「町長選挙」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|奥田英朗

「町長選挙」

【ネタバレ有り】町長選挙 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:奥田英朗 2006年4月に文藝春秋から出版

町長選挙の主要登場人物

伊良部 一郎(いらぶ いちろう)

精神科医で、父親が医師会の理事。三十代だが肥満で清潔感がない見た目と図々しい性格で難ありな人物。注射フェチ。

マユミ(まゆみ)

伊良部の元で働く若く美人な看護師。愛想はないが、露出の高い服装をしているので男性患者からは受けがいい。

安保貴明(あんぽ たかあき)

東大卒の三十二歳、IT企業「ライブファスト」社長。大学時代に起業し、企業買収を重ね成長を続け、現在ではIT業界のみならず、経済界全体から注目を集めるまでに。「あんぽんまん」と呼ばれ、メディアでも連日引っ張りだこだが、若年性アルツハイマーになり、文字が出てこなくなり、日常で支障をきたすように。

美由紀(みゆき)

貴明の優秀な美人秘書。平仮名が書けない貴明を心配し、伊良部のもとへ通院させる。

町長選挙 の簡単なあらすじ

IT企業「ライブファスト」社長の安保貴明は、東京大学の学生時に起業し、その後企業買収を重ね、会社を急成長させました。現在ではIT業界のみならず、経済界全体からも注目を集める存在になり、ビジネス誌の表紙を飾るまでに。プロ野球チームの買収に名乗りを上げてからは連日メディアに追いかけ回され、貴明の「アンポンマン」というニックネームは小学生にまで浸透していました。名声と冨を手に入れ、順風満帆な日々を送る貴明でしたが、近頃文字が浮かばなくなってきました。名称が出てこなくなったり日常にも影響が出始め、そんな貴明を心配した秘書が、伊良部総合病院の神経科に予約を入れます。

町長選挙 の起承転結

【起】町長選挙 のあらすじ①

アンポンマン

IT企業「ライブファスト」社長の安保貴明は、東京大学の学生時に起業し、その後企業買収を重ね、会社を急成長させました。

現在ではIT業界のみならず、経済界全体からも注目を集める存在になり、ビジネス誌の表紙を飾るまでに。

プロ野球チームの買収に名乗りを上げてからは連日メディアに追いかけ回され、貴明の「アンポンマン」というニックネームは小学生にまで浸透していました。

貴明の歯に衣着せぬ発言と、Tシャツにジーンズというラフな服装は、若者からカリスマ経営者と支持を受ける一方、年配者からは生意気な若造と非難されることが多く、元来目立ちたがり屋の貴明にとって賛否両論巻き起こすほどの存在になったのだとそれもまた喜ばしいことでした。

名声と冨を手に入れ、順風満帆な日々を送る貴明でしたが、近頃文字が浮かばなくなってきました。

名称が出てこなくなったり日常にも影響が出始め、そんな貴明を心配した秘書が、伊良部総合病院の神経科に予約を入れます。

合理主義で漢字や平仮名が書けなくても、パソコン一つあれば何の問題もないと思っている貴明にとって、通院など時間の無駄でしたが、秘書からの必死の頼みで、渋々伊良部のもとを受診したのでした。

【承】町長選挙 のあらすじ②

エネルギーの最小化

伊良部と対面した貴明は、医者らしからぬ風貌と子供のような物言いをする伊良部に拍子抜けします。

医者相手でさえ、言い負かそうと目論んでいた貴明でしたが、金持ち自慢をして貴明と張り合おうとしたり、ニックネームの「アンポンマン」を「アンポンタン」と言い間違える伊良部にイライラするものの、最近では怒るのもエネルギーの無駄だと考えている貴明は、すぐに気を取り直して、早々に診察室を出ようとします。

