【ネタバレ有り】びっくり館の殺人 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:綾辻行人 2006年3月に講談社から出版
びっくり館の殺人の主要登場人物
島田潔(しまだきよし)
館シリーズを通しての主人公。作家名は鹿谷門実。本作では出番は少なく、語り手の三知也に忠告する程度。
永沢三知也(ながさわみちや)
本作の語り手。小学六年の夏、俊生と出会いびっくり館に通うようになる。
古屋敷俊生(ふるやしきとしお)
両親、姉を亡くし祖父と二人でびっくり館に暮らしている。
古屋敷龍平(ふるやしきりゅうへい)
びっくり館の所有者で俊生の祖父。噂では頭がおかしいと言われている。
新名努(にいなつとむ)
俊生の家庭教師で大学生。いとこのあおいは三知也の同級生。
びっくり館の殺人 の簡単なあらすじ
兵庫県のとある屋敷町のはずれに、年老いた男と内気な少年の住むびっくり館とよばれる屋敷がありました。僕は小学六年の頃、その少年俊生と友達でした。何故唐突にこの思い出が蘇ってきたかと言うと、たまたま古本屋で手に取った「迷路館の殺人」という鹿谷門実の本の著者近影を見て、びっくり館の近くで出会った男だと思い出したためでした。「迷路館の殺人」のあとがきには、館は実在しその建築家中村青司により建てられた館は全ていわくつきだと書かれていました。このため、びっくり館での殺人事件のことを当事者として思い出してしまったのでした。
びっくり館の殺人 の起承転結
【起】びっくり館の殺人 のあらすじ①
僕こと永沢三知也、同級生の湖山あおい、その従兄弟で当時大学生だった新名努の三人は、びっくり館のある部屋の前に立っていました。
その館の主人である古屋敷龍平氏に呼ばれて館を訪れ、中には龍平氏がいるはずでしたが、呼びかけても応答がありません。
部屋には鍵がかかっているものの、龍平氏は中にいるようだったため、新名さんと僕は扉を体当たりで破ります。
部屋には龍平氏が背中をナイフで刺されて絶命しており、部屋は完全な密室で人形のリリカがうつろな目をしていました。
僕は年明けには父親の仕事の都合で海外へ引っ越すことになっており、保護者で唯一の肉親を失った俊生がこの後どうするのかは気がかりなもののどうすることも出来ない問題でした。
話の始まりはこの事件の四ヶ月前の八月に遡ります。
小学六年の夏休みの終わり、僕は英会話教室の帰りに怪しげな噂の多いびっくり館に寄り道をして勝手に中に入り込みます。
すると、びっくり館に住む古屋敷俊生と出会います。
俊生は体が弱く学校にほとんど行けていないために歳は三知也と同じものの学年は一つ下で、今は家庭教師に勉強を教えてもらっているということでした。
俊生は母と姉を亡くし、祖父と二人でびっくり館に住んでおり、学校へ行けず友達もいないので三知也にはまたいつでも遊びに来て欲しいと頼みます。
【承】びっくり館の殺人 のあらすじ②
びっくり館には様々な噂があり、中には大事件があったというものまであります。
僕は俊生と再び会った際に、俊生の姉が亡くなった経緯について尋ねると二年前の春に亡くなったとだけ答えます。
実は僕の兄十志雄も二年前に亡くなっており、お互いに詳細は伏せて複雑な事情があったとしておきます。
この日、龍平氏とも初めて顔を合わせますが、俊生から聞いていた怖いイメージとは逆で、穏やかに笑いかけてきてまた遊びに来てやって欲しいと言われました。
僕の兄の死因については、実はいじめを苦にしての自殺でした。
ただし、いじめの主犯格を巻き添えにして屋上から飛び降りた為、単なる自殺でなく自身の仇討ちも兼ねていました。
この後、母は精神的におかしくなり、父親はどんな事情があろうと殺人を犯した十志雄も悪いという意見を崩さなかったため、口論が続き離婚する事になります。
僕は父親について行くこととなりましたが、やはり十志雄が悪いという意見には賛同できず、いじめを行なっていた方が悪く、そもそも兄はやられたからやり返しただけではないかと思っていました。
僕は俊生と何度か会い、ペットのトカゲやヘビを見せてもらったり、びっくり館の名前の由来について話したり、家庭教師の新名さんと出会ったりします。
びっくり館に通ううち、まつわる怪しい噂のほとんどは眉唾物で、それほど変わった館ではないということも分かっていきます。
【転】びっくり館の殺人 のあらすじ③
ある日、僕は同級生の湖山あおいに話しかけられてびっくり館について尋ねられます。
あおいは俊生の家庭教師新名さんといとこであり、びっくり館にも興味があるため次は共に行きたいと言われます。
