【ネタバレ有り】誘拐ラプソディー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:荻原浩 2001年10月に双葉社から出版
誘拐ラプソディーの主要登場人物
伊達秀吉(だてひでよし)
主人公。工務店に勤務。38歳で独身。
篠宮伝助(しのみやでんすけ)
私立の付属小学校に入学予定。
篠宮智彦(しのみやともひこ)
伝助の父。暴力団の組長。
黒崎保(くろさきたもつ)
埼玉県警の刑事。
桜田シロウ(さくらだしろう)
智彦の子分。
誘拐ラプソディー の簡単なあらすじ
家族もなく借金返済に追われてばかりの伊達秀吉は、自称会社社長の息子・篠宮伝助を連れ去ります。伝助の父親は表向きはいくつもの子会社を束ねる遣り手の経営者でしたが、裏では200人以上の構成員を抱える八岐組の組長です。 警察よりもたちの悪い連中に追われることになった伊達は、伝助とともに車で埼玉県全域を逃げ続けるのでした。
誘拐ラプソディー の起承転結
【起】誘拐ラプソディー のあらすじ①
3度目の刑期を終えて38歳になった伊達秀吉には600円余りのわずかな所持金と、勤め先の斉藤工務店から盗んできた業務用のカローラバンしかありません。
自らの人生を終わらせようと桜の木の下にロープを手にして立っていると、家出をしてきたという篠宮伝助と出会います。
伝助から父親が会社を経営していると聞き出した伊達は、両親から持たされていた携帯電話を使って現金5000万円を要求しました。
電話を受けた伝助の父・智彦でしたが、警察に助けを求めることはありません。
表向きは篠宮興業というグループ会社の社長さんでしたが、その裏の顔は埼玉県南部を取り仕切る反社会的勢力のトップです。
伝助の携帯電話には位置情報を発信する装置が組み込まれているために、200人を上回る子分たちに犯人の居場所を捜査させます。
篠宮邸のリビングにある大時計から1時間ごとに鳴り響くのは、伝助の母・多香子がお気に入りの曲「ハンガリー狂詩曲(ラプソディー)」です。
【承】誘拐ラプソディー のあらすじ②
浦和駅西口の目抜き通りを数分くらい歩くと、埼玉県警の本部ビルがある官庁街へたどり着きます。
7階の刑事部捜査四課は別名でマル暴とも呼ばれていて、このフロアで日曜日にも関わらず書類整理に追われているのは暴力班三班係長の黒崎保です。
部下の中でも人ひと倍仕事に熱心な栗林が、八岐組の不穏な動きに関する情報を持ち込んできました。
下っ端の準構成員から幹部クラスの構成員までが総出で埼玉県全域を走り回っているようですが、対立する組織との抗争ではありません。
組長の篠宮智彦のことを、黒崎は中学生の頃から知っています。
大宮市内の野球強豪校に通っていて、智彦は3年生の春の県大会での優勝投手です。
対する黒崎は当時は弱小野球部に所属していて三回戦止まりなために、向こうはその名前すら覚えていないでしょう。
裕福な家庭に生まれ育って将来が約束された智彦が八岐組長、幼い頃から悪さばかり繰り返していた黒崎が警察官。
運命の皮肉を感じた黒崎は、自分の管轄外でしたが八岐組の動向を監視することにします。
【転】誘拐ラプソディー のあらすじ③
伊達が現金の受け渡し場所に指定したのは、赤羽駅の先にある資材置き場に囲まれている踏み切りです。
東京都と埼玉県の都県境に当たり、警視庁と埼玉県警の連携の悪い場所でもあります。
東北線に1人で乗り込んだ智彦は、指示通りに車窓から現金5000万円をふたつに分けて入れたボストンバッグを投げ捨てました。
落ちてきたバッグを拾う寸前で強面の男たちに取り囲まれていることを察知した伊達は、慌ててカローラに戻って伝助に問いただします。
パパのお仕事はボウリョクダン、キョーキャク(侠客)としての誇りを持て。
伝助のたどたどしく語る一連のキーワードから、伊達はようやく組長の息子を誘拐してしまったことを理解しました。
伝助の口を封じようとしましたが、ここ数日一緒にいた間にすっかり情が移ってしまい非情に成りきれません。
取り敢えずは逃走を続けることにして、当面の隠れ場所として伝助の祖母の家があるという埼玉県の南西部・名栗方面へ向かいます。
【結】誘拐ラプソディー のあらすじ④
名栗川の上流に車を停めた伊達は、伝助にせがまれたためにキャッチボールをすることにしました。
すっかり幸せな気持ちに浸っていた伊達が人の気配を察知して背後を振り返ると、片手に拳銃を握りしめた屈強な黒服姿の男が立っています。
彼こそが伝助の携帯電話から位置情報をたどってここまで追ってきた、八岐組のナンバー2・桜田シロウです。
桜田とその舎弟たちに両腕を抱え込まれた伊達は、山林を抜けた先に用意された巨大な穴の底へと投げ込まれました。
死を覚悟した伊達でしたが、寸前のところで伝助からの電話を受けて現場まで駆けつけた黒崎によって助け出されます。
伝助は斉藤工務店の社用車を盗んだ容疑で黒崎に逮捕されることになりましたが、山の中へ生き埋めよりかはましでしょう。
県警のパトカーに乗せられる寸前に伊達が目撃したのは、桜の木の下で笑顔を浮かべながら両手を振っている伝助の姿です。
伊達は窃盗の罪を償って刑務所を出た後に、伝助に会いに行くことを決意するのでした。
誘拐ラプソディー を読んだ読書感想
幼い頃から非行を繰り返して刑務所を出たり入ったりしてきた、38歳の主人公が何とも情けないです。
「伊達秀吉」という名前だけはやたらと立派ですが、その場限りの思い付きで誘拐事件を起こしてしまういい加減さと無軌道さには笑わされました。
物語の序盤こそは身代金を手に入れることしか頭になかった伊達が、無邪気な篠宮伝助との触れ合いを通して人間らしい感情を取り戻していく様子には心温まるものがあります。
ふたりがおんぼろのカローラで駆け抜けていく逃走経路からはは、今はその名前が消えてしまった大宮市や浦和市の情景が思い浮かんできて懐かしかったです。
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