無理やり引き留められ、伊良部から若年性アルツハイマーと診断を下されます。

そして、なんの説明もなしに注射を打とうとする伊良部とセクシーな看護師のマユミを前に、医者の義務や患者の権利を主張始めた貴明。

黙って注射を打たれようとしないその様子に、二人は力づくで押さえつけ、無理やり針を打ちます。

予想外の出来事に慌てる貴明でしたが、注射を終えて気が済んだ伊良部は、用済みとばかりに診察を終わらせます。

納得がいかない貴明でしたが、いつまでも伊良部相手に時間をとるのは人生の無駄だと考え、診察室を後にしました。

翌日、テレビの討論番組のゲストに呼ばれた貴明は、そこで放送記者あがりの初老の司会者と意見をぶつけ合います。

刺激的な発言をする貴明に、司会者は机をバンバン叩いたりパフォーマンスを交えながら応戦します。

番組が終盤にさしかかり、今日のまとめとして、一言求められた貴明はボートとサインペンを渡されます。

『時代は変わる』と書き記そうとする貴明でしたが、「る」の文字が出てきません。

仕方なく『時代は変わRU』と不完全なまま発表したところ、ふざけた態度をとっていると思われ、さらに司会者はヒートアップしてしまいます。

番組終了後、打ち解けた様子で貴明の側に寄って来た初老の司会者が声をかけてきます。

常に冷静な貴明に、『もうちょっと怒ってくれてもいいんだけど』と本音を吐露します。

貴明は、怒るなんてエネルギーの無駄だと言い返します。

生産性のないことはしたくないと合理的な貴明は、ここ数年、部下に注意はしても、怒ったことはないことに気が付きます。

【転】町長選挙 のあらすじ③

アンパンマン平仮名かるた

討論番組の収録を終え、平仮名失念の失態を心配した秘書から、伊良部総合病院の神経科通院をスケジュールに組み込まれてしまった貴明は、渋々伊良部のもとへ訪れます。

貴明が出演した討論番組を観ていた伊良部は気味悪い笑顔を浮かべながら、貴明が文字を書く前に咄嗟にキーボード打ちをしていたことを指摘します。

パソコンのやり過ぎで、平仮名がローマ字入力になっているというのです。

手柄を褒めてほしそうな伊良部を前に、貴明はだからどうしたと反論します。

貴明は、筆記はいづれ衰退すると主張します。

今や、ビジネス文書はすべてワープロで、事務処理もパソコンがあればすべてまかなえる時代に、手書きの必要性などほとんどないと断言します。

相手とコミュニケーションがとれているのだから、平仮名が書けない事態に陥ってもなんら問題もないと結論付け、診察室を出ようとしたところを、看護師のマユミにつかまり、また無理やり注射を打たれます。

これはショック療法で治療の一種だと説明をされ、性能が良すぎるレーシングカーで公道を走るのは危険だよとアドバイスを受けます。

後日、件の討論番組に出演し、例のごとく総括を求められた貴明。

自身のラジオ局の株の買付が騒動となり、それに対し『騒ぎ過ぎ』と書くところを、またも文字が出てきません。

仕方なく『騒GI杉』と書くと、おちょくるのもいい加減にしろと罵倒が飛んできます。

伊良部のもとへ出向くと、今日は平仮名の勉強のために裏にある幼稚園に出張に行くと言われます。

冗談かと思いますが、着いた先は本当に幼稚園です。

有名人を前に色めき立つ保育士たち。

伊良部は自慢げです。

沸き立つ保育士に機嫌を良くした貴明は、園児たちに混ざり、アンパンマン平仮名かるたに参加します。

読み上げられる札を必死に取ろうとするも、肝心の文字が浮かんできません。

悩んでいる間にあっという間に園児や伊良部に取られてしまいました。

【結】町長選挙 のあらすじ④

協調路線

一枚も札を取れなかった貴明を園児は、散々こき下ろします。

子供相手とはわかっていても、下に見られることが許せない貴明はカーっと頭に血が上ります。

一方、ライブファストのラジオ局買付は国会を巻き込む論争にまで発展していました。

予想以上の逆風に、貴明も強気一辺倒ではいかなくなってきました。

報道陣に追いかけ回されながら、伊良部とともに、裏の幼稚園へ向かいます。

貴明は前回のリベンジに燃えていました。

今度は幼稚園事業に手を伸ばすのかと園外で報道陣が騒ぐ中、アンパンマン平仮名かるたが始まります。

予習の甲斐あって、次々に札を取っていく貴明。

やはり勝つのは気持ちが良いです。

伊良部が悔しそうに貴明を睨みます。

園児そっちのけで、熱戦を繰り広げる二人でしたが、貴明の頭を看護師のマユミがはたきます。

子供相手に何をしているのかと叱責され、『一人で勝っていると遊び相手がいなくなるよ』とまた頭をコンと叩かれました。

その言葉を反芻する貴明。

肩の力が抜けていくのがわかりました。

かるたを終え、外で待っている報道陣の前に立った貴明。

ちょうど裁判所の判決が出て、貴明が勝訴したことが判明しました。

挑むような目を向けてくる記者たちに、貴明は、当然の結果だと強気な発言をします。

しかし、先ほどのマユミの言葉が頭をよぎり、これまでしてきた無礼な態度を詫びてから、これからは協力者として力を貸して欲しいと深々と頭を垂れます。

予想外の貴明の行動に、重鎮たちは態度を軟化させます。

討論番組に出演した貴明は、『きょうちょうろせん』と書き記し、呆気にとられる司会者を前に『最近平仮名に凝っていて。

やっとスラスラかけるようになったから』と答えます。

町長選挙 を読んだ読書感想

伊良部シリーズ三作目の『町長選挙』は、当時時の人になった人にスポットを当てて書かれています。

今回ご紹介した『アンポンマン』は、ライブドア社長だった堀江貴文氏をモチーフに書かれた作品というのがありありとわかるようになっています。

これを読むと、別人でもホリエモンが愛らしく見えてくるので不思議です。

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