【ネタバレ有り】果つる底なき のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:池井戸潤 1998年9月に講談社から出版
果つる底なきの主要登場人物
伊木遥(いぎはるか)
主人公。二都銀行の渋谷支店融資課で課長代理として融資を担当している。かつては本店で海外企業の買収に関わっていたが左遷された。
坂本健司(さかもとけんじ)
伊木の同期で同じく渋谷支店融資課で回収を担当している。謎の言葉を残して変死する。
坂本曜子(さかもとようこ)
坂本の妻。かつて伊木と付き合っていた時期がある。
柳葉奈緒(やなぎばなお)
東京シリコンの社長令嬢。伊木とは過去に友人付き合いがあった。
山崎耕太(やまざきこうた)
二都商事金属グループ金属課長。信越マテリアルに出向している。
果つる底なき の簡単なあらすじ
二都銀行の渋谷支店に勤める伊木は、外回り中に同期の坂本と出くわします。坂本は、大きな回収案件に関わっていたようですが、「これは貸しだからな」という謎のセリフを残して去っていきます。翌日、坂本の変死体が発見され、坂本が銀行の金を横領していた痕跡が見つかります。支店長以下銀行の面々は事実関係から坂本を疑うだけでしたが、伊木の元に刑事が訪れて坂本の死は他殺の可能性もあると話します。
果つる底なき の起承転結
【起】果つる底なき のあらすじ①
伊木遥は二都銀行の渋谷支店融資課で課長代理として融資を担当しています。
かつては本店で海外買収案件に携わっていましたが、正義を貫いた結果左遷された過去があります。
伊木はある日の外回り中に同期で同じ融資課の回収担当として働く坂本と出会います。
坂本は大きな案件を抱えているようでしたが、「これは貸しだぞ」と謎の言葉を残して去っていきます。
翌日、坂本が遺体で発見されます。
死因は蜂に刺されたアレルギー反応によるアナフィラキシーショックで、銀行内の調査では坂本が三千万円を横領していた事実も判明します。
伊木は坂本の担当を引き継ぐこととなり、挨拶回りに行きますが、その中にはかつて融資担当し救うことの出来なかった東京シリコンも含まれていました。
当時、東京シリコンの社長柳葉朔太郎とは公私共に親しくなり、娘の菜緒とも友人となりました。
しかし東京シリコンの資金繰りが苦しくなり頼りにしていた信越マテリアルが和議申請をすると、銀行は東京シリコンを見限り倒産に追い込みます。
伊木は何とか助けようとしたものの、上層部の決定に逆らえませんでした。
その後、朔太郎は金策に走る中で自殺してしまいました。
この為、菜緒からは裏切り者と呼ばれ恨まれており、伊木が久しぶりに挨拶に行っても怒りを買うだけでした。
伊木が銀行に戻ると、山崎耕太という男が挨拶に来ていました。
山崎は元は二都商事金属グループ金属課長であり、信越マテリアルの財務部長として出向中の身でした。
坂本に世話になっていたらしく、伊木に挨拶すると和議の計画について相談します。
伊木が深夜に帰宅すると、自宅前で刑事が待っていました。
坂本の死因と状況から刑事は伊木を疑っているようでした。
【承】果つる底なき のあらすじ②
伊木は坂本から引き継いだ仕事の中に坂本が殺される要因があるのではないかと疑います。
坂本のパソコンや書類を細かく調べていくと、資料やメモは綺麗に整理整頓されていますが、109という謎のメモが消えていました。
109に関してはメモ自体は無いものの、東京シリコンの資料に109の記載を見つけ、伊木が改めて東京シリコンへの融資や売上を見てみると、実は粉飾があったと気づきます。
坂本が貸しだと言っていたのはこの事であり、東京シリコンと信越マテリアル絡みで殺されたようでした。
菜緒に頼んで東京シリコンの経理資料で粉飾の裏が取れると、東京シリコン絡みの資料を重点的に調べることとします。
伊木は調べを進めるうちに敵の存在を感じるようになります。
自宅前で怪しげな男を目撃し、蜂の死骸をポストに入れられ次はお前だと脅しを受けます。
また、敵は複数犯であり銀行内にも紛れているようで、伊木のデスク上の資料が消えたり、坂本の死後に坂本の個人パソコンのファイルが改竄されていたりします。
伊木は防犯カメラの映像を調べようとビデオ屋の室岡に依頼してビデオをダビングしようと試みますが、ビデオを受け取りに行く前に課長の古河に飲みに行こうと誘われます。
古河から副支店長の北川から睨まれるのであまり目立つような行動は取るなと諌められますが、伊木は出世にも興味は無く家族もいないため意に介しません。
古河は支店長の高畠が左遷させられそうなこと、前支店長は東京シリコンの倒産を予見していたのではないかという自身の推測などを語ります。
二次会のスナックを出た所で、男に襲われ古河が伊木を庇って刺されます。
男は伊木の鞄を奪って逃走し、伊木は古河の家族と上司に連絡して病院へと向かいます。
古河は何とか一命を取り留め、安堵した伊木は鞄を奪われた理由を考えますが防犯カメラのビデオが原因ではないかという結論に辿り着きます。
【転】果つる底なき のあらすじ③
