「犬と笛」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|芥川龍之介

「犬と笛」

【ネタバレ有り】犬と笛 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:芥川龍之介 2016年7月に青空文庫PODから出版

犬と笛の主要登場人物

髪長彦(かみながひこ)
主人公。職業は木こり。笛を吹くのが得意。

足一つの神(あしひとつのかみ)
ふたりの弟たちと葛城山を守る神様。

飛鳥の大臣(あすかのおおきみ)
都を支配する豪族。

駒姫(こまひめ)
飛鳥の大臣の長女。

笠姫(かさひめ)
駒姫の妹。

犬と笛 の簡単なあらすじ

木こりとして働いていた髪長彦は笛の名手としても有名で、ある時に葛城山を守る3人の神様から授かったのは不思議な力を秘めた3本の犬です。犬たちの助けもあって怪物の囚われの身となっていたふたりのお姫さまを救出しますが、通りすがりの侍に手柄を奪われそうになってしまいます。姫たちが機転を利かせたおかげで髪長彦の話は証明されて、たくさんの宝物とふたりの姫の内の片方を妻とするのでした。

犬と笛 の起承転結

【起】犬と笛 のあらすじ①

髪長彦と山を守る3兄弟との巡り合い

髪の毛が長く女性のような顔立ちをしていることから髪長彦と呼ばれる青年が、大和(現在の奈良県)の葛城山の麓で暮らしていました。

山へ登って木材を伐採するのが髪長彦の職業でしたが、仕事がひと段落すると木陰に腰を下ろして笛を吹くことを楽しみにしています。

その笛の音色の美しさに魅せられたのが、葛城山の守り神である3人兄弟です。

長男の足一つの神はどんな遠くにある物や人でも見つけることができる「嗅げ」という犬を、次男の手一つの神はどんな離れた場所にも瞬時にたどり着いてしまう「飛べ」という犬を、末っ子の目一つの神はどんな強敵にも負けない「噛め」という犬を。

笛のお礼として受け取った3匹の犬を連れて帰る途中で、髪長彦は若い侍から飛鳥の大臣のふたりの娘が行方不明になったことを聞きました。

髪長彦が嗅げに話しかけると、たちまちお姫様の姉の方の居場所が判明します。

生駒山の洞穴に囚われているようで、そこに待ち構えているのは凶悪な食人鬼です。

【承】犬と笛 のあらすじ②

ふたりの姫の救出に一役買う3匹の犬

髪長彦を乗せた飛べはたちまち山の中腹にある穴の中へと到着して、金色の髪飾りをしたお姫様を発見しました。

傍らにはお酒を飲んで眠り込んでいる食人鬼がいましたが、噛めによって首を食いちぎられてしまいます。

姉の名前は駒姫と名乗り髪長彦に感謝しますが、離ればなれになってしまった妹のことを心配しているようです。

嗅げはもうひとりのお姫様が監禁されている場所を即座に導き出し、飛べに乗った髪長彦たちは笠置山へと向かいました。

笠置山の洞穴にはその昔神武天皇によって懲らしめられた、大変に悪知恵の働く土蜘蛛が住んでいます。

土蜘蛛は髪長彦の一向を穴の奥深くへと誘いこんだ後に、入り口を巨大な岩石で覆って閉じこめてしまうつもりです。

念願の再会を果たして涙を流しながら抱き合う駒姫と妹の笠姫でしたが、一刻も早くここから脱出しなければなりません。

穴の外で聞き耳を立てている土蜘蛛に向かって、髪長彦は懐から取り出した笛を吹き始めます。

【転】犬と笛 のあらすじ③

手柄を横取りする侍

髪長彦が奏でる笛のメロディーの余りの美しさには、さすがの土蜘蛛もすっかり夢中になって聞き入ってしまいました。

もっと近い場所で聞こえるようにと入り口の岩を動かした途端に、襲いかかってきた噛めに殺されてしまいます。

後は駒姫と笠姫を飛べに乗せて、娘たちとの対面をお屋敷で待ちわびている飛鳥の大臣がいる都まで帰るだけです。

ふたりの姫と一緒に都へ向かっている途中で、いつかの若い侍と鉢合わせをしました。

手柄を挙げるために躍起になっていた侍は、髪長彦にあっさりと出し抜かれてしまったことが悔しくて仕方ありません。

生まれながらにしてお人よしな性格の髪長彦は、侍から尋ねられるままにこれまでの経緯を打ち明けてしまいます。

山の守り神から3匹の犬をもらったこと、生駒山では食人鬼を退治して駒姫を助け出したこと、笠置山では土蜘蛛をやり込めて笠姫を奪還したこと。

侍は髪長彦から笛を奪って、飛べに乗って姫たちを連れて消えてしまいました。

【結】犬と笛 のあらすじ④

髪飾りによって白日の下にさらされる真実

ひとり取り残された髪長彦が成す術もなく立ち尽くしていると、生駒山の方角から駒姫のささやきが聞こえてきました。

さらには笠置山の方向から笠姫のささやきも聞こえてきて、大切な笛をすぐに取り返してくれます。

笛を吹いて3匹の犬と共に飛鳥の大臣の屋敷に乗り込みますが、既に侍は自分がふたりの姫を救出したと言い張るばかりです。

飛鳥の大臣は真っ向から食い違う両者の言い分の真相を明らかにするべく、娘たちに問いただします。

こんなこともあろうかと駒姫はひそかに金色の髪飾りを、笠姫は銀色の髪飾りを髪長彦の髪の中に隠しておきました。

姫たちの合図とともに、髪長彦の頭の上ではふたつの髪飾りがそれぞれ金と銀の光を放ち始めて目がくらむ程です。

うなり声を上げる噛めを目の前にして、ようやく観念した侍は大臣の前で命乞いをします。

髪長彦は山ほどの金銀財宝を手渡されて飛鳥の大臣から娘との結婚を許されましたが、駒姫と笠姫のどちらを妻としたかまでは伝わっていません。

犬と笛 を読んだ読書感想

ひと度笛を吹いた途端に鳥や獣までもが集まってきてしまう髪長彦には、グリム童話のハーメルンの笛吹き男を思い出してしまいました。

好きなものを何でももらえるチャンスにも関わらず、犬を申し出る謙虚さにも好感が持てます。

ふたりのお姫さまを巡って繰り広げられる冒険の数々と、立ちはだかる2体の怪物との対決シーンも迫力満点です。

手柄を横取りされそうになってしまう終盤のひと波乱も、髪長彦のキャラクターもあって不思議と憎めません。

甲乙つけがたい駒姫と笠姫のうち、どちらと結婚したにしろ良き夫として幸せな家庭を築き上げたことでしょう。

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