「眠りの森」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|東野圭吾

「眠りの森」

【ネタバレ有り】眠りの森 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:東野圭吾 1989年5月に講談社から出版

眠りの森の主要登場人物

加賀恭一郎(かがきょういちろう)
事件を担当する若い刑事。一度目にしたことのある未緒が気になっている。

浅岡未緒(あさおかみお)
高柳バレエ団に所属するバレエダンサー。

梶田康成(かじたやすなり)
高柳バレエ団を演出、振り付け、バレエマスターとして作り手側からすべてを支える人物。

眠りの森 の簡単なあらすじ

高柳バレエ団の事務所に侵入した男が、所属ダンサーに花瓶で頭を殴られ死亡しました。当初は正当防衛と思われましたが、男がなぜバレエ団に侵入したのか全くの謎で、捜査が難航します。そんな中、バレエ団すべてを指揮する梶田が毒物により殺害されます。事件捜査に関わる若い刑事、加賀恭一郎はバレエ団のダンサー浅岡未緒の事が気になり捜査をする中で少しずつ距離を詰めていきます。人が殺されているのに何故か完全には協力的ではないバレエ団の一同。何か隠し事があるのではないかと疑いの目が向けられます。加賀のひらめきで事件が解決に向かうとき、意外な真実とが浮かび上がってきました。

眠りの森 の起承転結

【起】眠りの森 のあらすじ①

二つの事件

高柳バレエ団の事務所に男が侵入し、当時一人で事務所に居た斎藤葉瑠子は咄嗟に殴り殺してしまいます。

正当防衛として勾留され、すぐに釈放されるものと考えられていましたが、物取りでもなくバレエ団に何の接点もなく、被害者の目的がはっきりしないために、完全には正当防衛と決めることができません。

捜査を担当する加賀恭一郎は以前にこのバレエ団を観劇したことがあり、その時目を奪われたダンサー浅岡未緒と知り合うことになります。

彼女は容疑者である葉瑠子と幼馴染で、心を病む彼女の力になろうと事件解決に気合を入れて望みます。

加賀の調査で、被害者とバレエ団の薄いつながりが見つかります。

被害者は2年前にニューヨークに滞在していました。

高柳バレエ団にもニューヨークに留学させる制度があり、当時被害者が住んでいた場所と留学先が近い場所にあるというものでした。

それでも海外であるということと二年も前ということで捜査はなかなか前に進まないでいました。

そんな時、本公演に向けて練習していた高柳バレエ団で再び事件が起こります。

練習中に指示を飛ばしていたバレエ・マスターである梶田が突然静かになり、みんなが駆け寄ると既に亡くなっていました。

背中に注射針で刺されたような傷があり、毒物による中毒死であると判断されました。

【承】眠りの森 のあらすじ②

ひらめき

バレエ団の中の人間が殺されたことで、前回の事件と今回の事件に何かつながりがあるのか警察はさらなる捜査を迫られます。

梶田を殺した毒物は着ていたジャケットの裏地に仕込まれた毒針のようなもので背もたれに体重をかけることで発動する仕掛けになっていたのではないかと予想されますが、警察が駆けつけたころには既に処分されていました。

練習中に殺され、証拠が処分されていたことで明らかに団内に犯人が居ることが明らかになり、メンバーの柳生は警察には任せておけないと自分で調査を始めます。

しかし動きを見せた柳生が毒物を飲まされ病院に運ばれてしまいます。

今度は致死量に及ばなかったために一命は取り留めました。

柳生が調べようとしていたことが犯人に都合の悪いことだった可能性が高まり、意識の回復を待って本人に聞き取り行いますが、まだそれほど調査を行ったわけではなく、犯人がなぜ柳生を狙う必要があったのかもまた別の謎となってしまいます。

梶田の葬儀の帰り、加賀が参列者に目を配っていると未緒が路地裏に佇み、おかしな様子で居るところに遭遇します。

公園に連れて行ってと頼まれた加賀はタクシーを拾い、落ち着くまでその公園で二人で居ることにしました。

以前から貧血のような症状が起こることがあり、加賀に迷惑をかけてしまったと未緒は謝ります。

公園からの帰り道、女子中学生が軟式テニスをしているのを見かけた加賀は、その空気入れが注射針の代わりになりうる可能性に気づきました。

【転】眠りの森 のあらすじ③

真実への扉

バレエ団で軟式テニスに縁のある者を調査していると、森井靖子の名前が浮上してきます。

さっそく連絡を取ろうとすると昨日から体調不良でバレエ団に来ていないと言われ、何か嫌な予感がする刑事たちは自宅に急行します。

駆けつけた時は既に遅く、大量の睡眠薬を服用し亡くなっていました。

部屋に隠されていた毒針も発見され、梶田を殺した犯人であることはほぼ確実とみられました。

森井靖子は四年前に劇団のトップダンサーである高柳亜希子と二人でニューヨークに留学経験があり、二年前に行っていた風間とは時期が違いますがそこに何かきっかけがあるのではないかと再びニューヨークに注目が集まります。

そして四年前ニューヨークにいたある日本人男性が風間と友人だったという人間関係がついに浮かび上がってきます。

男が靖子と恋人関係になり、梶田に引き離されたことが恨みの原因ではないかと予想されますが、四年も経った今なぜ復讐が行われたのか、どうしても完全な事件の全体像が見えてきません。

何かが違っている、加賀が思索にふけっているとふとしたきっかけからついに真相にたどり着くことに成功します。

【結】眠りの森 のあらすじ④

犯人と刑事

実はニューヨークで男と恋に落ちたのは靖子ではなくトップダンサーである高柳亜希子の方でした。

梶田の指示でトップである亜希子を守るために靖子だということにしていました。

靖子は自分が人身御供のような扱いをされていた事を風間がやってきたことで初めて知り、梶田への恨みが爆発し犯行に及んだのでした。

男の友人である風間は絶望の淵にいる男のためにニューヨークに会いに行ってくれないかと亜希子に頼みにバレエ団にやってきたのでした。

交渉は決裂し、怒る風間と取っ組み合いになってしまいます。

その時たまたま事務所にやってきた女性が風間の頭に花瓶を振り下ろしました。

それは容疑者として勾留された葉瑠子ではなく、未緒でした。

もちろん未緒は正当防衛として警察に出頭するつもりでしたが事情がありました。

葉瑠子の運転ミスで起こした事故により、未緒の耳は少しずつ聞こえなくなってきていて、次の公演が最後になるのではないかと予想されていたのです。

自分が道を閉ざした未緒の最後の舞台まで奪うわけにはいかないと葉瑠子が身代わりを申し出て、自ら警察に勾留されていたのでした。

未緒は最後の舞台を無事踊りきります。

舞台のあと加賀と二人になった未緒は自分を逮捕してくれと加賀に頼みます。

加賀は刑事という立場ながら未緒を愛し、耳のこともわかった上で彼女を守っていくことを誓うのでした。

眠りの森 を読んだ読書感想

東野圭吾の代表的なシリーズキャラクターとなっていく加賀恭一郎の恋の物語という側面ももった作品です。

まだ若さを感じる加賀が事件に向き合う様子や、恋に落ちる姿など、初々しい姿をみることができます。

この作品は未緒の一人称のパートも含まれているため、犯人であるはずがないと読者に思わせる仕掛け、いわゆる叙述トリックで描写されている部分があり、本当は犯人であったとわかった上でもう一度読むとまた別の味わいがある話になっています。

刑事が犯罪者に恋をしてはまずいから犯人のはずがないだろうという考えることがうまく真実を隠していてよくできた構成だなと思いました。

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