伊木は坂本の遺品を届けに曜子を訪ねると、3歳の娘紗絵が今も坂本の帰りを待っており伊木はやりきれない思いを抱きます。
坂本の自宅に置いてあった資料から東京シリコンが仁科佐和子という個人に多額の金を振り込んでいる証拠を見つけます。
次に防犯カメラのビデオを受け取りに室岡の元を訪れますが、先日襲ってきた男に尾行されているのに気づきます。
室岡の部屋の非常階段を使って逃げ、自宅に戻ってビデオを確認すると、自身のデスクから資料を持ち去ったのは北川だと分かります。
北川はいきなり伊木の自宅に押しかけてきて人事権をチラつかせて脅しますが、伊木は笑い飛ばします。
すると殴りかかってきますが、返り討ちにすると捨て台詞と共に去っていきます。
北川は翌日、遺体となって発見され真犯人は別にいることが分かります。
伊木は信越マテリアルの和議が成立すると菜緒から食事の誘いを受けます。
菜緒は大学を辞めて東京シリコンを再建しようと考えており伊木からアドバイスをもらいたいと頼み、伊木は菜緒から信越マテリアル絡みの情報を得ます。
信越マテリアルは他を寄せ付けない技術を持っており、二都商事も買収しようとしたことがありましたが社長の難波と朔太郎が反対し買収失敗したこともあったそうです。
この日の食事の最後に、伊木と菜緒は関係を修復し互いの気持ちを確認すると交際し始めます。
北川について調べると、どこかから金を手に入れて青木扶佐子という女に貢いでいたことが分かります。
また坂本のパソコンのデータを改竄したのは北川だということも判明します。
さらに本店時代の先輩西口に頼んで調べてもらうと、坂本のアレルギーを北川が知っていたという事実を掴みます。
刑事から連絡があり、古河を刺した男は李洋平と名乗っておりいくつかの未解決殺人事件に関わっていた危険人物なので注意するよう言われます。
【結】果つる底なき のあらすじ④
伊木は西口から北川の件以外にも様々な情報を得ます。
信越マテリアルは二都商事が技術を手に入れるために計画倒産させられており、技術者は仁科佐和子が代表を務めるテンナインという会社に引き抜かれていました。
これでようやく朔太郎が金を振り込んでいた先と坂本の109のメモの意味が繋がります。
伊木は菜緒と共に難波を訪ね、仁科佐和子の素性を聞きます。
仁科は元は水商売をしていたのを難波が引き抜き秘書にし、共に信越マテリアルを成長させたパートナーでした。
しかし仁科は難波を騙して技術者を引き抜き横領した金を使ってテンナインを設立していました。
難波は仁科に全幅の信頼を置いており、もし殺されても本望だと話します。
最後に佐竹という技術者を紹介されて伊木と菜緒は東京へと戻りますが、途中で不審車に追いかけられギリギリで躱したものの、事故に巻き込まれた一般人が亡くなります。
佐竹もテンナインに引き抜かれた一人で、紹介していたのは伊木も知っている男でした。
刑事から連絡があり、難波が飛び降りて死んだと知ります。
伊木は仁科の元へ行き問い詰めていると、背後から不意打ちをくらいます。
襲ってきたのは山崎耕太であり全ての黒幕はこの男でした。
仁科も山崎に騙されており人が死んでいる事など知りませんでしたが、山崎は何人でも殺すし幾らでも金を騙し取ってやると豪語します。
伊木は怒りを山崎にぶつけ、殺された人達の分まで山崎を殴りつけて気絶させます。
伊木は自宅に戻ると李洋平に刺されますが、李の本名は山崎だと見破ります。
何とか部屋に辿り着くと山崎洋平が菜緒に襲いかかりますが、そこには2人の刑事が待ち構えていました。
伊木は無事一命を取り留め、見舞いに来た西口から金の回収ができて東京シリコンの負債は無くなりそうだと聞かされます。
これで死んだ朔太郎と坂本も浮かばれると伊木は安堵しました。
果つる底なき を読んだ読書感想
半沢シリーズなどと同じく、池井戸潤さんの銀行員時代の経験を活かした作品ですが、特徴として多くの人が殺されるかなり血なまぐさい話だということが挙げられます。
半沢シリーズや花咲舞などの他作品では、主人公が銀行内外の巨大な権力を相手に臆せず立ち向かうという構図が人気を呼んでいますが、本作では巨大権力と言うよりは黒幕の山崎は危険な悪党という印象です。
どんな手を使ってでも自分の目的を達するという思いが強く、弟の洋平を使ってどんどんと人を殺していきます。
さすがに同じ銀行内で3人も死傷者が出れば異常だと疑われて当然ですし、伊木の周りをストーカーのように付け回しており、警察が本気を出せば簡単に捕まえられたのではないかとさえ思えます。
現に、かなり早い段階で素人の伊木が尾行に気づくぐらいなので、洋平は目立つような場所をうろついていたと思われ、警察は伊木のマンション周辺を警備するだけで複数殺人の犯人を検挙出来たはずなのに何をしていたのかと思います。
もう少し警察が早く動けばこんなに人が殺されなくても済んだのではと思えます。
危険な人物に追い回されても敢然と立ち向かう伊木は男気溢れるカッコいい男でした。
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