【ネタバレ有り】いつか記憶からこぼれおちるとしても のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:江國香織 2002年11月に朝日新聞社から出版
いつか記憶からこぼれおちるとしてもの主要登場人物
柚(ゆず)
私立の女子高に通う女子高生。買い物好きな母親の影響で垢ぬけていてお洒落。勉強は嫌いだが、将来通訳か翻訳家になりたいので英語の授業だけは真面目に受けている。同じグループの竹井から男の子を紹介される。
吉田悟(よしだ さとる)
竹井の彼と同じ学校に通う高校生。サッカー部に所属しながらアルバイトもしている。柚を紹介されデートをするようになる。
ママ(まま)
柚と姉妹のように仲が良い。学校を休ませて、買い物に付き合わせることもしばしば。欲求不満を買い物で解消している。
竹井(たけい)
柚と同じ女子高に通っている。中学生の時から付き合っている彼氏がいて、彼氏の友達を柚に紹介する。
いつか記憶からこぼれおちるとしても の簡単なあらすじ
私立の女子高に通う柚は、それなりに楽しく暮らしてきました。姉妹のように仲良しのママとの女同士の買い物に、安定して変わらない学校生活、中学のときに男の子と付き合ったこともありますが、わかったことは男の子って大したもんじゃないということ。それなら気心知ったママと美味しいご飯を食べて、可愛いお洋服を買う方がよっぽど楽しいと思いました。そんな生活を送る柚でしたが、以前ほど買い物に熱中できなくなります。『私の欲しいものって……?』
いつか記憶からこぼれおちるとしても の起承転結
【起】いつか記憶からこぼれおちるとしても のあらすじ①
柚は私立の女子高に通う高校生です。
買い物好きなママの影響で、柚自身もお洒落には敏感で、高校生にして垢抜けたルックスをしています。
ママはお買い物が大好きで、よく柚を誘ってはブランドのお店をまわります。
柚もお洒落が好きなので、ママとのお出かけは楽しいひとときです。
気心知ったママとの遊びは、同級生の女友達のように気を遣うこともなく気楽で、美味しいご飯やお茶ができるのも魅力です。
買い物の休憩で必ずといっていいほどよく頼むウインナコーヒーは柚とママの大好物です。
今日ママは、ずっと狙っていた淡いサーモンピンクのジャケットを買って満足した様子です。
ほとんどベージュに近いそのジャケットは、細身のママによく似合います。
お茶をしながら、ママは先ほどお店で見たブラウスを柚も買えばよかったのにと残念がります。
とても似合っていたとも。
柚はそう言われて、それなら買っても良かったかもな、と思います。
可愛いデザインで、自分に似合うのもわかっていたけれど、なんとなく気分じゃなかったと口には出さず答えます。
一緒に買い物に来ているのに、そんなこと言うのは野暮だと思ったからです。
【承】いつか記憶からこぼれおちるとしても のあらすじ②
柚は勉強が嫌いですが、英語だけは真面目に勉強しています。
将来通訳か翻訳家になりたいのです。
男の人に頼らずとも生活していけるように。
ママは美人ですが、どこか不幸の匂いがします。
満たされないものを買い物や外食で解消しているのを柚は知っています。
学校生活は、安定してそれなりです。
いつも一緒に行動するグループに竹井という子がおり、竹井だけ唯一彼氏がいます。
中学の時から付き合っている彼に、柚たちは会わせてもらうことになります。
実際会ってみると、とくに話すこともなく気まずい雰囲気が流れますが、後日、竹井から、『彼氏が柚に紹介したい子がいるって言うんだけど会ってくれない?』と話を持ち掛けれます。
過去に付き合った経験がある柚は、正直男の子に興味はありません。
大したことないとわかったからです。
それでも、グループ数人で会った中のうち、自分を指名されたことに気分を良くした柚は、会うことを承諾します。
【転】いつか記憶からこぼれおちるとしても のあらすじ③
竹井に連れられて、待ち合わせ場所に向かった柚は、そこで竹井の彼氏と、彼氏の友達の吉田くんという男の子を紹介されます。
お店を出た四人。
竹井と彼氏が歩く後ろを、柚と吉田くんがついていきます。
並んで歩きながら『寒いね』と声をかけたのが吉田くんで『ほんと』という返事をしたのは柚。
それが唯一の会話でした。
雨が降る中、足元が濡れて、かじかむ手で傘をさしながら歩くのは柚にとって苦行でした。
ママが車で迎えに来てくれないかなと心の中で考えます。
その日はそのまま別れ、後日柚の携帯に吉田くんから連絡が入ります。
土曜日に会うことにした二人。
どこに行きたいか聞かれ、そっけなく『どこでもいい』と答えます。
『そう言われてもなあ』と困惑する吉田くんに、柚は、誘うなら行き場所を決めてから電話してこいよ、と心の中で毒づきながら、一緒に考えます。
結局遊園地の案も却下され、とりあえず待ち合わせ場所と時間だけ決めた二人。
デート当日、挨拶もそこそこに、『どうしようか』と聞いてくるノープランの吉田くん。
何も決めてないのかよ、と柚は呆れ気味です。
【結】いつか記憶からこぼれおちるとしても のあらすじ④
結局その日は、十一時に待ち合わせしてお昼も食べず、木枯らしが吹く中、半日歩き回りました。
うんざりした柚でしたが、それでも吉田くんと会い続けました。
デートは決まってただ歩き回るものでしたが。
そして次第に寒さにも慣れていきました。
吉田くんとデートする傍ら、ママとのお出掛けもしていました。
六本木のイタリア料理のお店や、新宿にある美濃吉で食事をしたり、年末ブランドバーゲンに行ったり。
何も買わない柚に、ママは華奢で清楚なネックレスをプレゼントしたがりますが、柚は辞退します。
残念そうなママ。
そして大晦日を迎えます。
柚と吉田くんは、明け方こっそり家を抜け出して、年明け一番はじめに会う計画を立てます。
明け方四時に待ち合わせする柚に、四時だとまだ暗いよと心配する吉田くん。
煮え切られない態度にいらいらする柚。
柚の強固な態度に観念した吉田くんは危ないから家の前まで迎えに行くと申し出ます。
仲良しのママにも内緒で、当日柚は家を抜け出します。
玄関のドアを開けると、吉田くんが待っていました。
ファミレスのデニーズで新年の挨拶を交わし、紅茶をごちそうになった柚。
レジ横に好きなプーのおもちゃを見つけ反応する柚に、吉田くんがひょいとそのおもちゃも買ってくれます。
思いがけないプレゼントに胸がいっぱいになる柚は嬉しさのあまり、帰り道、何度もそのおもちゃを手に取ります。
そして、自分はこんなにも一人ぼっちだったのかと思い知るのでした。
いつか記憶からこぼれおちるとしても を読んだ読書感想
『いつか記憶からこぼれおちるとしても』から、満ち足りた生活に自分の欲しいものもわからなくなってしまった女子高生の『テイスト オブ パラダイス』をご紹介しました。
ブランド服や、美味しい食事でも埋められなかった心の隙間。
それが、彼氏に初めてプレゼントしてもらった、ファミレスレジ横にあるちゃちなおもちゃで満たされる喜び。
コピーライターの糸井重里さんの名コピー『ほしいものが、ほしいわ』を彷彿とさせる作品です。
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