あおいを伴いびっくり館へ行くと、龍平氏がせっかくなのでリリカを紹介すると言ってたくさんの人形が置いてあるリリカの部屋へと案内してくれます。
リリカは口の周りに黒い線が書かれているいわゆる腹話術用の人形で、龍平氏がヘンテコな声でリリカを操っていました。
途中で龍平氏が持病の発作を起こして苦しみだし、俊生が薬を持ってきて飲ませると落ち着きましたが、その日はお開きになります。
その後、僕は俊生に会いたいと思っても電話で龍平氏に俊生は体調が悪いと断られてしまいます。
僕はせめてびっくり館の様子を見ようと近くまで行くと、怪しい男に声をかけられます。
その男は島田潔でしたが、びっくり館を見に来たものの龍平氏にあえなく断られた為に近くの公園から眺めていたのでした。
びっくり館でも梨里香という女の子が殺されているので、気をつけるようにと僕に忠告すると去っていきます。
僕の誕生日が過ぎたある夜、俊生から電話があり祖父が不在なのでこっそり館に来て欲しいと言われます。
あおいも呼ばれており、共に館に行くと俊生から誕生日プレゼントとして秘密箱を貰います。
さらに俊生はリリカの部屋の秘密扉の仕掛けを見せてくれます。
師走が迫ってきたある夜、突然父親からアメリカへ行くと言われます。
俊生の誕生日会に誘われ、僕は俊生にゲームボーイをプレゼントします。
パーティが終わると、僕達は龍平氏の腹話術を見せられますが、この時俊生がリリカ人形の役をしており、僕たちは衝撃を受けます。
【結】びっくり館の殺人 のあらすじ④
後日、僕達は話し合い、俊生は虐待を受けているのでは無いかと推測しますが、新名さんが龍平氏に確認しようとした所激怒されました。
しかし、急に龍平氏は豹変して今度はクリスマスパーティを開くと言い出します。
その前日になってようやく僕は秘密箱を開けますが、中にはHelp usと書かれた紙が入っていました。
パーティ当日、館へ行くと中には壊れたゲームボーイや俊生のペットの死骸などが散乱しており、物語冒頭での話に繋がる通り龍平氏の遺体を発見することとなりました。
警察の調べでは物盗りによる犯行と断定され、俊生はショックで口が聞けなくなり入院しました。
しかし、この事件の真相を僕達は知っていました。
僕達がリリカの部屋に入った時にはリリカの服装をさせられた俊生がぐったりと座っていました。
この日の腹話術の練習中、発作を起こした龍平氏が苦しんでいる所を見て俊生は咄嗟に刺し殺してしまったのだろうと推測します。
僕達は虐待を受けていた俊生に同情し、事件の形を変えて物盗りによる犯行に見せかけました。
僕はアメリカへ引っ越し、その直後に阪神・淡路大震災が発生した為、幸いにも事件はこれ以上追求されることはありませんでした。
僕は大学生になり日本に戻ると、久しぶりにびっくり館について思い出し、秘密箱に入っていた俊生のメッセージの本当の意味を考え直します。
あの時は深く考えませんでしたが、実は悪魔のような梨里香の心に操られて俊生も龍平氏もおかしくなっており、二人を助けてと言っていたのではないかと推測します。
龍平氏も腹話術をしながら「何故こんなことをさせるのだ」などと口走っており、自分の意思とは違うことをさせられていたような様子がありました。
僕は十年ぶりにびっくり館へ行くと、驚いたことに俊生とあおいが出てきて迎えてくれ、梨里香の誕生日を祝おうと招かれます。
俊生の目にはこの世のものとは思えない色の光が宿っていました。
びっくり館の殺人 を読んだ読書感想
館シリーズの第8作目であり、少年少女向けの軽い内容のオカルトミステリーになっています。
事件の謎解きは特に無く、基本的には語り手の三知也が全てを語ってくれます。
ミステリーというよりはオカルト要素が強く、過去の梨里香殺人事件、古屋敷龍平殺人事件などは館の不吉な力が多大に影響した結果のような書きっぷりがされています。
もちろん、他の館シリーズも犯人の動機として多少は館の力も影響はありましたが、本作は館の力により住む人がおかしくなり、その結果として殺人にまで繋がったという流れがはっきりとあるように思います。
結末でも、三知也が驚くのも無理は無い状況で俊生とあおいと再会し、梨里香の誕生日を祝うなどと言われています。
三知也が幻を見ているので無ければ、やはり何らかの力により俊生は操られていると思いたくなるような印象でした。
また、本作には暗黒館の殺人や迷路館の殺人などとの繋がりもあり、他作品を読むとさらに楽しめるようになっています。
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