【ネタバレ有り】スウィート・ヒアアフター のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:よしもとばなな 2011年11月に幻冬舎から出版
スウィート・ヒアアフターの主要登場人物
石山小夜子(いしやまさよこ)
主人公。遠距離恋愛中の洋一と京都でデート中事故に遭い、回復後幽霊が見えるようになる。
洋一(よういち)
小夜子の恋人。造形アーティスト。小夜子とのデート中、自動車事故で死亡。
西方あたる(にしかたあたる)
伝説の「温室バー」の経営者。母親の霊を介して偶然小夜子と知り合う。
新垣(にいがき)
小夜子の行きつけのバーの店主。小夜子にひそかな思いを寄せている。
スウィート・ヒアアフター の簡単なあらすじ
石山小夜子は28歳。京都に住む遠距離恋愛中の洋一とドライブ中、事故に遭う。 意識をなくした小夜は、果てしなく美しい異世界へ。 死んだ愛犬との再会、美しい風景。安らかで明るい時間を過ごしていた小夜をある日迎えに来たのは、大好きだったすでに亡くなっている祖父。 祖父の運転するハーレーに乗って、小夜は再びこの世に送り返されたのだった。
スウィート・ヒアアフター の起承転結
【起】スウィート・ヒアアフター のあらすじ①
小夜子は遠距離恋愛中の造形アーティスト、洋一を訪ね、京都に滞在していました。
二人は洋一の運転する車でのドライブ中、居眠り運転で突っ込んできた対向車をよけそこなうという事故に遭います。
ふと気づいた小夜子は、自分が別世界にいることに気が付きます。
そこはつやつやと白いものに包まれたとても美しい世界でした。
寄り添ってくれる死んだはずの愛犬のぬくもりと甘いにおい、オーロラのような空の色、美しい世界を堪能する小夜子をある時、これまた死んだはずの祖父がハーレーに乗って迎えに来ます。
「俗世でもっと修行してきなさい」という祖父に見送られ、小夜子はこの世に戻ってきたのでした。
この世に戻った小夜子。
事故の傷は少しずつ癒えました。
外見は別人のように変わりましたが、30歳になる頃には普通の生活ができるまでに回復しました。
洋一は即死でした。
体調が戻った小夜子は洋一のアトリエや作品の管理や事務作業をして過ごします。
【承】スウィート・ヒアアフター のあらすじ②
事故後、洋一を失ったことを知ってから、小夜子は洋一との子供を妊娠していることを切望していました。
けれど生理が来てしまい、妊娠していないことが判明。
小夜子は洋一との子どもを育てて生きる人生をあきらめたのでした。
小夜子は回復後、幽霊が見えるようになります。
ある日小夜子は、いつも二階の角部屋でにこにこしている女性の幽霊が見えるぼろぼろのアパアート、「かなやま壮」の前で、西方あたるという男性と出会い、言葉を交わします。
あたるは自分は二階で微笑んでいる幽霊の息子だと言いました。
幽霊の生前の名は西方さざんか。
さざんかは夫亡き後、夫の残したビルを管理しつつ、カフェバーを経営し、あたると姉を育てました。
そして夫亡き後初めてできた恋人と一緒に住むためにかなやま壮に引っ越した後、間もなく心臓発作で亡くなったとのことでした。
そしてあたるは生前母が暮らしていた部屋に、毎日花と水を供えて手を合わせているのでした。
小夜子はかなやま荘の一室に引っ越します。
【転】スウィート・ヒアアフター のあらすじ③
かなやま壮に引っ越してきた夜、小夜子はあたると手をつなぎ、行きつけのバーに向かいました。
あたるはバーの経営者の新垣さんは小夜子を好きに違いないと言いました。
かなやま壮は小夜子にとって、とても賑やかなアパートでした。
住人が小夜子とあたるの二人しかいないはずなのに、アパート中の部屋がまるで満室のようにがやがやざわめいているのです。
次元の裂け目か霊のようなものの通り道なのだろうと小夜子は思いましたが、そのことに対して怖さはなく、妙な心地よさを感じるのでした。
そんなある日、小夜子は新垣さんから教えられ、あたるの仕事のことを知ります。
あたるは伝説のように語り継がれる屋上温室バー「さざんか」の経営者で、母亡き後、現在のさざんかはあたるの姉、西方北風が週末だけ営業しているとのことでした。
そんな中、京都に行くことを心に決めた小夜子。
そのことを知ったあたるは、最後の晩に京都で合流しようと小夜子に提案します。
【結】スウィート・ヒアアフター のあらすじ④
京都に発つ前、小夜子はあたるの温室バーに連れて行ってもらいました。
温室バーは週末のひと時を楽しむお客さんたちでにぎわっていました。
小夜子は温室バーでバーテンダーをしているあたるの姉、西方北風と言葉を交わします。
北風は母が生前どんなに魅力的な人間だったのか、小夜子に語ります。
小夜子はあたるたち姉弟がどんなに母親を愛していたか、確かな愛情で今もつながっているかを知ります。
京都のアトリエに到着した小夜子は、洋一の後輩、大崎に手伝ってもらい、洋一が使っていたアトリエの最後の後片付けに取り掛かります。
そしてあたると合流の約束をしていた最後の夜、小夜子はあたるを車に乗せ、観光案内をしている途中、洋一と事故に遭った場所を通り過ぎます。
自らの静かな心境を顧み、悲しい記憶の上に新しい思い出が覆いかぶさったことを小夜子は感じるのでした。
東京に戻り、新垣に小夜子は言われます。
「まぶい(魂)を取り戻したんだね」
スウィート・ヒアアフター を読んだ読書感想
著者は東日本大震災の経験者全てに向けて、この小説を書いたということです。
生と死は連続したものであること、人は死による別れの向こうに、再び新しい人生を歩いていけるのだということ、本を閉じたとき、そんなメッセージが聞こえたように思いました。
ところどころに描かれる京都の風景描写が瑞々しく、暑い日に差し入れられた冷えた麦茶のように、ともすれば重く沈みがちな「生と死」というモチーフのよどみを洗い流してくれていました。
そしてこれは、よしもとばななさんの小説に共通することですが、傷を抱えながらも死ぬまで生きる、人間への愛情のこもったまなざしが温かい作品でした。
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