋愛感情だけで突っ走ってきたのが今、理性が追いつき、孝夫という男を冷静に見極めていました。

別れを切り出すルルに孝夫は、一方的だけどしょうがない。

自分は悪いことした覚えないのに、ごちゃごちゃ理由つけられても困るしと言い、他の男と結婚するのかと聞いてきます。

そんなこと言う必要ないでしょと言って、孝夫の前を行くルルを孝夫は慌てて追ってきます。

追いすがる孝夫にルルは『返事はあしたするわ』と婉曲に拒絶します。

翌朝、通勤中に村山くんと一緒になります。

高松くんと元カノのたまみが婚約したらしいと話ながら、ルルの機嫌を取りつつ、見合い申込を真剣に考えて欲しいなあと打診してきます。

ルルの心はすでに決まっているのです。

返事はあした を読んだ読書感想

結婚適齢期になり、恋愛に人生に揺れ動く乙女ごごろを緻密に描く『返事はあした』をご紹介しました。

女性がクリスマスケーキに例えられていた時代の恋愛小説ですが、古くささは感じない一冊です。

孝夫に別れを切り出すシーンは、切ないながら、胸がすっとします。

コメント